Homework 1
稲葉 大
2010 年 05 月 21 日
提出は3 週間後の 6 月 10 日(木),講義中に提出すること.解答は,できるだけ丁寧に書き, 途中の計算プロセスなども記述すること.提出にはA4 の用紙を用い,ホチキス等で綴じること. 問題について,不明なことがある場合には,遠慮なくメール等で質問すること.
e-mail: big.rice.plant.leaf@gmail.com
準備
代替の弾力性(elasticity of substitution)とは,
まず,技術的代替率(rate of technical substitution,RTS) を定義する.生産関数を Y = F (K, EL) とするとき,これを全微分すると,
dY = ∂F
∂KdK + E
∂F
∂ELdL
⇔dY = M P K × dK + M P L × dL
ここで,算出量が一定である等量曲線に沿って(K, L) が変化したとすると, 0 = M P K × dK + M P L × dL
⇔dK dL = −
M P L M P K
が得られる.技術的代替率(rate of technical substitution,RTS) は RT S = M P L
M P K
と定義される.定義からRTS とは,生産の等量曲線の傾きを表している.
代替の弾力性σ(elasticity of substitution)とは,等量曲線の曲率(curvature)のことをいう. すなはち,産出を固定したとき,RTS の 1%変化に対して,投入の比率 (KL) が何%変化するかを表
したものである1.よって次のように定義できる.
(1) σ = −
d(KL)
K L
dRT S RT S
= −d log (K
L
) d log RT S
この準備を踏まえて以下の問いに答えなさい.
1 コブ=ダグラス生産関数 (Cobb=Douglas production func-
tion)
コブ=ダグラス型生産関数Yt = Kα(EL)1−αが,以下の問いに答えなさい.A は定常な技術水 準を表し,E は成長していく効率水準を表すために用い,正の実数である(講義資料と若干変更 しているところに注意が必要).またα は 0 < α < 1 で,一定である.投入する生産要素である 資本K と労働 L は正の実数である.
(a) 規模に関して収穫一定 (constant return to scale) であることを示しなさい.(1 point) (b) 資本の限界生産力 (MPK) が正であることを示しなさい.(1 point)
(c) 労働の限界生産力 (MPL) が正であることを示しなさい.(1 point)
(d) 資本について,資本の限界生産力が低減することを示しなさい.(1 point) (e) 労働について,労働の限界生産力が低減することを示しなさい.(1 point) (f) Y = M P K × K + M P L × L が成立していることを確認しなさい.(1 point)
(g) 代替の弾力性 σ(elasticity of substitution)が 1 であることを示しなさい.(1 point)
2 CES 生産関数 (constant elasticity of substitution produc-
tion function)
代替弾力性(elasticity of substitution) が一定という特徴を持つ CES 関数 (2) Yt={αK−ϵ+ (1 − α)L−ϵ}−1ϵ
を考える.ただし0 < α < 1,ϵ ̸= 0 かつ ϵ > −1 で一定である.このとき以下の問いに答えなさ い.投入する生産要素である資本K と労働 L は正の実数である.
(a) 規模に関して収穫一定 (constant return to scale) であることを示しなさい.(1 point)
1
競争的企業の利潤最大化行動より,M P K= r,M P L = w である.r と w はそれぞれ実質レンタル料,実質賃 金である.このとき,RT S=
r
wであるから,代替の弾力性(elasticity of substitution)は,産出を固定したときの 要素価格比
r
wが1 %変化したときに,投入の比率が何%変化するかを表したものであるともいえる.
(b) 資本の限界生産力が正であることを示しなさい.(1 point) (c) 労働の限界生産力が正であることを示しなさい.(1 point)
(d) 資本について,資本の限界生産力が低減することを示しなさい.(1 point) (e) 労働について,労働の限界生産力が低減することを示しなさい.(1 point) (f) Y = M P K × K + M P L × L が成立していることを確認しなさい.(1 point)
(g) 代替の弾力性 σ(elasticity of substitution)が一定であることを示しなさい.(1 point) (h) ϵ → 0 にするとき,CES 生産関数が,極限としてコブ=ダグラス型生産関数になることを示
しなさい.(1 point)
(ヒント: ロピタルの定理を用いる. ロピタルの定理とは,limz→bh(z) = 0,limz→bg(z) = 0 であるとき,
z→blim h(z) g(z)
が
0
0となり定義できない.しかし,
z→blim h′(z) g′(z) = z
∗
であれば(z∗は定数),
z→blim h(z) g(z) = z
∗
であるというものである.)
