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hswhbl 2017 03g pp05

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世界史のしおり 2017③

•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••

捉えること」,「歴史家のあいだの主要な論争を検

討すること」 ,「過去になされた決定のもたらす

影響について仮説を立てること」,また基準5「歴

史 的 論 点の分 析と意 思決 定(Historical

Issues-Analysis and Decision Making)」では,「過去の

論点と問題を特定すること」,「ある決定の可否に

ついて判断すること」など,とても重要な指摘が

なされている。

最後に,

「歴史的な見方・考え方」として,

「ジェ

ンダーの視点」をあげたい。これまでの歴史を相

対化し,歴史を読みかえるためには,ジェンダー

の視点は不可欠である。幸運にも2014,2015年に

あいついで高校や大学でジェンダー史研究の成果

を生かすためのジェンダー史の概説書が出版され

(注3)

。フランスの人権宣言を徹底的に書きかえた

オランプ=ドゥ=グージュは有名だが,

「戦争とジェ

ンダー」,「ナチズムとジェンダー」など高校生が

学ぶべきテーマは数多く存在する。

以上のような「歴史的な見方・考え方」を,「問

い」として授業で扱う歴史的事実に問うことが求

められてこよう。

さて,『明解 世界史A』(以下,教科書)p.186

〜 187「戦争の変化」は,以下の項目から構成さ

れている。

1

17世紀前半 国際法の誕生

2

18世紀初め ヨーロッパ諸国による利害対立

3

20世紀前半 総力戦となった第一次世界大戦

4

20世紀前半 平和維持をめざした国際連盟

何を問うべきか

5

20世紀半ば 民間人が犠牲となった第二次世界

大戦

6

20世紀後半 冷戦と核兵器開発競争

7

20世紀後半 民族紛争の噴出

8

21世紀初め テロとの戦い

まずは生徒が基本的な歴史的事項を理解できる

ように,教科書や『最新世界史図説タペストリー 

十五訂版』などの副教材を用いて5W 1Hを問い

たい。いつ(When),どこで(Where),だれが

(Who),何を(What),なぜ(Why),どのよう

に(How)の要素をプリントにまとめさせる。

次に,答申の「歴史的な見方・考え方」を中心

にすると,以下のように問うことができるであろ

う。

例1:

1

三十年戦争と

3

第一次世界大戦,

5

二次世界大戦と

8

テロとの戦いを比較すると,戦

争はどのように変化したのか。また,何がその変

化を可能にさせたのか。

例2:

3

第一次世界大戦と

5

第二次世界大戦の

終結後,戦争の反省はどのように行われたのか,

その類似点と相違点をあげよ。また,なぜその類

似点や相違点は生じたのか。

例3:

6

冷戦と

8

テロとの戦いには,どのよう

な関係があるだろうか。

6

冷戦は

7

民族紛争にど

のような影響を与えたのだろうか。

付録のプリント例は,例1の問いに沿って作成

したものである(生徒の記入例が入っていない,編

集可能なデータが帝国書院のホームページからダ

ウンロードできる。URL…http://www.teikokushoin.

co.jp/journals/history_world/index.html)。

戦争について深く理解しようとするなら,さら

なる歴史的事実と解釈の探究へ向かわねばならな

い。例えば,以下のような問いを生徒とともに考

えたい。

8

テロとの戦い:まず,この「テロとの戦い」

という言葉自体を批判的にとらえる必要があろう。

なぜ「テロとの戦い」という言葉が使用されたの

か。誰がテロリストだと決めるのか,誰がなんの

ためにテロリストになるのか。「テロとの戦い」

さらなる「問い」へ

(3)

世界史のしおり 2017③

│5

•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••

はそれ以前の戦争とどのように異なっているのか。

なぜ「テロとの戦い」から戻ったイラク帰還兵に

は自殺者が多いのか

(注4)

7

民族紛争の噴出:なぜユーゴスラヴィア内戦

では,隣人どうしが殺し合うことになったのか。

内戦当時のユーゴスラヴィアの民族や宗教構成は

どうだったか。NATO軍によるボスニア・ヘル

ツェゴビナ空爆(1995年)やユーゴ空爆(1999年)

