• 検索結果がありません。

資料 富山消化管撮影研究会

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "資料 富山消化管撮影研究会"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

38(1202)|日本放射線技師会雑誌 2009. vol. 56 no. 685

〔緒言〕

 バリウムと空気を併用することによって,胃の粘 膜の微細構造を描出しようとする二重造影法は,近 年,バリウムやX線フィルムの質の向上,また,撮 影技術の進歩によって,より詳細に粘膜をとらえる ことが可能になり,早期胃癌を含めた隆起性および 潰瘍性病変の検出に大きく貢献している.しかしな がら,胃X線造影検査での診断は,あくまでも確定 診断の第一歩にすぎない.内視鏡検査の併用および 生検による病理診断の共存なくして,確定診断へは 辿りつけないのが現状であるが,その第一歩を担う 責任は重大であり,ただルーチン撮影をこなすので はなく,病変を発見し,それを的確にとらえ,描出 していかなければならない.そのためには自分の撮 影した写真を必ず見ること,そして病変があれば, できる限り確定診断まで追跡すること,さらに症例

をなるべく多く知ることが重要であり,病変の良・ 悪性の特徴や読影のポイントを知ることで,迅速に 読影撮影が容易になるのではないかと考えられる.  そこで今回,二重造影像からの胃粘膜ひだ,およ び粘膜パターンの読影について,一部,内視鏡検査 および生検を含め,組織診断まで追跡し検討した.

〔方法〕

 ① 胃小区から成り立っている粘膜パターンは正常 では,ほぼ均一な顆粒状陰影または,網目状陰 影として描出されるため1),これらの構造にお いて大小不同または,不整形の顆粒ないし結節 の有無などで異常を見分ける.

 ② 陥凹性の病変の存在はバリウムの溜まりとして 描出されるため1),そのバリウム貯留の輪郭と, それを取り巻く周囲粘膜および,ひだの所見を 注意深く読影する.

 ③ 二重造影像から,ひだの走行異常と幅・形態の 異常を発見する.

〔結果〕

1 Ⅱc型早期胃癌<ひだの牽引>(Fig.1)1)  胃体部大彎から小彎に向かって,ひだが牽引され ているのが分かる.また,その変形の内側に,変形 Examination of Gastrography around reading

胃 X 線造影読影検査

石田知代医療法人正恵会 石田温泉病院 放射線科 診療放射線技師

Key Words: gastrography, reading, examination, upper gastrointestinal tract

Summary: In the gastric X-ray contrast examination; by considering the mucosal pattern of the gaster, movement of wrinkles, width, morphological abnormalities and the formation of lesser curvature and greater curvature, and by examining while observing the radiogram, it becomes easier to detect the pathological changes, identify the affected region and photograph it. By interpreting the X-rays and endoscopic findings, and by tracking the results of biopsy along with the photographing, several cases can be studied which will help in further improving the knowledge of pathological changes. That way, interpretation of radiogram will become easier, which can contribute to the early detection of the gastric cancer.

要旨:

 胃X線造影検査では,胃の粘膜パターンや,ひだの走行,幅形態の異常所見と大彎や小彎の線の成り立ちを頭に入れ, 読影しながら検査をすることで,より病変を発見しやすく,病変部位の描出を中心にした撮影が可能になると考えられる. 撮影だけにとどまらず,X線写真の読影,内視鏡所見,生検結果まで追跡することによって,多くの症例を学ぶことができ, さらに病変に対する知識を高めることで,読影検査が容易になり,早期胃癌の早期発見に貢献できることを切望する.

(日放技誌56:1202-1205,2009)

Tomoyo Ishida

Department of Radiology, Medical Corporation SEIKEIKAI, Ishida Spa Hospital

投 稿 受 付:平成21年6月2日 最終稿受理:平成21年7月16日

別刷請求先:青森県上北郡おいらせ町上前田21-1       (〒039-2221)

      医療法人正恵会 石田温泉病院 放射線科       石田知代

Arts and Sciences

学 術

資 料

(2)

学術|39(1203) に一致した異常なひだの集中像と,その中央には陥

凹性の病変が見られ,ひだの集中する小彎近くは, 小結節状の不整粘膜になっており,Ⅱc型早期胃癌 が認められた.高齢者に見られる胃体部大彎の腹壁 からの圧迫や,一見,変形と思われる胃の蠕動運動 における大彎の線の異常においては,大彎の内側で,

それと平行するひだが見られるだけで,集中像は認 められなかった.

2 Ⅱc型早期胃癌<ひだの走行異常> (Fig.2)1)  通常,縦方向に蛇行して走るひだであるが,胃体 中部で3~4本直線化して小彎方向に向いているの

 

 

潰瘍

全周にわたってほぼ均一 中心が1点に集合 辺縁が円滑

ほとんど平滑

再生上皮は均一,一様で きれいな 状

一様な白苔 白苔がやや不均一

状の再生上皮 (楎 ) 全周に均一でないことが多い 中心が1点でないことが多い 辺縁は 切れ    ①    紏 合    ②    こん棒状太まり③

などを示す

不整や虫くい像     不規則な凹凸や小結節  不規則な発赤や退色   部分的な再生上皮の増生 白苔ののび出し    

<良性潰瘍> <早期癌(潰瘍型)>

(竹本忠良,長廻 紘・他編:消化管内視鏡診断テキスト1.文光堂,146,1983.より引用) Fig.3 良・悪性のひだの特徴

(松江寛人 編;市川平三郎 監:胃X線読影の基本.最新 胃X線検査 技術―基礎と実際―,金原出版,228,2001.より引用)

