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sig sai 2011 03 07 3 Recent site activity jsaisigsai

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(1)

携帯端末を用いた被介護者の状態記録システム

Care recording system of person with dementia

吉田可奈子

1

福田亮子

2

小野雄太郎

1

Kanako YOSHIDA

1

, Ryoko FUKUDA

2

, Yutaro ONO

1

工藤正博

1

松原仁

3,1

Masahiro KUDO

1

, Hitoshi MATSUBARA

1

1

慶應義塾大学 SFC 研究所

1

Keio Research Institute at SFC

2

慶應義塾大学 環境情報学部

2

Faculty of Environmental Information of Keio University

3

公立はこだて未来大学

3

Future University Hakodate

Abstract: In this work, we propose care recording system of person with dementia for improving care quality and efficiency. We classified caretaker’s status into 24 categories, and then we develop the system to be used on portable terminal. Caregiver who works in care facility uses this system to monitor the caretaker’s status. This system makes it possible to provide sustainable and correct care service, which matches to caretaker’s condition and their needs. Currently, caretaker’s information was noted as qualitative data, but our care recording system can gather the quantitative data about caretaker’s condition, and behavior with fewer caregivers’ burden. It is possible to extract some patterns of change in caretaker’s status, so it could reveal relationships between caregiver’s service and caretaker’s status. Furthermore, it is possible to analyze the difference of care between expert caregiver and novice caregiver. We expect these result makes caregiver easier to understand more about caretaker’s feelings and behaviors, so they could enrich the quality of care.

1 はじめに

日本国民の5人に1人が高齢者という超高齢化社 会が進む近年、将来的に認知症高齢者はますます増

われている。その一つの試みとして認知症ケアマッ ピング(Dementia Care Mapping: DCM)が挙げられる。 これは、認知症ケアの実践を評価して介護者のパー ソン・センタード・ケアに関する気付きを促し、ケ

(2)

護に従事することで現場改善を実現する為に、携帯 端末を用いた被介護者の状態記録システムを開発し た。従来の被介護者の状態の記録は定性データが主 だったが、本システムでは DCM の応用によってこ れを定量化できるため、被介護者の状態の変化パタ ンや、行ったケアとの関係、介護者の熟練度による 記録パタンの相違なども抽出可能となり、より多く の気付きが得られると期待される。

2 認知症ケアマッピング( DCM

パーソン・センタード・ケアは、英国・ブラッド フォード大学の老年心理学のTom Kitwood教授によ って提唱された。これは認知症に苦しむ被介護者が 認知症によるさまざまな障害を担いながらもいかに 生きて行くかに注目し、介護する側との相互関係に まで言及しているのが特徴である[4]。この理論に基 づいてパーソン・センタード・ケアを実践するため のケアの質の向上を目的とした被介護者の行動観察 手法とそのフィードバックを含めた評価システムが、 認 知 症 ケ ア マ ッ ピ ン グ(Dementia Care Mapping: DCM)で あ る 。 現 在 で は 、 米 国 、 ド イ ツ 、 オ ー ス ト ラリアなど8カ国で導入されている。日本では認知 症介護研究・研修大府センターがブラッドフォード 大学と提携し、2004年から DCM の基礎コース が導入された。

2.1 DCM の概要

実際に介護福祉施設で DCM を実施することをマ ッピングと呼ぶが、これはブラッドフォード大学が 認定した研修を受け、DCMを使用する資格を与えら れた評価者(マッパー)のみ実施することが許可さ れている。マッピングの際はマッパー2名が一組に なり介護福祉施設の共用スペースであるデイルーム

における認知症高齢者(事前に決められた対象者5 名)の状態を6時間にわたり5分おきに所定の用紙 に記録する。記録は、被介護者の行動をA~Zの25 項目に分類した行動カテゴリコード(表1)と、「良 い 状 態 (Well-being)」 と 「 よ く な い 状 態(Ill-being) を6段階(+5、+3、+1、−1、−3、−5)で表 したWIB値(表2)を組み合わせて行う。さらに、 介護者のケアによって被介護者のニーズが満たされ たり、被介護者の残存能力が発揮されたり良いケア が行われた場合はPE(Positive Event Recording)反対 に 被 介 護 者 の 自 尊 心 を 傷 つ け る よ う な ケ ア は PD(Personal Detracting Coding)としてそれぞれ記録す る。

6時間に及ぶマッピングが終了した後、2名のマ ッパーは互いの記録を照会する擦り合わせを行い、 記録の精度を高める。双方が異なる記録をつけてい た場合は、その時の状況について議論し、DCMのル ールに忠実に則った記録を決定する。そしてその記 録をもとに、ケアサマリを作成し、介護者に対して

1: DCMの 行 動 カ テ ゴ リ コ ー ド

表 2: WIB値

(3)