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3 x(t) = e
0.05t, z(t) = e
0.01t, w(t) = e
0.03tとするとき, y(t) の成長
率を求めなさい. ( 各 1 point)
3.1 y = x
3.2 y = z
3.3 y = w
3.4 y = xz
3.5 y = wxz
3.6 y =
xz3.7 y =
wx× z
3.8 y = x
βw
1−β, where β = 0.3
3.9 y = x
αw
βz
1−α−β, where α = 0.3 and β = 0.6
3.10 y = (x/z)
α, where α = 0.9
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微分方程式入門
以下では,入門的な微分方程式を解説する.解説を読んで,最後にある問いに答えてること.解 説を読み,問題を解くこと.非線形の微分方程式は,一般には解析的に解けない.しかし,特殊 なケースについては解くことができる.ここでは一階の線形微分方程式の簡単なケースを紹介す る.一階線形微分方程式は,
dyt
dt + utyt = wt
の形をとり,u も w も時間 t の関数で,その関数の形は分かっているとする.微分方程式を解く とは,y(t) という時間 t についての関数を求めることをいう.以下もう少し簡単なケースを紹介 する.
同次の微分方程式
utとwT が定数で,ut= a,wT = 0 のとき, (3) dyt
dt + ayt= 0
ただしa はゼロでない定数,この微分方程式はゼロの定数項をもつから同次であるという.3 を変 形すると
(4)
dyt
dt
yt
= −a
とも書ける.これはytの成長率が−a であることを意味する.よって,問 3 から微分方程式の一 般解y(t) は,
(5) y(t) = Ae−at
と分かる.今定数A は任意の定数.定数 A の値がいくつになるかを知るには,もう一つ初期条件 が必要となる.初期条件y(0) = y0を与え,初期値y0はt = 0 のときの y(t) の値で,ある特定の 定数する.この条件が与えられると,
y(0) = Ae−a×0 = y0
⇔A = y0
と,A の値を特定化できる.よって,特定解 (6) y(t) = y0e−at
が得られる.この関数y(t) は,初期値 y0をスタート地点として,時間とともに成長率−a でどん どん減少して0 に近づいていくという経路をたどる.
非同次の微分方程式
次のような微分方程式を非同次の微分方程式と呼びます.b ̸= 0 として, (7) dyt
dt + ayt= b
この方程式の解は二つの項の和から成り立つ.つまりy(t) = yc+ yp. 一つは補助関数 ycと呼ば
れ,もう一つは特殊積分ypと呼ばれる.補助関数は,上で議論した同次の微分方程式の一般解に なっており,
(8) yc = Ae−at
である.A は任意の定数.一方,ypについて議論する.解となるy(t) のうち,最も単純なものと して,y が定数であるケースを考えてみよう.y が定数で変化しないため,変化率 dydt = 0 より,
0 + ay = b
⇔y = b
a (a ̸= 0)
である.つまりa ̸= 0 であるかぎり,定数の解が存在し,そのときには, (9) yp = b
a
s である.よって, y(t) = yc+ yp
⇔y(t) = Ae−at+ b a
が(7) の一般解となる.A は任意.
確定解を求めるには,初期条件y(0) = y0の下で, y(0) = Ae−a×0 + b
a
= A + b a
⇔y0 = A + b a
⇔A = y0−
b a
以上から,微分方程式(7) の解は, (10) y(t) = (y0−
b a)e
−at
+ b a ただし,ここでa = 0 のとき,b
aが定義できず,この公式がつかえない.しかし dyt
dt = b の両辺を積分すれば,
y(t) = bt + c と解くことができる.c は任意の定数.
例1.
