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金融論(2013年度) Keida's Website slide fe unit02

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金融論

unit 2 金融取引と信用リスク

(2)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:限界効用の逓減

ある個人がアイスクリームをたべることを考えよう。 この個人が甘いものを食べたいときに、アイスクリームを食 べれば満足感を感じるだろう。

この満足感を、経済学では効用 (utility)と呼ぶ。

例えば、夏の暑いときにアイスクリームを食べる効用は高い と考えられる。

続けて2個目を食べたとしよう。

この場合でも、満足感、つまり効用は得られるだろう。 しかし、1個目と2個めで、どちらが得られる効用が大きい かを考えると、1個目だろうと考えられる。

おそらく、このようなことが起こる本質的な理由は、人間は

(3)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:限界効用の逓減

続けて3個目を食べたとしよう。

3個目から得られる効用は、さらに小さくなっていくことが 予想される。

このように、同じものを消費しつづけると、1単位の消費か ら得られる効用の増加分は減少していく。

このことを経済学では限界効用の逓減と呼んでいる。 したがって、われわれは、アイスクリームを食べた後は、 コーヒーを飲んだりチョコレートを食べたりして、限界効用 が逓減することを防ぎながら、財の消費から得る効用を最大 にしていると考えられる。

(4)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:貨幣の初期保有

この個別の財について言える限界効用が逓減するという現象 は、ある期間について与えられている購買力についても言 える。

貸し手は、今日の貨幣を供給して、将来の貨幣を需要する経 済主体である。

この主体は、今日保有している貨幣を用いて財の購入をする ことができる。

しかし、貸し手が貸出しを行った場合には、その分の貨幣を 使用することができないので、今日の財の購入が減少するこ とになる。

(5)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:貨幣の初期保有

会社で働いて給料をもらっている経済主体を考える。 この人の今年の年収は500万円であるとする。

しかし、来年には転職を行い、給料が1000万円に上昇する ことが見込まれているとする。

このことを前提として、この日との貨幣の初期保有は、今年 500万円で来年1000万円であるということにする。

この貨幣の初期保有のパターンと、財の購入による貨幣の支 出のパターンが一致している場合には、今年500万円分の財 を購入し、来年1000万円分の財を購入することになる。

(6)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:貨幣の初期保有

しかし、限界効用が逓減することを考慮すると、500万円分 の財を購入したときに、追加的な貨幣で購入できる財から得 られる効用は、1000万円分の財を購入した後により大きいの である。

したがって、来年得ることができる1000万円の貨幣の一部 を今年に移すことができれば、この人の効用の大きさは、全 体として大きくなる。

(7)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:貸し手の最適選択

つまり、消費の限界効用が逓減することを考えると、時間軸 に沿った貨幣の保有パターンを平均化したい誘因がある。

これは、時間軸に沿った消費の平準化と呼ばれる誘因と同様 のものである。

今年500万円で来年1000万円というパターンで貨幣を保有 している人は、今年貨幣を借り入れて、今年の財の消費を 500万円以上にし、来年に今年借りた貨幣を返して、来年の 消費を1000万円以下に抑える誘因がある。(図2-1

(8)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:貸し手の最適選択

(9)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:貸し手の最適選択

逆に、今年は1000万円の所得があるが、来年は退職してしま い、所得は年金のみの100万円になってしまう人を考えよう。 この人は、同様の理由から、今年の所得を来年に移したい誘 因がある。

したがって、この人は貸し手になる誘因を持っている。 この貸し手と、前に説明した借り手が出会って、貨幣の貸借 取引を行えば、両者の効用が増加することが分かる。 このように両者の効用が増加する場合、経済学では資源配分 が効率的になる、と考える。

なぜ、そのように言えるのか、ミクロ経済学の教科書を参照 して、確認すること。

(10)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

上の貸借取引で決まる利子の水準について、考える。 金融取引を行わない場合には、借り手の消費パターンは、今 年500万円、来年1000万円となる。

元本を含めた粗利子率をr、借入れ額をBとする。 粗利子率とは、元本も含めた利子率であることに注意。 通常の「年率」あるいは「年利」と呼ばれる利子率表示で、 3%である場合は、r = 1.03 となる。