Fig.1 牽引されたひだの集中像

(松江寛人 編;市川平三郎 監:胃X線読影の基本.最新 胃X線検査 技術―基礎と実際―,金原出版,229,2001.より引用)

Fig.2 ひだの走行の異常

(3)

40(1204)|日本放射線技師会雑誌 2009. vol. 56 no. 685

Fig.4 X線二重造影像

Fig.5 内視鏡所見①

Fig.6 X線造影圧迫像

Fig.7 内視鏡所見②

(4)

学術|41(1205) が分かる.比較的小さなⅡc型早期胃癌が認められ

た.良性潰瘍のひだは,全周にわたってほぼ均一で あり,辺縁は円滑,中心が1点に集中しているのが 特徴であるが,逆に悪性では,ひだ1本1本が全周 にわたって均一でないことが多く,融合,こん棒状 な太まりなどを示し,辺縁は不整や虫食い,不規則 な凹凸や小結節,発赤,退色,白苔ののび出し,部 分的な再生上皮の増生など2)を示すため,その特 徴をとらえることが良・悪性の鑑別診断の指標とな る(Fig.3)2)

3 良性の潰瘍性病変(Fig.4)

 胃角部にて,線の異常と少量のバリウムの溜まり を認め,潰瘍性の病変を疑い,内視鏡検査において 胃角部ほぼ中央にA stageの深い潰瘍を認め,潰 瘍底には白苔が付着し,露出血管が見られた.潰瘍 辺縁は明瞭で,周囲は浮腫状に腫脹しており,良性 の潰瘍が疑われた.また,生検結果においても, groupⅡの診断を得た(Fig.5).

4 進行癌(Fig.6)

 圧迫撮影にて,辺縁不整なバリウムの溜まりと, くずれた周堤を認め,BorrmanⅢ型の悪性を疑う潰 瘍性病変により,内視鏡検査を行った.内視鏡検査 では,前庭部後壁側に比較的広範囲に不整な粘膜を 認め,その周囲はわずかに周堤様に盛り上がりを呈 しており,さらに,前庭部全周にわたって環状に, ひだの異常が見られた.全体にやや硬い印象があり, 易出血性でbiopsy施行.生検結果でgroupⅤのgastric cancerであった(Fig.7).

〔考察〕

 縦軸の方向と異なる方向に走るひだ,また,縦軸 の方向に走るひだと交差するひだは,病変の存在を 示唆していると考えられる.そして,早期胃癌の約 70%が潰瘍または,びらんを伴う陥凹性病変である ため1),潰瘍によって生じる不均一なひだの集中像 は早期胃癌発見の大きな手がかりの1つとなる.

 また,背臥位で縦軸に走るひだに交差するひだが 認められ,かつ粘膜に明瞭な所見がない場合は前壁 病変の存在を疑う必要があると考えられる.さらに, バリウムの溜まりの輪郭とそれを取り巻く周囲粘膜 および,ひだの所見を読み取ることにより,病的異 常の存在の有無と良・悪性の潰瘍性病変の鑑別診断 となる.また,小彎や大彎の不自然な曲線および不 連続な曲線を見極め,粘膜所見とあわせて読影する ことが重要であると考えられた.

〔結語〕

 以上のように,X線造影検査での異常所見が,内 視鏡検査では,どのような形態を示しているのか, また,組織診断では,どうだったのかを知ることは, 非常に重要なことだと思われる.これは,すべての 検査において言えることであるが,異常所見に対し て感敏になること,「これって何だろう」という疑 問をそのままにせず,「これってそうなんだ」とい う結論まで追求することを常に心がけ,検査に臨む ことが撮影技術向上への近道であると考えられる. また,胃X線造影検査は,病変を写真に写さなけれ ば,異常なしと診断されてしまうため,撮影する者 にとっては,その責任は重大であり,その重みを常 にもって検査に臨まなければならない.ルーチン撮 影にとらわれず,胃の粘膜やひだ,および小彎や大 彎の線の成り立ちを頭に入れながらの撮影により, 病変を発見しやすく,また,病変部位の描出を中心 にした読影検査ができるのではないかと考えられ る.これにより,さらなる早期胃癌の早期発見へつ ながることを期待したい.

【参考文献】

1) 松江寛人 編;市川平三郎 監:胃X線読影の基本. 最新 胃X線検査技術―基礎と実際―,金原出版, 228,229,2001.

2) 竹本忠良,長廻 紘・他編:消化管内視鏡診断テ キスト1.文光堂,146,1983.

参照

関連したドキュメント

It is suggested by our method that most of the quadratic algebras for all St¨ ackel equivalence classes of 3D second order quantum superintegrable systems on conformally flat

In Section 3, we show that the clique- width is unbounded in any superfactorial class of graphs, and in Section 4, we prove that the clique-width is bounded in any hereditary

This paper develops a recursion formula for the conditional moments of the area under the absolute value of Brownian bridge given the local time at 0.. The method of power series

Answering a question of de la Harpe and Bridson in the Kourovka Notebook, we build the explicit embeddings of the additive group of rational numbers Q in a finitely generated group

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

In our previous paper [Ban1], we explicitly calculated the p-adic polylogarithm sheaf on the projective line minus three points, and calculated its specializa- tions to the d-th

Our method of proof can also be used to recover the rational homotopy of L K(2) S 0 as well as the chromatic splitting conjecture at primes p > 3 [16]; we only need to use the

In this paper we focus on the relation existing between a (singular) projective hypersurface and the 0-th local cohomology of its jacobian ring.. Most of the results we will present