初期条件y(0) = 10 として,dydtt + 2yt= 6 を解く.(10) より,a = 2,b = 6 とおくと, y(t) = (10 − 3)e−2t+ 3 = 7e−2t+ 3
例2.
初期条件y(0) = 1 として,dydtt + 4yt = 0 を解く.(10) より,a = 4,b = 0 とおくと, y(t) = (1 − 0)e−4t+ 0 = e−4t
検算
微分方程式の解が,きちんと解になっていることを検算する. (11) dyt
dt + ayt= b の解は,
(12) y(t) = (y0− b a)e
−at
+ b a
であるから,解(16) をもとの微分方程式 (11) に代入すれば,等式が成立するはず.まず解 (16) を t について微分して,dydtt を求める.
(13) dyt
dt = −a(y0− b a)e
−at
(16) と (13) を,(11) の左辺に代入すると,
左辺 = −a(y0− b a)e
−at
+ a {
(y0−
b a)e
−at
+ b a
}
= b
= 右辺
となる.これで(11) の等式が満たされていることが示され,(16) が微分方程式 (11) の解と成って いることが確認できた.
微分方程式の動き
(14) dyt
dt + ayt= b を
(15) dyt
dt = −ayt+ b
と書いてみると,ytの変化分は,「今のytのうちa の割合だけ減り,b だけ増える(−ayt+ b).」と 読むことができる.このままでは少し分かりにくいので,微分方程式の解を用いてその動きを考 えて見ます.解は,
(16) y(t) = (y0−
b a)e
−at
+ b a
です.いくつかのケースに分かれる.
1. a > 0 のとき.第一項は変化率 −a < 0 で変化し,変化率が負であるから減少し,ゼロに近 づいていく.第2 項は定数.y(t) は,y0をスタート地点として,変化率a で減少し,時間と ともにb
aに近づいていくという関数になる.
2. a = 0 のとき.第一項は変化率 0 で不変.第 2 項は定数.y(t) は,y0をスタート地点として, そのまま一定.
3. a < 0 のとき.第一項は変化率 −a > 0 で変化し,変化率が正なので増えていく.第 2 項は 定数.y(t) は,y0をスタート地点として,変化率−a > 0 で増加し,時間とともに発散して いくという関数になる.
ベルヌーイの式
非線形の微分方程式は一般には解析的には解けないが,解ける例の一つがこのベルヌーイの式 である.
(17) dyt
dt + Ryt= T y
n t
R,T は任意の定数とする (t の関数とすることも可能).n は,0 と 1 以外の任意の定数とする(n が0 や 1 のときは,既に上で考察済み).この式を以下のように変形すると,線形の微分方程式と して扱うことが可能になる.両辺をytnで割りると,
(18) yt−ndyt dt + Ry
1−n
t = T.
ここで,zt= yt1−nと置く.ztをt で微分すると, (19) dzt
dt = (1 − n)y
−n t
dyt
dt
これらを用いて(18) を変形すると, 1
1 − n dzt
dt + Rzt= T (20)
⇔ dzt
dt + (1 − n)Rzt= (1 − n)T (21) これは,変数がz となっているものの,一階線形微分方程式に他ならず,(7) より,初期条件 z(0) = z0 のもとで,
z(t) = (z0− R T)e
−(1−n)Rt
+R T と解くことがでる.zt= y1−nt より,
y(t)1−n = (y1−n0 − R T)e
−(1−n)Rt
+R T となる.
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4 次の各微分方程式の確定解を求なさい. (1 point each)
4.1
dydtt+ 4y = 8, y(0) = 2
4.2
dydtt+ 10y = 15, y(0) = 0
4.3
dydtt− 2y = 0, y(0) = 3
4.4 2
dydtt+ 4y = 6, y(0) = 1
4.5
dydtt= 15, y(0) = 1
4.6
dydtt− y = 0, y(0) = 10
数学についての参考文献
「現代経済学の数学基礎〈上・下〉」 A.C. チャン (著) シーエーピー出版
「オイラーの贈物―人類の至宝eiπ = −1 を学ぶ」 吉田 武 (著) ちくま学芸文庫 など
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