は,なぜ実行され,どのような影響を与えたのか。

なぜ民族浄化やジェノサイドが生じ,スレブレニ

ツァで多くの人が殺されたのか。戦時性暴力とは

何か,またなぜそれは生じるのか。旧ユーゴスラ

ヴィア国際戦争犯罪法廷は,戦争犯罪者をどのよ

うに裁いたのか

(注5)

パレスチナの第2次インティファーダ(図1参

照)において,なぜ少年は戦車に投石せざるをえ

ない状況に追い込まれたのか。

6

冷戦と核兵器開発競争:冷戦下,朝鮮戦争と

ベトナム戦争の非戦闘員への被害や被害者の証言

にはどのようなものがあるか。アメリカ軍が使用

した枯葉剤はベトナムの子どもにどのような被害

を与えたのか。キューバ危機における核戦争は,

なぜ回避されたのか。冷戦期に米ソの核兵器が誤

射される危険性はなかったのか。日米間の「核密

約」とは何か

(注6)

ブラント首相の東方外交(図2参照)は,東西

冷戦にどのような影響を与えたのか。またブラン

トは,なぜソ連・西ドイツ武力不行使条約を結ん

だのか。米ソによる戦略兵器制限交渉,弾道弾迎

撃ミサイル制限条約,偶発核戦争防止協定,そし

て核戦争防止協定が締結された歴史的経験は,現

代世界にどのような有効性をもつのか。

5

民間人が犠牲となった第二次世界大戦:歴史

上,多くの場合において民間人や非戦闘員は犠牲

となってきたが,この表題にあえてつけられたの

はなぜか,それはこの戦争のどのような性格とか

かわるのか。なぜ,同じ戦争被害者であるにもか

かわらず,補償される人とされない人が存在する

のか。なぜ戦争被害の検証は困難なのか。

原子爆弾の使用について,「日本は落とされて

当然だった」というような「歴史的必然論につい

て議論をたたかわせること」(歴史のための全米

基準)をねばり強く続けなければならない。トルー

マン大統領,スティムソン陸軍長官,グローヴス

准将は,原爆について何を考えていたのか。なぜ

グローヴスは京都へ落とすことをたびたび要求し,

なぜトルーマンとスティムソンはそれを拒否し続

けたのか。また,「日本はアメリカと戦争せざる

をえなかった」という「歴史的必然論」も同様に,

日米開戦は本当に避けることができなかったのか,

と問いを立てて議論をねばり強く続けなければな

らない。日米交渉や御前会議ではいったい,何が

議論されていたのか。そして昭和天皇は,この一

連の過程をどのように考えていたのか。

今回は資料を提示できなかったが,問いと資料

を組み合わせて,生徒の戦争認識を深めていきた

い。反戦を貫いて投獄された人,人間の生きる権

利,人間の尊厳を踏みにじられた人の証言から高

校生が学ぶことはきわめて多い。また,戦争決定

者や遂行者,そして兵士・軍人の考えや苦悩に肉

薄すると同時に,戦争被害者の証言一つ一つを生

徒とともに読んで悲しみ,そして怒り,今後教員

も生徒も主権者として,どのようにすれば戦争の

ない平和な日本や世界を構築できるのか,じっく

りと語り合っていきたい。

おわりに

【参考文献】

(注1)小川幸司『世界史との対話〈上〉─70時間の歴史 批評』(地歴社,2011年)p.329

(注2)鳥山孟郎『考える力を伸ばす世界史の授業』(青木 書店,2003年)p.60〜63

(注3)三成美保・小浜正子・姫岡とし子編『歴史を読み 替える ジェンダーから見た世界史』(大月書店,2014年), 久留島典子・長野ひろ子・長志珠絵編『歴史を読み替え る ジェンダーから見た日本史』(大月書店,2015年) (注4)デイヴィッド=フィンケル著,古屋美登里訳『帰還

兵はなぜ自殺するのか』(亜紀書房,2015年)

(注5)ジョン=ヘーガン著,本間さおり訳,坪内淳監修『戦 争犯罪を裁く(下)─ハーグ国際戦犯法廷の挑戦』(NHK 出版,2011年)

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