第3節 代表的な相談事例
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広 域 避 難 専 門 ラ イ ン に
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第1節 概要
(1) はじめに
よりそいホットラインとして、広域避難者を対象とした相談回線を設置し、連日相談を受けるようになっ てから1年が経過した。相談内容の電子カルテを分析すると、広域避難者支援における課題が見える。本 章では、第 1 節「概要」、第 2 節「相談表の量的分析」、第 3 節「代表的な相談内容の事例」の3節に分けて、 広域避難者が置かれた状況や、その中でよりそいホットラインの避難者ラインが果たす役割について考察 したい。
留意しておかねばならないのは、この分析は平成 27(2015)年度の 8 か月間(4 月1 日から11 月 30 日) に寄せられた相談のカルテを対象としているという点である。東日本大震災および福島第一原発事故が発 生して 5 年が経過しているが、この間にも避難者をめぐる政府、福島県の方針は刻々と変化しており、その 決定が断続的に、細切れに発表されるために、避難者は数年先の居住地、住まい、仕事など生活の基本 的な見通しさえ立てられない状態が続いている。このように、長期にわたり強いられてきた不安定な状況そ のものが、広域避難者の心理状態を他とは異なるものにしている。
本報告書の対象期間中である 2015 年 6 月には、福島県知事が 2017 年 3 月末での自主避難者への仮 設住宅提供打ち切りを発表、同 12 月には打ち切り後の家賃補助が一定の収入世帯以下に限られるという 新たな支援策を発表した。また避難指示区域も 2015 年 9 月に楢葉町、2016 年 6 月に葛尾村、川内村、 同 7 月に南相馬市(1 世帯を除く)と解除が続いたが、いずれの市町村も住民の帰還率は 10% 以下に留まっ ており、特に若い世帯はほとんどが避難を継続した状態にある。
このような状況から、本報告書の分析対象ではないが、平成 28(2016)年の間にも住宅に関する相談 が避難者ラインには相次いで寄せられている。従って平成 29(2017)年以降も、住宅補助打ち切りや、 避難区域再編、その他の避難者支援政策に翻弄され、よりそいホットラインに助けを求める人が新たに、 また大量に生じうることは明らかであろう。少なくとも広域避難者のおかれる状況が不安定である間は、よ りそいホットラインの存在も不可欠である。
(2) 相談表からみる避難者の姿
先に述べた通り、避難者が置かれた状況の特徴は、政府が避難者施策を発表するたびに揺らいでいる ため状況が安定しないという点にある。そこで次節の数量的分析では、一年前の平成 26(2014)年度と 対象年である平成 27(2015)年度の避難者ラインの相談者属性や相談内容を比較する分析を行った。そ の結果からこの 1 年の経年的な避難者の動向をまとめると、孤立につながる環境は、一見すると若干改善 されているが、一方で心理的状況はより厳しく切迫した傾向に変化していることが読み取れる。
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12)。
しかしながら、全体的には仕事に就いている人の割合は減少し(図 11)、さらに最も懸念されるべきは、 自殺念慮を訴える女性の数が増加し(図 18)、実際に「自殺未遂をした」人も増えている(図 20)。
この傾向からは 2 つの可能性が導き出せる。一つは、震災からの時間の経過とともに、日常の基本的な 生活基盤自体は徐々に築かれてきたが、震災の体験や原発事故からの避難の体験が強いトラウマとして今 でも被災者の心理に影響を及ぼしている状態である。最大で数十万人いたとも言われる広域避難者のうち、 専門的なトラウマケアを受けた人はごく一部に過ぎない。その中には、震災からの強い心理的傷害を負った まま、適切なケアを受けることなく現在まで至った人もいると考えられる。
ただし、相談の中で震災関連の悩み(避難生活の悩みや被ばくの心配、震災トラウマなど)を話した人も、 言葉に出して具体的に震災関連の悩みを話さなかった人も、全体としての相談内容に大きな違いは認めら れないことがわかった(図1)1 。つまり、震災や原発事故に遭った苦しみを自認しているかどうかにかかわらず、 避難者ラインを利用する相談者が置かれた状況に大差はなく、心や身体に不安があり、家庭に問題があり、 周囲との人間関係にも問題を抱えている、といった方が多い。
(単位:%) 震災関連の悩みにチェックのない人
0 10 20 30 40 50
震災関連の悩みに チェックのない人 ( 複数回答可 N=677)
45.1 33.8 24.7 19.1 18.5 17.7 6.5 5.5 4.1 4.0 2.8 2.5 1.8 0.1 0.1
セクシュアルマイノリティの悩み 外国人住民の悩み 性的な暴力・ハラスメント 性の健康 法的・行政関係の悩み 被虐待 DV 犯罪被害と加害 学校の問題 支援者・支援機関との関係 暮らしやお金の悩み 仕事の悩み 人間関係の悩み 家庭の問題 心と体の悩み
(単位:%) 震災関連の悩みにチェックがある人
0 10 20 30 40 50
震災関連の悩みに チェックがある人 ( 複数回答可 N=324) セクシュアルマイノリティの悩み
外国人住民の悩み 性の健康 性的な暴力・ハラスメント 被虐待 犯罪被害と加害 法的・行政関係の悩み 学校の問題 DV 支援者・支援機関との関係 仕事の悩み 暮らしやお金の悩み 人間関係の悩み 家庭の問題
心と体の悩み 41.4
34.3 21.3
21.0 18.2 15.7 7.1 4.9 4.6 4.3 4.0 3.4 2.8 0.3 0.3
図1 「相談の中で出てきたもの」のうち「震災の悩み」があった人とない人の相談内容
