ミクロ経済学 宿題 4 (解答)
†問題 1.
(コメント)TAが試験で書きそうな解答を意識してみました。 (a) Υ(xA, xB) = πA+ πB− 20 × (xA+ xB)とすると、
Υ(xA, xB) = πA+ πB− 20 × (xA+ xB)
= 20xA− x2A+ 40xB− x2B
= −(xA− 10)2− (xB− 20)2+ 500
となるので、(¯xA, ¯xB) = (10, 20)。したがって社会厚生は500。
(b) πA, πB はそれぞれxA, xB についての凹関数なので、一階条件をチェックすることで最適解の必要十 分条件を得ます。一階条件を考えて、
0 = ∂πA
∂xA
= −2xA+ 40
˜ xA= 20
となります。同様にして、(˜xA, ˜xB) = (20, 30)。したがって社会厚生は300。
(c) いま、x˜A≤ 20であるので工場Aの行動はかわりません。一方、工場Bに関してはxB ≤ 20の範囲 でπB は増加関数なのでxˆB = 20となります。したがって、(ˆxA, ˆxB) = (20, 20)であり、この場合の 社会厚生は400。
(d) この場合の生産者余剰は、それぞれ
πA= 40 × xA− x2A+ p × (20 − xA) πB= 60 × xB− x2B+ p × (20 − xB)
となる。それぞれ一階条件を考えると、
xA= 40 − p
2 (1)
xA= 60 − p
2 (2)
さらに、排出権取引市場において財が過不足なく取引されるのならば、
xA+ xB = 40 (3)
が成立します。このとき、競争均衡は(1)(2)(3)を満たす(x∗
A, x∗B, p∗)として定義されます。したがっ て、3つの式を連立させて競争均衡は(x∗A, x∗B, p∗) = (15, 25, 10)となり、社会厚生は450。
† 質問や間違いがありましたら、micro09komaba(at)gmail.com までご連絡ください。
問題 2.
(a) 問題文中の定義より限界代替率は、
∂uA/∂xA
∂uA/∂G = 1 1/G= G
であることがわかります。Bさんについても同様に求めることができます。
(b) まず、パレート効率的な配分の必要条件(サミュエルソン条件)をもとめます。(ˆxA, ˆxB, ˆG)をパレー ト 効 率 的 な 配 分 、そ の 時 の 効 用 水 準 をuˆA = uA(ˆxA, ˆG), ˆuB = uB(ˆxB, ˆG)、経 済 全 体 の 資 源 の 量 を ω = ωA+ ωBとし、以下の最適化問題を考えます。
xAmax,xB,G uA(xA, G) s.t. ω ≥ xA+ xB+ G, uB(xB, G) ≥ ¯uB
この最適化問題は、ほかの人の効用水準を一定以上に保ちながら(uB(xB, G) ≥ ¯uB)、経済全体として 実現可能である(ω ≥ xA+ xB+ G)配分を求めています。この条件が全員について当てはまることが パレート効率的な配分の定義なので、同様にBさんについても
xAmax,xB,G uB(xB, G) s.t. ω ≥ xA+ xB+ G, uB(xA, G) ≥ ¯uA
を考えます。したがって以上二つの最適化問題のラグランジュ関数を分析することでサミュエルソン条 件を求めることができます。ラグランジュ関数は、
LA(xA, xB, G, λ, µ) = uA(xA, G) + λ(ω − xA− xB− G) + µ(uB(xB, G) − ¯uB) LB(xA, xB, G, κ, ν) = uB(xB, G) + κ(ω − xA− xB− G) + ν(uA(xA, G) − ¯uA)
LAについての一階条件を考えて、
0 = ∂LA
∂xA
= ∂uA
∂xA
− λ
0 = ∂LA
∂xB
= −λ + µ∂uB
∂xB
0 = ∂LA
∂G =
∂uA
∂G − λ + µ
∂uB
∂G LB についての一階条件も同様です。それらを整理すると、
∂uA/∂G
∂uA/∂xA
+ ∂uB/∂G
∂uB/∂xB
= 1 = df
−1
dG
を得ます。したがって、1/G + 1/G = 1つまりG = 2ˆ 、かつω ≥ ˆxA+ ˆxB+ ˆGとなる配分(ˆxA, ˆxB, ˆG) がパレート効率的な配分となることがわかります。
(x∗A, G∗)は予算制約x∗A+ p∗AG∗ = ωAのもとでAさんの最適消費問題の解となっている。 (x∗B, G∗)は予算制約x∗B+ p∗BG∗= ωBのもとでBさんの最適消費問題の解となっている。 経済全体として実現可能である(x∗A+ x∗B+ G∗= ω)
最適化問題のラグランジュ関数はそれぞれ、
LA(xA, G, λ) = uA(xA, G) + λ(ωA− xA− pAG) LB(xB, G, κ) = uB(xB, G) + κ(ωB− xB− pBG)
となり、一階条件から(p∗A, p∗B, x∗A, x∗B, G∗)=(1/2, 1/2, ωA− 1, ωB− 1, 2)となります。
問題 3.