フィードバックを行う。

2.2 本プロジェクトへの応用

上で述べた DCM は、介護福祉施設における介護 者のパーソン・センタード・ケアに対する意識を高 めることで、介護現場のケアの質を向上させること ができる手法である。しかしながら、日本において マッパーの有資格者は全ての施設をカバーできるほ ど多くない。さらに、DCMは被介護者の状態を客観 的に把握するためには効果的な手法だが、一度に評 価できる対象は多くても5名であり、全ての被介護 者の状態を把握することはできない。

実際に DCM を受けた介護者に実施されたアンケ ートを参照したところ、「第三者の視点で評価しても らう事で、自分でも気付けなかったケアの改善点に 気付く事が出来た」という意見の一方で「たった6 時間観察したところでご利用者の全てを理解できる のか」という意見も見られた。これは、24時間非介 護者と向き合っている介護者ならではの意見である。

そこで本プロジェクトでは、客観的かつ定量的に 被介護者の状態を記録できるという DCM の利点を 活かし、被介護者の状態を簡単に記録する事ができ る携帯端末を開発した。これを用いる事で、被介護 者の状態を随時記録することが可能となる。ただし、 DCM は 介 護 福 祉 施 設 の デ イ ル ー ム 内 で 日 中 実 施 さ れるのに対して、介護者は施設内のあらゆる場所で 24時間被介護者のケアを行っているため、行動カテ ゴリコードについては若干の修正を行った。具体的 には、「不在」を除いた24項目を使用するとともに、 介護者にとって理解し易いように、A~Zのアルファ ベット表記だったカテゴリコードを簡単な日本語の 略語に変更した。

3 被介護者の状態記録システム

介護現場においては、被介護者に関する各種デー タは主に紙媒体によって収集されているが、その帳 票類は介護者全員で共有しているため、記入の際に

有すべき情報として残されるが、被介護者の24時 間を単位とした毎日の生活の流れが分からないとい う問題もある。そのような状況を改善するためには ケアの内容をいつでも、どこでも記録・参照できる ようなシステムが必要であり、その際には必要な情 報を正確に、できるだけ効率的に記録出来ることが 求められる。

そこで本プロジェクトでは介護者の負担を減らし、 ケアの質を向上させる為に、DCMの行動カテゴリコ ードを応用した独自の項目を使用した携帯端末型状 態記録システムを開発した。

3.1 状態記録システムの概要

本システムではAndroid携帯端末Galaxy Sを採用 した。軽量、かつタッチパネル搭載で指のみの操作 で簡単に記録出来る端末を採用することで、介護者 は日々のケアを行っている最中に、記録すべきだと 判断した被介護者の状態をいつでも記録する事が出 来る。さらに、操作手順は必要項目を選択していく だけなので非常に簡単であり、記録の時間短縮が可 能となっている。(図1)

図 1: 介 護 者 に よ る 携 帯 端 末 の 利 用 状 況

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3.2 状態記録システムの端末の使用手順

状態記録システムの端末の使用手順は以下の通り である。

(1) 端末のロック画面を解除する。

(2) 被介護者の状態を記録する為の専用アプリを起 動する。

(3) システムを使用する介護者の名前を選択しログ インする。これ以降、ログイン状態は保持される。 (4) 担当ユニット名、部屋名(デイルーム、居室、ト

イレ、浴室など)を順番に選択する。

(5) 被介護者の状態を示す項目を24項目の中から 選 択 す る 。( 図 2 、 例 : 被 介 護 者 が 歌 を 歌 っ て い たら「表現」)

(6) 対象となる被介護者の名前を選択する。複数人が 同時に食事を摂っている場合、本システムは被介 護 者 の 複 数 選 択 が 可 能 な の で 一 括 で デ ー タ を 入 力する事ができる。

(7) 項目の評価を選択する。記録対象の被介護者の状 態が「よい状態」である場合は「↑」、「よくない 状態」である場合は「↓」を選択する。

(8) 選択内容を確認してから入力を確定する。

図 2: 状 態 を 表 す 評 価 項 目 の 選 択 画 面

4 介護施設での実証実験

本システムが介護士に与える効果を検証するため、 2011年1月より社会福祉法人こうほうえん(本 部・鳥取県米子市)の介護老人福祉施設「よなご幸 朋苑」の「大地」ユニットにてシステムを実装した 携帯端末を導入し、検証実験を行った。

「大地」ユニットを担当する介護者10名(夜勤 のみ担当する者4名を含む)それぞれに、本システ ムを実装した携帯端末を常に携帯してもらい、勤務

時間内に無理の無い範囲で出来るだけ多くの記録を 行うように依頼した。

4.1 蓄積されたデータの分析

本システムを導入した2011年1月14日より 2月13日12時までに蓄積されたデータは387 6件であったが、最初の週はシステムの不具合など もあったため、ここでは分析対象を1月23日(第 5週)より2月12日(第7週)とした。