もう一つ示唆されるのは、避難者の中にも生活状況の違いにより格差が生じているという可能性である。 図 2 は、平成 27 年度の就業している相談者のうち、正規雇用者と非正規雇用者の家計状況を表したもの である。家計状況に問題があると答えた非正規の就業者は、正規の就業者の約 2.75 倍に上り、避難者の 中でも正規雇用に就業し、安定した生活が得られた人と、疾病を抱えていたり、移動を繰り返していたり 等の理由から非正規雇用でしか就業できない、もしくはそもそも仕事が見つからずにいる人との間では、生 活状況に格差が生じつつあることがわかる。下記に示した典型的な相談内容のように、被災して職を失っ た後、避難先では仮設住宅(みなし仮設を含む)を転々とせざるを得ず、職を得られずにいる人もいる。こ のような状況にある避難者ラインの利用者は、一般ラインの相談者と比べても家計状況に問題がある人が
1 「相談の中で出てきたもの」について「震災の悩み」ありの人の分布と避難者ライン全体の分布間で適合度の検定(χ2値:
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多く、困窮状態に置かれている。
典型的な相談内容の例 ・30 代 女性
被災し職を無くし、仮設生活の中で再就職をのぞんで活動しているが、夫共に仕事が見つからず困っている。 被災してから仕事がなくなり、生活に困っている。自分は正社員で働きたい、夫もなかなか見つからない。 ハローワークは流れ作業のようで結局うまくいかない。
0 20 40 60 80 100
非正規
(N=122)
(単位:%)
図2 家計状況
69.8
14.0 16.3
41.0
38.5 20.5
正規
(N=43)
情報なし 問題なし 問題あり
図2 正規雇用者と非正規雇用者の家計状況(仕事がある人のみ。平成 27 年度)
(3) 若年者からの相談
先に述べたとおり、昨年から今年にかけて見られる特徴に、自殺念慮を訴える女性の数が増加したこと が挙げられる。本年の相談票のうち、自殺念慮があるとした女性の相談票 112 票の平均年齢は 31 歳、ま た 20 代が 40 票と 35% を占め、非常に若い世代に偏っていることが分かった。
そこで 10 代~ 20 代の女性で自殺念慮にチェックのついた相談票を個別に取り上げて相談内容を確認し た結果、表 3 のような主訴があることが分かった。これらを見ると、上記に述べてきたとおり生活困窮や 家族の別離など避難者一般に見られる特徴もあるが、特に震災のトラウマが原因で心身に大きなダメージ を受けて、学校に行けなくなっていたり、うつ病になってしまったという訴えが多い。被災地外に避難した 若者には被災者としてのケアを受ける機会が用意されることはない。逆に、近年報道でも取り上げられてい るとおり、避難者であることでいじめを受けるケースなどもあり、トラウマを適切にケアできる状態にない 若者が多く残されている事態が懸念される。
表3 10 代~ 20 代の相談者の主訴内容
主訴 内容
気持ちが落ち着かず辛い 母の付き合っている男性が好きになれない。将来結婚する様子なので
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主訴 内容
友人たちから避けられるよう になり、リストカットをしたく なるほど悲しく辛い
軽度の発達障害と不眠症があり通院している。眠剤のせいか、覚えて いないが友人に迷惑をかけたようだ、それ以来だれからも連絡が来な い。作業所に行っているが余り好きではない。
水道光熱費と携帯代が払え ず困っている。
東北で被災。今も東北に住んでいる。水道光熱費などを払う事が出来 ず困っている。食事も出来ていない。相談場所は思いつかない。役所 は遠いので嫌。よりそいのコーディネーターとつながるのは怖い。 連休で公的支援が全て休み
になり、誰ともつながらなく なり、不安で死にたくなった
父と母と別居、母の居場所も分からず、誰とも話が出来ないのが辛い。 特に連休に入り、カウンセリングセンターにも電話できず不安になって いる。誰とも会話できず、自殺を考えていた。どうしようもない寂しさ からどう生きていくか分らなくなった。
震災のストレスでうつ病に なってしまい、勉強もうまく いかず、更にストレスになっ ている
震災後うつ病になってしまい学校に行けなくなってしまった。毎日しん どくて死にたい、勉強がすすまないできない。卒業できなかったら死ん だ方がいいと思っている、親にもそういわれている。
震災を思う気持ちのことで 長々と続き、学校に通えなく なった
数年前から震災のトラウマが続いている、学校に行けない
常に泣いて死にたいと思ってしまう。やめたいけど嫌な事が多すぎてや められない気持ちがひどく不安定で上下が大きい。
学校を休みがちで、不安や辛 さが大きく死んだ方がましだ と考えている
震災から時間はたったが、いろんなことがおろそかになり、今後の見通 しが立たず不安。一番は学校が休みがちになってしまっているのが心配 大学の先生には恥ずかしくて相談できない。飛び降りたりリスカしても 死ねない。
さびしくてしんどくて、どうし たらよいかわからないので電 話した
震災後たびたび体調が崩れる、うつ的で学校へ行き難い自分でなに行っ てるのか分らない、飛び降りたくなる。死んで良いかな、私が死んでも 誰もかなしまない。
両親から愛情を貰ったことはない。 資料作成が精神状態が悪く
進まない
震災後うつになった。誰とも会話したくないという状態がエスカレート していっている。資料を作っている。それを学校で発表しなくちゃいけ ないのがすごいストレス仲間から頑張れといわれ辛い。そのストレスを 父にぶつけて殴っちゃう。
家族関係も壊れ、孤独で死 にたくなった
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(4) 広域避難者支援に求められるもの