これに対して、純利子率は、元本を含めない利子率である。 年率3%である場合は、純利子率は 0.03 となる。

金融取引を行った場合の消費パターンは、今年(500万円+ B)円、来年(1000万ーrB)円となる。

(11)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

もし、r = 0であれば、この人は借りた貨幣を返す必要がな いこと意味するので、無限大まで借りることになる。 したがって、rが0に近づくにしたがって、借り手の借入れ 額は無限大に発散することになる。

また、rが大きくなっていくことを考える。

rがたとえば1000万に近くまで大きくなったとすると、1円 借りただけで、来年の所得のほとんどを返済にあてなければ ならない。

そのような利子率で、借入れをするとは考えられないので、 借入れ額は0になる。

したがって、利子率が0から無限大に動くにしたがって、借 入れ額は無限大から0まで変化する。

(12)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

横軸に利子率、縦軸に借入れ額を表したグラフによって、借 り手の行動を図示すると、図2-2のように、右下がりの曲線 が描ける。

借入れは資金の需要であるので、資金需要曲線と呼ぶ。

(13)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

(14)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

次に、貸し手の貸出し額の決定について考える。

金融取引を行わない場合の消費パターンは、今年1000万円、 来年100万円となる。

貸出し額をLとする。

金融取引を行った場合の消費パターンは、今年は(1000万ー L)円、来年(100万+rL)円に変化する。

(15)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

もし、rが0ならば、今年の消費をLだけ減らして貸出しを 行なっても来年の消費が増加することはないので(rL= 0 であるため)、貸出し額は0に決定する。

また、利子率が増加していくと、今年の消費を1円減らすこ とに対して、来年の消費をr円増加させることができるの で、この貸し手の貸出し額は増加していくことになる。 資金需要曲線と同様に、横軸に利子率、縦軸に貸出し額を表 したグラフによって、貸し手の行動を図示すると、貸出し可 能な額の上限が1000万円であるので、図2-3のように、右上 がりの曲線が描ける。

貸出しは、資金の供給であるので、この曲線を資金供給曲線 と呼ぶ。

(16)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

(17)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

資金需要曲線と資金供給曲線から、均衡において決まる利子 率は、図2-4に図示してあるように、これらの曲線の交点r によって与えられる。

このように均衡の利子率が決定するのは、ミクロ経済学で扱 う通常の財に関する市場の均衡と同様に、需要する主体と供 給する主体の意思決定が同時に満たされるからである。 ミクロ経済学が教える均衡の安定性が、資金需要と資金供給 から定まる均衡利子率にもあてはまることを、確認すること。

(18)

資金貸借のミクロ経済学的基礎:均衡の利子率

(19)

信用リスクとは:事業プロジェクトの価値

金融取引とは、現在の貨幣と将来の貨幣の交換であるとした が、取引が締結された時点において、貨幣を貸し出した個人 が手にするものは、借り手が将来借りた貨幣を利子を付けて 返却するという約束である。

したがって、この約束が実際に履行されるかどうかは、将来 になってみないと分からない。

資金を借りてはじめた事業が見込み違いで失敗し、破産して しまう場合もある。

「破産」とは、支払い不能になった経済主体を救済するため に、公的機関が介入して、金融取引の一部または全部を無効 とする制度を指す言葉である。

(20)

信用リスクとは:事業プロジェクトの価値

このように貸した資金が返ってこないリスクを、信用リスク (credit risk) と呼ぶ。

資金の貸借取引には、この信用リスクがついて回る。 この信用リスクを評価するためには、借り手の事業を評価す る必要がある。

ここで、事業プロジェクトの評価の問題を考える。

(21)

信用リスクとは:アイスクリームを売る事業

ある人が、公園でアイスクリームを売る事業を考えたとする。 この事業をはじめるために、アイスクリームを工場から仕入 れる必要があり、そのために100万円が必要であるとする。 100万円で仕入れたアイスクリームは、天気が良ければ150 万円で売れ、50万円の利益が出る。

しかし雨が降った場合には、売れ残りが出て、20万円の損害 が発生するとする。

(22)