4.2 分析結果

蓄積されたデータを、被介護者別に行動カテゴリ ごとの記録数をまとめた。(図3)その結果、被介護 者により記録数に差があること、また記録されたカ テゴリとしては「排泄」「食事」「ケア」という、介 護において最も基本的な行動要素が大部分を占める 事が分かった。また、要介護度の低い被介護者ほど この3つの介護要素以外のカテゴリが占める割合が 多くなる傾向が見られた。要介護度の高い被介護者 の場合、コミュニケーションをとるのが困難であり、 居室にいる時間が長く寝たきり度の高い被介護者で あるため、自然と介護者が食事や排泄などの介助作 業に集中してしまう傾向がある為だと考えられる。 また、図4に介護者別に被介護者ごとの記録数を まとめたグラフを、介護者の経験年数、被介護者の 要介護度とともに示す。このグラフから経験年数1 4年の介護者が、それ以外の介護者と比較しても圧 倒的に多い記録数を示し、要介護度の高さに関わら ず均等な割合で被介護者に注意を向け、関わりを持 っている事が見て取れる。さらに図5から、どの介 護者も「食事」「排泄」「ケア」のカテゴリが多かっ た一方で、経験年数14年の熟練介護者は、被介護 者 の 交 流 や ア ク テ ィ ビ テ ィ な ど の 行 動 を 分 類 し た

「関係性」に該当する項目の評価をしている割合が 非熟練者よりも高かった。

4.3 ヒアリングの実施

実証実験期間中に、携帯端末を利用する介護者に ヒアリング調査を行い、データを記録することによ り介護者側に生じた主観的な変化について調べた。 その結果、どの介護者からも聞かれた事として、携 帯端末を導入してから、より被介護者の様子を注意 して見守るようになった事が挙げられる。携帯で入 力をするという事が常に介護者の頭にあり、今の被 介護者の様子がカテゴリのどれに当てはまるのかを 常に考えるようになったという事であった。これは 本システムを導入したことの大きな効果であるとい える。

しかし、被介護者の様子を見ていても、その全て

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を記録しているわけではないということも明らかに なった。主に記録しているのは「食事」「排泄」「ケ ア」という、介護において重要かつ最低限必要な部 分であり、それ以外の生活を豊かにするような行動 要素の記録の割合は多くはない。介護者自身、記録 データを見てこれらの要素以外の記録が非常に少な いという事に気付いていたが、その理由として人に よって当たり前になってしまっていることは記録せ ずに終ってしまう傾向があり、どちらかというと「い つもと違う事」を記録していることを挙げていた。 これは被介護者の特定の反復動作(例えば身体を揺 する、手を噛むなど)などに対して、ユニット全体 に慣れが生じ、小さな変化や欲求に気付いていない 可能性を示唆する意見である。

さらにある介護者は、蓄積されたデータを閲覧し て、要介護度の高い被介護者に対して関係性に関す るカテゴリが少ない事に気付き、もっと記録される カテゴリを増やしていく努力が必要だと述べた。そ のような 気付き から、発語が無い被介護者であ っても率先して話しかけて新たなカテゴリを引き出 そうとするようになったと、自らの主観の変化を述 べた。以上のように本システムが介護者に主観的な 変化をもたらし、気付き を誘発するツールになり うることが示された。

5 総括

本システムを介護福祉施設に導入したことによっ て、これまでの被介護者に関する定性データに加え て、定量データの抽出も可能となった。これにより 被介護者の状態の変化のパタンや、介護者が行った ケアとの関係、介護者の熟練度による記録パタンの 相違といったデータを取得できる。これらのデータ を分析し、その知見が介護従事者に共有されること が、介護の質向上に繋がる事が期待される。

さらに、本システムの導入によって目指す効果の 一つに、データ整理にかかる時間の短縮が挙げられ る。つまり携帯端末を用いて記録することで、デー

謝辞

本研究は平成22年度医療・介護等関連分野におけ る規制改革・産業創出調査研究事業(医療・介護周 辺サービス産業創出調査事業)「介護現場の持続 的 な質向上をもたらす好循環モデルの検討」として実 施しているものである。

参考文献

[1] 厚 生 労 働 省 : 平 成 2 2 年 度 高 齢 者 白 書 , http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html (accessed on 2011-2-1)

[2] (財)介護労働安定センター,平成21年度介護労働 実態調査,

http://www.kaigo-center.or.jp/report/h21_chousa_01.html (accessed on 2011-2-1)

[3] 鈴木みずえ: 認知症ケアマッピングを用いたパーソ ン ・ せ ん タ ー ド ・ ケ ア 実 践 報 告 集,ク オ リ テ ィ ケ ア,2009

[4] T.Kidwood,認知症のパーソン・センタード・ケア-新 しいケアの文化へ,筒井書房,2005

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図 3: 被 介 護 者 別 の 評 価

図 4: 介 護 者 別 の 記 録 数

(7)

図 5: 介 護 者 が 記 録 し た 評 価

図   3 : 被 介 護 者 別 の 評 価
図   5 : 介 護 者 が 記 録 し た 評 価

参照

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