広域避難者に対しては、これまで住宅支援、就業支援をはじめとして一定程度の公的な支援策が用意さ れ、また民間の支援団体や避難当事者が立ち上げた当事者支援団体も、助成金を活用するなどしながら支 援を続けている。しかしながら、JCN(東日本大震災支援全国ネットワーク)が定期的に開催する「広域避 難者支援ミーティング2」 においては、「交流会や相談窓口の利用者は横ばいのままか減っている。今後どう 方針を立てていけばよいのかわからない」あるいは、「困っている避難者を見つけることがますます難しくなっ てきた」といった支援者の悩みが語られることも増えてきた。よりそいの避難者ラインに寄せられる相談も、 生活相談として具体的な解決策を提案できるような内容はわずかで、多くは利用者の話を根気強く聞き、そ の人が本人の「素」をさらけだして話をする相手になるような内容が多くなっているという(避難者ラインコー ディネーターへのインタビューより)。
しかし、冒頭に述べた通り、避難者をめぐる環境は今後も目まぐるしく変化が続く。避難指示地域指定 が狭められ、住宅施策の縮小とともに、受け入れ先の自治体でも支援体制が中止されるたびに、制度の外 に追いやられ、追い詰められる避難者が新たに生まれることは十分に想像できる。このような状況下での 公的、民間の支援には以下のような点が求められるであろう。
① ソーシャルワーカー的視点を持った支援
避難者が抱える悩みも、よりそいホットラインの「一般ライン」が扱うような生活支援の範疇に近づきつ つあることは確実である。従って、広域避難者支援の枠組みも、より他の社会資源との連携を深め、支援 者がソーシャルワーカー的視点を持つことが重要となる。多くの避難者団体はこのことを自覚しているが、 避難当事者が避難先で立ち上げた団体の中には、地元の困窮者支援団体等との関わりがないため、連携 が不足している場合もある。地元団体の側から、避難者支援団体に対する働きかけも必要である。
② わかりやすくかつきめ細かい公的支援制度
住宅や就業をはじめとした公的支援制度は中央省庁が管轄するもの、福島県が実施するもの、さらには 避難先の自治体が独自に実施しているものがあり、改善が重ねられてきた一方で、当事者には今何が使え るのかがわかりにくいものになっており、結果的に制度が活用できておらず、よりそいの相談を頼るケース もある。制度の単純化によって排除される避難者があってはならないが、国や自治体は当事者の視点に立っ た支援制度の提供のしかたを考える必要がある。
③ 福島帰還者のフォロー
避難先から福島等へ帰還する人は、生活基盤が整ったために戻るという人ばかりではない。仕事、家族 別離等の理由から避難先での生活が継続できず、帰還を選択される方もいる。意欲的な帰還ではない。ま た、一度避難したことで、周囲の無理解・差別・排除をうけることも予測される。帰還者のための相談窓口 の設置は必要である。
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④ 広域避難の問題が継続中であることのアドボカシー
震災の風化が進むにつれ、広域避難者に対する周囲の無理解、差別、排除は進行する。避難者は今で も全国で暮らしているが、避難者の存在を理解せず、「自ら逃げた人」という目で見たり、「賠償金で暮ら している」など誤解に基づく偏見も広がり、避難者に二次的な苦悩を強いている。よりそいホットラインに は無理解やいじめを恐れて避難者であることを隠している人からの相談も多い。図 4 は広域避難者の問題 を構造的に理解するための氷山モデルであるが、その深層には、「避難者としてのアイデンティティの喪失」 も横たわっていると考えられる。この深層にアプローチするためには、避難者が寄せる悩みに丁寧に向き合 う一方で、上記で述べたような社会の偏見、無理解に対し、広域避難の問題は東日本大震災後の社会全 体の問題であり、それが現在も継続中であり、誰もが当事者になりうる課題だということを訴えていく必要 がある。現実として、避難当事者団体の中にはその必要性を感じつつも、苦しんでいる避難者への支援を 優先する、あるいは主張のある支援者からは隠れたいと考える避難者を守るために、アドボカシーとは一線 を画している団体も少なくない。だとすれば、それができる力をもつ支援団体などが代わりに意見の主張を 続ける必要があると言えよう。
周囲の無理解
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活 被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活 被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活 被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活 被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
被災による避難生活
孤立
孤立
孤立
孤立
孤立
孤立
孤立
孤立
孤立
孤立 子育ての悩み 母子避難
母子避難 母子避難 母子避難
子育て負担増 息子の発達障がい
息子の発達障がい 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別 放射能に起因する差別
風評被害 風評被害 風評被害
風評被害 離婚
自主避難は勝手に逃げてきた 自主避難は勝手に逃げてきた 自主避難は勝手に逃げてきた 自主避難は勝手に逃げてきた
自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 自分で選択したのだから仕方がない 福島の放射能はとにかく怖い
福島の放射能はとにかく怖い 福島の放射能はとにかく怖い 福島の放射能はとにかく怖い 福島の放射能はとにかく怖い 福島の放射能はとにかく怖い 福島の放射能はとにかく怖い 福島の放射能はとにかく怖い
被災による避難生活 孤立 子育ての悩み
母子避難 環境の変化 子育て負担増 息子の発達障がい
放射能に起因する差別 風評被害 離婚 自主避難は勝手に逃げてきた
自分で選択したのだから仕方がない 福島の放射能はとにかく怖い
