神奈川銀杏会 三火会 報告 開催日:2011/09/20(火)
話題提供者:天野浩氏(32工) 「 アルゼンチンでの中小企業指導をライフテーマとして」
天野氏は毎年三ヶ月だけアルゼンチンに行き、残りの月は日本で定年後の生活をする、というパターン で 暮 ら し て い る 。 ア ル ゼ ン チ ン 滞 在 の 三 ヶ 月 間 が 社 会 に つ な が る 生 活 と い うこ と に な る 。 トヨ タ 方 式 を 現 地 の中小企業者に教えるのであるが、毎年行っていることから天野氏の伝える能力も向上した。一方では現 地 の 協 力 者 が 必 要 で あ る 。ア ル ゼ ン チ ン は 文 化 的 、歴 史 的 に 日 本 の 生 活 とは 異 な る。ア ル ゼ ン チ ン で の 生 活 と 日 本 の 生 活 に は 両 者 の 良 い と こ 取 り を し て い る こ と に な る 。 ア ル ゼ ン チ ン で は ゼ ミ を 行 い そ の 後 要 請に応じて現場での指導を行っている。天 野氏とアルゼンチンとの関係は二十年近く続いていることにな る。
当初は企業を定年退職後、JICA の国際協力専門員に応募してアルゼンチンに赴任した。専門家派遣 はODA による海外技術協力の一環であるが、日本は軍備を限定した余力をもって発展途上国の援助の ための技術協力に向けるという考え方である。支援の主体は外務省だが、その他の省庁がそれぞれの思 惑 で 参 加 し て い る 。 専 門 家 は 1 ‐ 2 年 で 交 代 す る こ と に な る が 、 専 門 員 は 長 年 継 続 し て 指 導 技 術 の 継 続 的 レ ベ ル ア ッ プ を 目 的 と す る 。 専 門 員 を 定 年 退 職 し た 後 は 、 個 人 的 に ボ ラ ン テ ア 活 動 と し て 続 け て い る 。 天 野 氏 は 日 本 の 物 づ く り ノ ウ ハ ウ の 中 小 企 業 へ の 移 転 に 対 す る ニ ー ズ が 高 い こ と を 知 り 、 こ れ を ラ イ フ テ ーマと決めた、相手国としてはラテンアメリカの中心である、アルゼンチンを選んだ。日本のもつノウハウを 現 地 の 中 小 企 業 に 移 植 す ることが 求 め られ た 。生 産 性 向 上 の た め に トヨタ方 式 が 世 界 的 に 注 目 され て い た。
これはフォード方式に対するアンチテーゼであり、異なるものを少量ずつ生産するに適した方式である。 1980年 代 ア メリカ は 多 くの 調 査 団 を 日 本 に 派 遣 し トヨタ 生 産 方 式 を 官 民 を 挙 げ て 取 り入 れ た 、ア メリカ は それ をリー ン(lean)方 式 と名 付 けて製 造 業 の 復 活 に 活 用した。この 生 産 方 式 は 大 企 業 の み で なく中 小 企 業 で も 有 効 で あ る 。しか し、当 時 トヨタ の 中 で 体 験 し指 導 で き る 人 材 は 少 な か っ た 、ま して ア ル ゼ ン チ ン に 技術移転する人材はいなかった。指導する本人がエキスパートであること、根付いた指導にはスペイン語 で 直 接 や れ る こ と 、 言 葉 で の 説 得 と 実 地 指 導 が 共 に や れ る こ と 。 こ の 三 点 が 揃 っ て 初 め て 外 国 で 現 地 指 導ができる。先ず本人がトヨタ方式を身につける必要があるが大変な時間と努力が必要であった。一番効 率が良いのはベテランから直接学ぶことである。かつて JICA が現地の自動車部品産業への指導を試み、 膨 大 な 報 告 書 を 作 っ た が 、 レ ポ ー ト を 読 ん で 勉 強 せ よ と 云 っ て も 効 果 が な か っ た 。 肝 心 の 指 導 者 が 現 地 で打ち込まないと話しにならない。
ゼ ミ ナ ー で 大 勢 に ト ヨ タ 生 産 方 式 を 説 明 し て 理 解 し て も ら う の も 大 変 で あ る 、 相 手 は 生 産 現 場 の 人 間 で 大 学 出 の エ ン ジ ニ ア ー は 稀 で あ る 英 語 で 話 して もほ とん ど理 解 して い な い 。スペ イン 語 に 通 訳 して 貰 い 講義を始めたが受講者は寝込んでしまう。講習は夜に行ったので日中の仕事のあとでの受講で、受講者 は 熱 心 で は あ る が 、 疲 れ て い る 、 講 義 を 聴 い て 貰 う に は 相 手 の 顔 を 見 な が ら 大 声 を 上 げ な け れ ば な ら な い 。予 め 用 意 した テ キストを 読 む の で は ダ メで 、そ の 場 で 相 手 の レベ ル に 合 っ た もの で 伝 え ね ば な らな い 。 会場での質疑応答が必要であるが、質問のやりとりには協力者の支援が有効であった。天野氏自身は講 義を長年続けて、かなり改良された。低いレベルから始めたことが長く続けられた理由かも知れない。この ような能力を身に着けるには10年の日時が必要であると実感した。
トヨタ方式は、現実にはアメリカを経由してアルゼンチンに入っている。現地ではアメリカ人が作ったマニ ュアルを読んでいるが、大企業中心である。トヨタ方式がアメリカのものとして認識されたら日本人として残 念である。
天 野 氏 の 話 に 続 い て 質 疑 が あ っ た 。 ト ヨ タ 方 式 の 具 体 的 に ど の よ う な 内 容 を 指 導 し た の か と い う 質 問 に 対 し て は 、フ ォ ー ドの プ ッ シ ュ 方 式 (流 れ 方 式 )に 対 し て 、トヨタ は 組 み 立 て の 方 か ら 部 品 を 取 りに 行 く、プ ル方 式 であるとの説 明 があった。さらに天 野 氏 がかつ てアメリカのテレビ番 組 で、世 界 の生 産 方 式 につ い て、1900 年にフォード方式が開発され、1950 年にはトヨタ方式が出現した。これは生産方式の第二の革 命 で あ る と 放 映 さ れ た の を 見 た 。ア メリカ は こ の よ うに 認 識 し て い る よ うだ な ど の 説 明 が あ っ た 。そ の 他 、カ
ン バ ン 方 式 、 改 善 、 5 S ( 整 理 ・ 整 頓 ・ 清 掃 ・ 清 潔 ・ 躾 ) 、 日 本 と ア ル ゼ ン チ ン と の 生 活 習 慣 の 違 い 、 ト ヨ タ 方 式 の 歴 史 、ア ル ゼ ン チ ン の 社 会 体 制 、ブ ラ ジ ル と の 関 係 、日 本 人 が 外 国 で 活 躍 ・生 活 す る た め に 日 本 の 政府が何を指導、援助するべきか、などについての話題が出た。
天野氏の話題提供レジメもご参照下さい。 (文責:林しん治)