(コメント)問題(a)のゲーム1のように一言説明があると丁寧な答案といえるかもしれません。
(a) ・ ゲーム1:2さんにとってaをとった時とbをとった時の利得を比較すると、相手がAをとるとき は1 ≥ 1でありBをとるときは1 ≥ 0なので、定義より戦略bは戦略aに弱支配されます。戦略aは、 ほかの戦略すべて(ここでは戦略b)を弱支配するので、弱支配戦略です。
・ ゲーム2: 弱支配される戦略、弱支配戦略はともにありません。
・ ゲーム3: 戦略B, a, bはそれぞれ弱支配されます。弱支配戦略はcです。 (b) ・ ゲーム1:ナッシュ均衡は、(A, b), (B, a)です。
・ ゲーム2:ナッシュ均衡は、(C, c)です。
・ ゲーム3:ナッシュ均衡は、(A, a), (B, b), (C, c)です。
(詳しい説明)ゲーム3について解答に至る過程を挙げます。1さんにとって、2さんがbをとると仮定 したとき最もよい利得を与える戦略を考えます。ここではA, B, C が最も高い利得を与える戦略です。 同様に、aが与えられたときを考えます。さらに、すべての人にとっての他の人のすべての戦略の組に 対する反応を考えます
1
。最後に、お互いが相手の戦略が与えられたときに最も利得が高くなる戦略を とっている状況を考えることで、ナッシュ均衡は(A, a), (B, b), (C, c)とわかります。
1これらは、表の中の下線によってあらわされています。
問題 4.
(コメント)ここも試験の答案のつもりで書きました。 プレーヤーの利得関数は、それぞれ
πA(pA, pB) = (9 − PA+ pB) × pA= −PA2+ (9 + pB) × pA
πB(pA, pB) = (20 − 2PB+ pA) × pB = −2PB2 + (20 + pA) × pB
であらわされます。これらをもちいて、各企業の戦略的行動の特徴について考えましょう。πA はpA につい ての凹関数なので、他企業の戦略を固定した時の一階条件をチェックすることで最適解の必要十分条件を得ま す。一階条件を考えて、
0 = ∂πA
∂pA
⇔ 0 = −2pA+ 9 + pB
このとき、最適応答は関数としてあらわされ、
p∗A= RA(pB) =9 + pB 2
となります。ここで、RA(pB)は企業Aの最適応答関数とします同様に、企業B の最適反応関数は、 p∗B= RB(pA) =20 + pA
4
とあらわされます。これらに関してp∗A= RA(p∗B),かつpB∗ = RB(pA)となる場合を考えて、(p∗A, p∗B) = (8, 7) が ナ ッ シ ュ 均 衡 で あ る と わ か り ま す(各 自 問 題 5の よ う な グ ラ フ を 描 い て 確 か め る こ と を 各 自 の 課 題 と し ます)。
問題 5.
(コメント)試験での答案より厳密な書き方を意識しました。 (a) 企業iの利得は、
πi(q1, q2, ..., qI) = qi
a −
I
∑
j=1
qj
− qiM Ci
であらわされます。いま、0 ≤ M Ci < a を仮定します。このときの企業の最適反応を考えましょう。 まずは企業1 について考えます。
条件をチェックします。 一階条件を考えて、
0 = ∂πi
∂qi
⇔ 0 = −qi+ a −
I
∑
j=1
qj− M Ci
このとき、最適応答は関数としてあらわされ、
Ri(q1, q2, ...qi−1, qi+1, ...qI) =a −
∑
j6=iqj− M Ci
2
となります。このとき、企業1の最適反応関数は、 R1(q2) = a − q2
2 (4)
とあらわされます。
■ Case 1.2 (a ≤ q2 のとき) このとき価格pは常に0となります。企業1 については、限界費用が0 であるので、どのような生産量でも同じ利得を得ます。したがって企業1 の最適反応対応は、
BR1(q2) = [0, ∞) (5)
とあらわされます。
■ Case 2.1 (0 ≤ q1< aのとき) Case 1.1 と同様に一階条件を考えて、企業2の最適反応関数は、 0 = ∂π2
∂q2
(6)
⇔ R2(q1) = a − q1− 1
2 (7)
とあらわされます。
■ Case 2.2 (a ≤ q1 のとき) このとき価格pは常に0 であるので、企業2 は生産しないことが最適反 応になります。したがって、最適反応対応は、
BR2(q1) = {0} (8)
とあらわされます。
以上の考察が以下の図に示されています。図中の太線および斜線部分が最適応答関数および最適応答対 応をあらわします。
(b) 図より、ナッシュ均衡は、(q1, q2) = (a−1
3 , a−2
3 )となることがわかります。
(c) 問題の仮定よりM Ci = M C となります。i = 1, 2, ..., I について最適反応関数を連立します。qi∗ を ナッシュ均衡でとられる戦略として、
I
∑
i=1
qi∗=
I
∑
i=1
(a −∑
j6=iqj∗− M C
2
)
=I(a − M C) − (I − 1)∑Ii=1q∗i 2
いま、すべての企業について対称な状況を考えているので、qi∗=
∑I i=1q∗i
I より、
qi∗= a − M C
I + 1 → 0 (as I → ∞)
となります。