自責の念
①相談の見えやすい・見 える部分(わかりやす いが、誤解や理解不足 な認識も多い)
②見えにくい・見えない部 分(わかりにくいが、困 りごとの背後にある個 人的・社会的な課題や 価値観を理解すること が支援の基本となる) ①
表面化している
困りごと
②-a
背後や近隣関係
にある社会問題
②-b
排除を強化する
価値観・思想
図4:広域避難者の問題に関する氷山モデル(出典:「事例で見る生活困窮」中央法規出版)
(5) まとめ-避難者ラインを設ける理由
最後に、これまで述べてきたことをまとめながら、よりそいホットラインの中に避難者ラインを設け続け なければいけない理由を整理しておく。
① 今後も続く避難者の状況の変化に対応する
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者にとって苦しいものになっていくことが予想される。また、避難から 6 年が経過する平成 29 年には、避 難した子どもの進学に必ず節目がやってくることになり、避難者は帰還か避難継続かという生活上の重要な 選択を迫られる状況が続く。一方で、避難先を生活拠点として選ぶ覚悟を決めながらも、心情的には故郷 への想いや戻りたいという気持ちが重くのしかかって心理的な負担を強いられている人もいる。
また、生活が困窮した状態が続くため、「とにかく戻れば金銭的になんとかなる」と万策尽きた人の選択 として帰還が選択されることもあり、そのような人は今後 ADR の請求など法的な支援が必要となることもあ る。こうした、極めて流動的な避難者の状況に対応するためには、専用のラインが不可欠である。
② 「避難者」のための相談窓口という看板の重要性
(2)で述べたように、避難者ラインに寄せられる相談のうち、「震災に関する悩み」を自認して話す人は 全体の 56.4% であり、また「震災に関する悩み」を話すかどうかにかかわらず、他の相談内容は差異がな いことがわかった。このことは、逆に避難者からの相談の中には、震災前から潜んでいる暮らしづらさの原 因(虐待、DV、生活困窮、障がいなど)が、相談の会話の中から明らかになるケースも多くあるということ を示唆している。つまり、相談者自身は「地震(もしくは原発事故)で避難したせいで生活がうまくいかな くなった」と考え電話してくるが、相談の中でその人が震災前から抱えていた困難な状況が初めて明らかに なる、ということである。このような方々からの相談は、「一般ライン」での対応を待つよりは、「避難者の ための相談窓口」という看板を残して積極的に見つけていく方が合理的である。また「避難者である」とい うアイデンティティが確立された避難者にとっては、「避難者の窓口」が存在していること自体がセーフティー ネットでもあると言える。
③ 「災害多発国」日本の社会基盤としての役割
ここまで触れなかったが、避難者ラインの重要な利用のされ方として、東日本大震災以外の自然災害に よる被災者からの相談先として利用されているという事実を指摘しておかねばならない。本報告書の対象で ある平成 27 年 9 月には鬼怒川豪雨災害が発生し、その後数ヶ月は、茨城県や栃木県に住むこの水害の被 災者から、生活相談や避難所での困りごとについての相談が寄せられた。また、平成 28 年 4 月に発生し た熊本地震後には、同様に熊本県の被災者からの相談電話が寄せられるようになった。一方で、発生から 既に 20 年以上が経過した阪神・淡路大震災(平成 9 年)から「今でも苦しい」という電話がかかってくる(表 5)。このように、一生に遭うか遭わないかというほどの大きな自然災害に遭遇してしまった人の中には、そ の後数十年が経過しても何らかの支援を必要とすることもある。
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表5 他の自然災害の被災者からの相談例(平成 28 年度)
関東・東北豪雨災害の被災者からの相談
・ 豪雨災害に遭い、ボランティアさんと一緒に床下の片付けをしたが、昨日の雨で元に戻った。どうすれ ばよいか分からない。
・ いつも何でも母の言うとおりにしてきたのに、母が状況を分かってくれないことが辛い。実家に戻れと言 われるが戻りたくない。
・ 2 度の天災で怒りや死にたい気持ちが大きくなり、どこにぶつけてよいか?どう発散したらよいか?どう 忘れたらいいのか?どうやって生きろというのか分からない。東日本大震災では命が助かったのに、避 難先で豪雨災害にあうとは思わなかった。もう死のうと思う。
阪神・淡路大震災の被災者からの相談
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第2節 相談表の量的分析
(平成 26 年度と 27 年度、福島県からの相談の比較)
ここでは、一年前にあたる平成 26 年度(4 月1 日~ 11 月 30 日)と平成 27 年(4 月1 日~ 11 月 30 日)、 および参考として平成 27 年の一般ラインのうち福島県からの相談表のデータを数量的に比較した。以下の 棒グラフでは各カテゴリにおいて「情報なし」のカルテを省いた母数における割合を示している。
性別、年代、同居者、仕事の有無、相談項目の順位など多くの項目に経年の変化が見られ、同時に、 広域避難者と福島県在住者とを比べると広域避難者の困難が際立っていることが分かる。
以下集計結果を考察する。
(1) 性別
前年度と今年度を比較すると、男性の相談が増加(46.5% → 53.9%)し た。男性は、一般的に悩みを外に出すというハードルが高いため、対面相 談よりも電話相談の距離感に安心感を見いだしているのではないかと考えら れる。男性は孤立感に耐えられなくなり電話を一度かけると、心が軽くなり、 繰り返しかけてしまう方が多いようで、家族にも会社にも言えない胸の内を 話されている(避難者ラインコーディネーターへのインタビューより)。女性は、 家事・子育て・仕事など一日一日こなさなければならないことがたくさんあり、 悩み、立ち止まり時間がない、という方が多いと考えられる。