信用リスクとは:アイスクリームを売る事業

晴れになる確率を80%、雨になる確率を20%とすると、この 事業の期待収益は、

50万円× 0.8 + (−20万円× 0.2) = 36万円

と計算できる。

期待値で見て、この事業に事後的に正の価値があることに なる。

このアイスクリームを売る事業の収益は、図2-5に図示して ある。

(23)

信用リスクとは:アイスクリームを売る事業

(24)

信用リスクとは:アイスクリームを売る事業

この事業に対して、利子率20%で、100万円を貸し付けたと する。

天気が晴れた場合、借り手は利益の50万円から利子の20万 円を支払うことができるので、貸し手は20万円を受け取る ことができる。

この場合、借り手の売上は150 万円となる。

その時に、貸し手は元本と利子を合わせて120 万円を受け 取る。

しかし、雨になった時には、事業に20万円の損害が発生す るので、貸し手は80万円しか回収することができない。

この場合、借り手の売上は80 万円となる。

その時に、貸し手は元本と利子を合わせて120 万円を受け取 る権利があるが、実際に借り手は80 万円しか持っていないの で、80 万円のみ回収できる。

2-6

(25)

信用リスクとは:アイスクリームを売る事業

(26)

信用リスクとは:有限責任

以上のことは、借り手が有限責任 (limited liability) であるこ とから生じている。

つまり、借り手の責任の範囲は、事業の売上の範囲にとど まる。

もちろん、個人的に保証を行なっている場合には、個人保有 の資産を用いて借りた資金を返済する義務が生じる。 この場合も、個人保有の財産の範囲内にとどまる。 つまり、「無い袖は振れない」ということ。

したがって、事業が失敗し、その売上げが元本に満たない場 合でも、貸し手が回収できるのは、その売上げが全てとなる。

(27)

信用リスクとは:有限責任

資金の回収額は、天気の状態に依存することになり、貸し手 の受取り額の期待値は、

120万円× 0.8 + 80万円× 0.2 = 112万円

と計算できる。

ここから、期待利子率が12%となることが計算できる。 貸借取引の契約上の利子率は20%であるが、事業に失敗する というリスクを勘案すると、この貸借取引の実際の期待利子 率は12%となる。

したがって、貸し手は、この事業の成功の確率などを精査し て、状態ごとの回収額を考えて取引に応じるかどうかを決定 する必要がある。

(28)

信用リスクとは:要求利子率

貸し手は、もし、この事業者に貸出しを行なわなければ、他 の事業者に貸出しを行なうことで10%の期待利子率を得るこ とができるとする。

この場合に、この事業者に要求する期待利子率は10%と なる。

市場で貸し出した場合(株式などを購入したと考えても良 い)、期待利子率が10%であると考えれば良い。

(29)

信用リスクとは:要求利子率

期待利子率が10%以上であれば、先のアイスクリームの事業 者に貸出しを行なうが、10%を下回る時には、他の事業者に 貸し出すことを選択する。

したがって、アイスクリーム業者が借入れを行なうときに は、最低10%の期待利子率が要求される。

この意味で、この10%を要求利子率と呼ぶ。

この要求利子率は、ミクロ経済学で学ぶ機会費用と、基本的 に同じものである。

機会費用の概念については、ミクロ経済学の教科書で確認す ること。

(30)

信用リスクとは:要求利子率

晴れになる確率が80%のときは、このアイスクリーム販売の 事業に貸し出した場合の期待利子率は12%であるので、貸し 手は、この事業に貸出しを行なうことになる。

しかし、天気予報の結果、晴れの確率が60%であることがわ かったとすると、期待利子率は、

120万円× 0.6 + 80万円× 0.4 = 104万円

であるから、期待利子率は4%となり、要求利子率10%を下 回り、アイスクリーム事業への融資はされないことになる。

なぜなら、他の事業者に貸し出すことで、10%の期待利子率 が得られるのだから、期待利子率が4%のアイスクリーム事業 には貸し出さない。

(31)

信用リスクとは:要求利子率

このように、金融取引には、その約束が履行されないという リスクが必ずともない、そのリスクの大きさによって期待利 子率が変化する。

貸出しを行なうかの判断は、この期待利子率と要求利子率を 比較して判断することになる。

信用リスクの評価が、貸出しを行なうかどうかの判断をする 際に決定的に重要になってくる。

参照

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