(2) 年齢
相談者の年齢の変化は性別によって異なる。男性は 30 代が減少(32.3% → 22.4%)、40 代が増加 (29.0% → 41.7%)した。女性は 30 代(30.5% → 18.2%)や 40 代(40.7% → 31.7%)の減少が著しく、
50 代が増加(6.4% → 16.7%)した。いずれも経年による年代の上昇を上回る勢いで相談者の高齢化が進 んでいる。この変化にはいくつかの要因が重なっていると考えられるが、一つは仕事に関する相談の増加と (5)で示した仕事のない人の増加もその一つと推測できる。
福島からの相談者と比較すると、女性において子育て前の 10 代~ 20 代が多い。前節で示したように、 10 代と 20 代の 161 件の中で震災の悩みが一番大きいとしたものは 40 事例あった。いずれも、トラウマ 等心の不調に悩んでいた。
(単位:%)
図 6 性別
46.5 53.9
30.1 53.5
46.1 69.9
女性 男性
H27福島 H27
H26
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(単位:%) 図 7 年代 男性
20.4 5.8 1.1 3.7 4.5 22.4 41.7 22.8 3.2 1.7 9.8 23.1 10.5 10.5 0.3 3.4 32.3 0 10 20 30 40 50
H27 福島 (N=286) H27(N=539)
H26(N=465)
70代以上 情報なし 60代
50 代 40代 30代 20代 10代
8.0
28.0 29.0
17.8
(単位:%) 図 8 年代 女性
6.4 3.0 1.3 5.9 19.5 18.2 31.7 16.7 6.3 1.7 2.5 13.9 26.0 23.0 9.0 0.7 30.5 0 10 20 30 40 50
H27福島 (N=653) H27(N=461)
H26(N=535)
70代以上 情報なし 60代
50 代 40代 30代 20代 10代
17.4
19.4 40.7
6.1
(3) 同居者
女性に同居者がいるという人が大きく増加(39.6% → 61.9%)しており、 内訳を調べると両親が多い。この中には、震災後離婚をし、親と同居をし 始めた方や親の介護が必要となり同居を始めた方などのパターンが含まれ る。親との同居の場合、震災関連の悩みにとどまらず、親の介護問題、子 どもの教育方針の違いなど暮らしの相談にまで広がっていくことになる。同 じく福島県在住女性も同居者がいる割合がとても高い。同居者がいても誰 にも言えない孤立感、気持ちを外に出せない閉塞感を抱え、生きづらさを 訴える女性が多くいることがわかる。
(4) 相談できる人
男性において相談できる人がいるという方が大きく増加(27.6% → 48.8%)している。被災者支援団体 のヒアリングによると、社会とのつながりをあまり持とうとしない男性を孤立させないよう、男性を対象とし た交流会やイベントなどを意識的に開催している動きがあることが分かった。このような被災者支援団体の 日頃の活動の中で、社会とつながりを持ち、相談まで結びついたのかもしれない。また、福島県在住者は (単位:%) 図 9 同居者 いる
66.2 64.4
56.4
39.6 61.9
H27福島 H27 H26 0 20 40 60 80
女性 男性
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男性も女性も相談できる人が 70% を超えている。広域避難者は比較的相 談支援体制が脆弱な状況にあることが示されている。
なお、具体的な「相談できる人の関係」ではパートナーが減少し、職場 の人や家族が増加している。特に広域避難者は、パートナーよりも、それ以 外の家族(両親、子ども、兄弟など)に相談している人が多い。職場の人 については、正規職への就労者が増加していることから、職場を居場所と する人が増えた可能性も推測できる。
(5) 仕事の有無と就労形態
男女ともに仕事がある人が昨年より減っている(男性 48.2% → 39.9%、 女性 31.9% → 23.3%)。
相談において仕事の悩みは多い。就職活動の難しさ、職場の人間関係や いじめなどから転職を繰り返す方も多い。仕事に就いている時は相談電話 がなく、離職すると生活不安からか相談電話があるという方もいる。
男性では正規雇用者が増加している(8.8% → 20.1%)が、女性ではほと んど変わらない(18.6% → 19.4%)。仕事を見つけ正規雇用となり、生活再 建に踏み出している方とそうでない方との格差が広がっていると考えられる。
男性 女性
H26
(171) (149)H27 H27 福島(120) (113)H26 H27(67) H27 福島(193)
正規 8.8 20.1 40.0 18.6 19.4 22.8
パート・アル
バイト 70.8 41.6 16.7 48.7 47.8 38.3
契約・嘱託 2.3 6.7 12.5 8.0 7.5 10.9
派遣 5.3 4.0 6.7 0.9 1.5 8.8
その他非正規 2.9 2.7 3.3 7.1 3.0 1.6
経営者・役員 - 0.0 - - 3.0
-自営業 2.9 6.0 6.7 - 3.0 1.0
家族従業者 1.2 3.4 0.8 - 0.0 0.5
請負 - - 0.0 - - 1.0
福祉的就労 2.9 12.1 11.7 10.6 11.9 8.8
その他 2.9 3.4 1.7 6.2 3.0 6.2
(単位:%)
図 12 正規雇用者
8.8 20.1
40.0
18.619.4
H27福島 H27
H26
女性 男性
22.8 0 10 20 30 40 50
単位(%):(情報なしを除く)
(6) 活動などの社会的居場所
「活動などの社会的居場所」の有無については、顕著な経年変化は認め られない。男性で 4 割程度、女性で 5 割程度という居場所があるという割 合は全国平均と同じである。他の被災地は 6 割程度、福島の相談者はグラ
(単位:%) 図 11 仕事の有無 あり
48.2
39.9 47.6
31.9
23.3
H27福島 H27
H26
女性 男性
32.1 0 10 20 30 40 50
(単位:%)
図13活動などの社会的居場所 あり
39.5 39.3 93.9
50.0 48.7 H27福島 H27
H26
女性 男性
82.3 0 20 40 60 80 100
(単位:%) 図 10 相談できる人 いる
27.6 48.8
77.1
50.8 54.4
H27福島 H27 H26 0 20 40 60 80
女性 男性
第
4
章
フにあるように 8 割以上が居場所があると感じていることを考えると、元々東北の居住者が多い広域避難 者は避難先での社会的居場所を見つけられないままの方も多いと考えられる。
(7) 収入
収入があるという人は、女性において増えている(66.1% → 84.7%)。その収入の内訳を見ると、女性で は給与収入ではなく、家族収入が大きく増加していることがわかり(30.0% → 50.6%)福島在住の女性と似 通った割合となっている。両親と同居で家族収入が増えたのか、再婚などの家族構成の変化からか、子ど もが働き始めたのか、様々な可能性が考えられるが、いずれにしろ本人の就労による給与収入ではない。 表 14
男性 女性
H26
(364) (431)H27 H27 福島(284) (320)H26 (284)H27 H27 福島(672)
給与収入 43.1 34.8 40.8 42.8 24.1 29.3
家族収入 31.9 37.6 36.3 30.0 50.6 59.5
事業収入 2.5 1.2 2.1 0.6 0.9 4.2
年金等収入 20.9 20.0 23.9 15.0 22.4 31.8
生活保護 14.3 11.8 25.4 9.7 8.9 7.4
その他 4.7 3.0 1.1 4.7 6.0 4.6
(単位=%)
(単位:%)
図 15 収入‒あり
女性 男性
H27福島 H27
H26
0 20 40 60 80 100
88.1 85.0
66.1 84.7
97.6 98.5
(単位:%)
図 16 家族収入・給与収入−あり ( 収入ありの人のみ、複数回答 )
女性 男性
H27福島 H27
H26
31.9
43.1
34.8 40.8
0 10 20 30 40 50 60 70
給与 家族
給与 家族
36.3 37.6
30.0 59.5
50.6
42.8
24.1 29.3
(8) 家計状況
男女ともに「問題なし」という人が若干増えており、特に女性は増加して いる(44.2% → 60.6%)。正規雇用が増え、収入も増え、一見、経済的な 生活再建へ進んでいるように見えるが、(7)で述べたように、女性の収入 増加は家族の収入増加によるところが大きい。
(単位:%)
図 17 家計状況‒問題なし
女性 男性
H27福島 H27
H26
0 20 40 60 80 100
52.0
44.2 60.6 62.9
82.9
第
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容
(9) 自殺念慮・自殺未遂
女性の自殺念慮が大幅に増加している(46.2% → 69.1%)。また、自殺念慮を持った時期として「現在持っ ている」と答えた人が特に女性で増えている(52.5% → 60.7%)。同時に、自殺未遂歴がある人も特に女性 で増加している(52.5% → 60.7%)。(p194 にあるように、グラフの割合は「情報なし」の個票を除いて算 出している)
(単位:%)
図 18 自殺念慮‒あり
女性 男性
H27福島 H27 H26 53.1 46.2 69.1 24.8 43.6 0 20 40 60 80 19.0
(単位:%) 図 19 時期 _ 現在
( 自殺念慮ありの人のみ、複数回答 )
女性 男性
H27福島 H27 H26 0 20 40 60 80 100 79.7 52.5 60.7 73.6 65.0 57.9
(単位:%)
図 20 自殺未遂歴
女性 男性
H27福島 H27 H26 0 20 40 60 80 100 79.7 52.5 60.7 65.0 57.9 73.6
(10) 相談のなかでできたもの
相談内容について主要な項目の 経年変化を見ると、「家族との不和」 が若干増加(48.9% → 57.3%)、人 間 関 係 の 悩 み の 数 は 横 ば い (45.2% → 45.7%)であり、避難先 での生活を「新たな生活」として受 け入れられない人が一定数おり、相 談につながっている。また、支援者・ 支援団体との関係に関する相談が増加している(16.9% → 24.7%)が、この詳細の内容を小項目で調べると、医療者やケースワーカーとの関係 に関するものが多くなっており、民間支援者に関するものはわずかである。
一方、仕事の悩みは減少(43.8% → 32.1%)している。また、震災関連 の悩み(56.4% → 45.4%)や、避難 生活に関する悩み(53.5% → 48.0%) がいずれも減少している。なお、こ こでの「震災関連の悩み」には東日 本大震災や福島第一原発事故以外の 豪雨災害や土砂災害、台風被害など の自然災害が含まれている。
(単位:%)
H27福島 H27 H26 48.9 54.3 57.3 0 20 40 60
図21 家族との不和_全体
(単位:%)
H27福島 H27 H26 45.7 0 20 40 60
図22 人間関係の悩み_全体
33.2 45.2
(単位:%)
H27福島 H27 H26 24.7 0 20 40 60 12.1 16.9
図23 支援者・支援機関 との関係_全体
(単位:%)
H27福島 H27 H26 0 20 40 60
図24 仕事の悩み_全体
32.1 31.6 43.8
(単位:%)
H27福島 H27 H26 0 20 40 60 43.8
図25 震災関連の悩み_全体
45.4
5.6 56.4
(単位:%)
H27福島 H27 H26 0 20 40 60 43.8
図26 本人: 避難生活_全体
48.0
第
4
章
第3節 代表的な相談事例
(1) 避難者特有の不安
住宅の悩み
・50 代 女性
夫がガンになり、公営住宅の入居期限ももう少しで切れるので、その後の生活が不安。自主避難で避難 してきた。夫はガンの手術をしなければならない、自分は不安障害で少ししか働けない。公営住宅はも う少しで出なければならず生活していくのに不安になる。
・不明 男性
仮設をもうすぐ退去しなければならないが、心が疲弊しきっており、引越しのための力が出ない。義捐金 も何も貰わないまま頑張ってきたが、疲れ果ててしまった。支援を受ける事に申し訳なさがあるので、早 めに一般のアパートに引っ越したい。もうすぐ娘の命日、このまま娘のところへ行きたくなってしまう。避 難者であることは誰にもいっていない
帰還に関する相談
・30 代 女性
社会復帰したいがこれから先が心配で焦る気持ちになり眠れない。子供が地元に戻りたいと言う、しか し住む場所も手に職もない自分は生活していけない、そんな事を考えていたらうつ病になった。毎日眠 れなくて困っている。
・40 代 女性
周りの人から賠償金のことを言われると人間関係に溝ができたように感じるし、気軽に友達にも会えない ので孤独を感じてしまう。賠償金を貰っている、最初は同情されるが、そのうちお金を貰っているからね と言われがっかりする。いずれ帰る気持ちではいるが、帰ってもいじわるされるという話を聞く事もある。 夫はよく帰ってはくるが疲れて寝てばかりで親子の会話もない。
・50 代 男性
被災して避難している、数年経過して戻ろうか、新しい土地に住むか決めかねていて困っている。福島で 被災、戻った方がいいかどうか悩んでいる、母は戻りたい様子。放射線量や生活環境の変化への心配が あるが、自宅、田んぼ、墓の問題もある。考え方のヒントを貰いたい。
・40 代 女性
第
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内
容
被ばくへの不安
・30 代 男性
福島で被災、その後避難、数年前から咳が出るようになり最近はとまらなくなった。頻度と強さが普通で ない。放射能が関係しているのではと思い検査を受けたい。被爆によるものかハウス病か、原因がわか らなくて不安。 いくつか病院に行ったがそれぞれ診断名がついてしまい結局わからずじまいだった。
・30 代 女性
関東へ母子避難していた。震災前から精神疾患があった。特に放射能への恐怖症があり、自立支援医 療をつかいヘルパーに家事介護を受けていた。数ヶ月前に地元に戻る頃は回復して来た。実母のことで モヤモヤして頭からはなれない。福島から来る時に精神科医から紹介状をもらって来たが未受診の状況 だ。
震災のトラウマ
○震災の時、流れていた音楽を聴くと強い不安感をおぼえる。震災後のトラウマで悩んでいる、毎日家に 閉じこもっている、何も食べていない、リスカしている、死にたい。本当は同年代の人と話したい
○防災士の資格を取ろうとしたが、防災上の活動をする際は男性にかなわない。被災し家屋も一部倒壊し て気分が落ち込んでいる。防災士資格取得で勉強した内容と現実とのギャップが大きく戸惑っている。 自分は被災者の役に立とうとの志で、膨大な量の専門書を勉強し資格に挑戦したが、周囲の無理解と震 災の心の傷から立ち直れない自分に虚しさを感じている
○関東で被災、怪我をし障がいを受けたが、職場でも医者も役所も震災による障がいと認定してくれない のが納得できない。そのころ職場でもパワハラ、セクハラがあり、当該震災のことを話しても無視されて いる。誰に相談しても真剣に対応してもらえず、あきらめの気持ちでいっぱいだ
○震災でトラウマになった。実家は帰ってくるなと言い、グループホームを探している、姉も帰ってくるなと 言う。頼りにしていた祖母は他界
○両親と子供を自殺で亡くし、自分も心身ともに疲れたが相談できる相手がいない。被災し仮設で両親が 自殺。夫とも DV が原因で離婚。主治医は仕事することを止める、人と話すと相手の顔色を見てしまう、 辛い。両親のところに行きたいと考える、午前中は意味もなく緊張してしまう
第
4
章
○数年前のケガ等で入院、検査をするも不調の原因がよくわからず、他の病院にも行ってみた。関東で被災、 治療費の申請したが受理されず会社でパワハラ、セクハラにあい抗議した。裁判という話を会社側は出し てきたが、自分は裁判するお金がない。今は生まれ育った場所にいて夫と二人暮らしで、少し病状は落 ち着いているものの、ケガ、会社の対応等納得できない。色々対応してみたが疲れてしまった。震災で 死んでしまっていたら良かったのにと思うこともある。
○震災時に付き合ってた彼と別れたが、お互い思い会っている、しかし一歩踏み出す勇気が無い震災のトラ ウマから逃れられず今に至っている。結婚を考えた彼氏と震災がきっかけでわかれ、その後ずっとその 事を引き摺っている。今でも会うことがあり、お互い結婚しておらず微妙な距離感がある。家族に自殺 者がおり、家族を持つことへのトラウマもある。苦労していない自分以外の人に嫉妬することも多い。世 間では自分は成功者と思うが、幸せな自分は受け入れられない
(2) 避難者の心と体の悩み
自殺念慮
・40 代 男性
障がいのあるの息子への対応がうまくいかず、言う事を聞いてくれず辛い。死のうと思い、睡眠薬を通常 の何倍も飲んだ。妻から息子への虐待や経済的トラブルもあり離婚した。息子と暮らすためにマンション を購入したが、仕事を失い、離婚もしてこれから売却も考えている。生活保護も検討中。子どもの事に 関しては役所や障がい児の親の会、学校とも相談はしているが、友人は聞いてくれない。息子とのくらし で自分の予定が定まらず苦しい。
・10 代 女性
震災を思い出し辛くなって死にたくなる。被災し、それ以来心が落ち着かない。夏休みに海で泳いだ、 突然深くなる所があってこわかった、泳ぎながら流された人の事を思って辛くなった。大学受験に失敗し ている、他の大学に入学したがどうしても希望の大学に行きたい。
・40 代 女性
息子の進学の事で悩んでいるが、どうしていいか分からない。被災した福島県へいつの時点で戻ればよ いか悩んでいる。中学生の子供の高校進学を機に移る事も考えいてる。しかし、福島県の状況、特に原 子力発電所の状態が政府の発表に食い違いがある事、食料品の問題があって正しい情報を得たい。夫 と離れ離れで正直寂しい。電話での会話ではなかなかコミュニケーションが取れない。両親も福島県に いるが、明確な事は分からない。放射能の子供への影響も心配事の一つである。
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い、再就職するのが難しい。今は両親の遺産で暮しているが、それも底をつき、心配してくれる家族に は迷惑をかけたくないので、死にたい。しかし死ぬのも怖い。
○被災し他県に移った。仕事をなくし一時は子供と一緒に住んでいたが独立して現在は一人暮らし。被災後 うつになり睡眠薬がないと眠れない状態になった。悪い時は自殺も考えた事ある。家が片付けられず家 に来た子供や同じ被災友達から片付けろと言われる。出来る時やったらいいと言われる事もあるが出来 る時なんかない。回復して以前のようになりたいがどうしたらいいのだろうか。
(3) 避難者の人間関係の悩み
孤立
・40 代 女性
震災で家族を失い深い喪失感に陥っている。震災で家族を失い代わりになる人がいない、天涯孤独。最 近は仕事を辞めて心が折れてしまった。同じ境遇の人とあうのも辛く、孤独。
いじめ
・30 代 男性
人間関係がうまくいかず悩んでいる。福島で被災し、関東で生活して 1 年以上になるが、周囲に溶け込 めず孤立している。職場でおちょくられ悩んでいる。知人に相談したら「あなたは大人だから放っておけ」 とアドバイスを受けほっとしている。不眠症になっているが受診はしていない。よりそいに聞いて貰うだ けで一安心する。悩みながらも前向きになって生活したい
・40 代 女性
職場の人間関係で仕事を辞めるか悩む。被災し、原発被害からのがれるため、日本海側に逃げてきた。 国が用意した大型バスでみんなでまとまって移動後、避難所にいて、他のみんながどんどん行き先が決まっ ていくのが、辛かった。現在、数年経っても被災地の状況は変わっていない。それでも帰りたいという思 いがあり、不満が募ってしまう。職場の上司が自分のことをよく扱ってくれるのだが、周囲の人でおもしろ く思わない人がいて、仲間はずれにされているような感じがある。
・30 代 女性
少し前から子供がいじめが原因で不登校で引きこもりになってしまった。娘が引っ越してすぐに不登校に なった。学校に相談にいっても無責任でどうしたらいいか。
・30 代 女性
第
4
章
支援者(役所・医者等)への不満
〇被災前から住んでいた家を明け渡すよう裁判所から連絡がきたのでどのようにしたら良いか困っている。 裁判所からの出頭要請が来た。市役所の無料相談に行きたいが難しい
〇被災した後、PTSD になり、動悸が止まらない。子供の頃に虐待されて育った、娘の反抗期を役所に相 談したらあなたの病気が治ってからと言われている
〇学校を休みがちで、不安や辛さが大きく死んだ方がましだと考えている。震災から時間はたったが、いろ んなことがおろそかになり、今後の見通しが立たず不安。一番は学校が休みがちになってしまっているの が心配。大学の先生には恥ずかしくて相談できない。飛び降りたりリスカしても死ねない。少しでいいか ら話を聞いて欲しい。呼吸困難になったり、外出できなかったりする、生きてる意味が分からず、幸せを 奪われ、婚活もできないでいる。内科の医者はこの薬は飲まなくていいと言われた、どうしたらいいか
〇仕事が見つからず、貯金も少なくなってきた、食料もなく困っている。数ヶ月前退職し貯金で生活している。 生保の相談に行っても貯金があるといわれ帰された。生活困窮支援センターにも行ったが、手も回らな いと相談に乗ってはもらえなかった。明日の食事にも事欠く状態で困っている
(4) 仕事の悩み
・30 代 男性
被災し引っ越した先で仕事を探しているが、非正規しかなく失業中、貯金もそこをついてきた、不安だ。 被災し家族を全員亡くした。ハローワークに通っているが、面接も受けているがうまくいかない。正社員 でなく非正規でも妥協するべきだろうか。将来どうなるかと不安。
・30 代 女性
被災し職を無くし、仮設生活の中で再就職をのぞんで活動しているが、夫共に仕事が見つからず困ってい る。被災してから仕事がなくなり、生活に困っている。自分は正社員で働きたい、夫もなかなか見つから ない。ハローワークは流れ作業のようで結局うまくいかない。
・50 代 女性
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相
談
内
容
(5) DV・性暴力
〇被災して状況が変わったことを受け入れられない。被災し、現在関東で一人暮らし。震災のトラウマがあり、 体力、気力もなく、先の事が不安でどうしたらよいか。自立して仕事をしたいが、思い描いていた将来が 崩されたような気がする。夫からDVを受け別居中。同居することは無理と思い、離婚の方向に動いている。 現実を受け止められず、悩む。
○被災者の男性を支援していたが、その男性から性暴力を受け困っている。断ることが出来ないでいる。 彼には罪の意識が無いようで、妊娠が恐いが、自分が被害者であるとは思いたくない、彼が悪い人だと 思いたくない。
○夫の無理解によりうつになった。自殺未遂をしてしまった、こんな自分は死んだ方がいい、いらないと思う。 死にたい、夫の浮気と自分の病気への夫の無理解で離婚を考えている。何とか子どもは進学できたがう つ病の状態と年齢などで仕事を休んでいるが、生活が一気に困窮。夫はお金を家に入れなくなっている。 支払いも近づき、どうしたらいいのかと考えると、死にたくなる。