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未来のリスクとチャンスをマネジメントする

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Academic year: 2018

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知的資産創造/200711月号

経営者の関心は、内部統制システムの

「構築」から「運用」へ

金融商品取引法が上場企業に要請する「財 務報告に係る内部統制報告書」の作成に向け、 多数の企業が取り組んでいる(狭義の内部統 制)。順調に進めている企業は、現在、整備・ 運用状況の有効性評価の検討に着手してい る。

そうしたなか、多くの企業経営者から、構 築に続く、2008年度以降の運用フェーズ対応 に関する相談が相次いでいる。「内部統制を 担当する要員の確保ができない」「どのよう に育成すればよいのか」「組織の再設計が必 要になったように思う」などである。

さらに「相当の手間をかけて文書化を推進 し、めどは立てたものの、内部統制の先にあ るのは何なのか」という質問も多く受ける。

産業界から見直しを求める声

日本の産業界では、内部統制に要するコス ト負担が大きいとして、軽減化に向けての声 が高まっている。しかし、多くの企業が本格 的に資本市場を活用し、資金調達する時代に おいては、内部統制をはじめとする規律は不 可欠であろう。

米国市場に上場していた日本の大手エレク トロニクスメーカーが、内部統制システムの 重大な欠陥を監査法人より指摘され、2006年 3月期の年次報告書を2007年9月に至っても SEC(米国証券取引委員会)に提出できない ため、上場廃止に追い込まれた。上場企業の 株主や取引先、従業員など関係者にとって、 会計情報や監査の信頼性は判断や行動のベー スの大前提であり、それを担保するための内 部統制システムは、資本市場に参加するすべ ての企業に当然のものとして要請されてお り、応分のコスト負担は不可避であろう。

21世紀の企業統治・内部統制

20世紀の資本集約型・設備集約型の工業社 会の時代から、21世紀は情報・知識集約型の ポスト工業社会へと移行しつつある。会社の 働き手にとって、「株主の提供する資本(カ ネ)によって事業が成り立っている」という 実感はない。

付加価値の源泉が「人的資本」などの無形 資産にあるポスト工業社会においては、株主 主権型の統治メカニズムではなく、経営者や 従業員が企業理念や事業計画を自身のものと して共有することにより、統治・統制される

未来のリスクとチャンスをマネジメントする

三宅将之

特集 リスクとチャンスをマネジメントするERM経営

当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法および国際条約により保護されています。 CopyrightⒸ2007 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

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未来のリスクとチャンスをマネジメントする

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ことが基本となろう。したがって、内部統制 やリスクマネジメントを考えるうえでの出発 点は、上位概念である企業理念・目的であ り、納得性のある中長期経営戦略、年次事業 計画にあることがわかる。

これを理解したうえで、狭義の内部統制か ら、リスクを全社的視点で捉えてリターンを 最大化することにより、企業価値を高める手 法であるERM(エンタープライズ・リスク マネジメント)導入に向けての取り組みが必 要となっている。

ERM思考法と戦略意思決定プロセス

人間と組織の意思決定を中心テーマに、多 様な理論、手法、モデルを構築し、ノーベル 経済学賞を受賞したハーバート・A・サイモ ン氏は、人間の意思決定の本質を「情報処 理」と捉えている。サイモン氏は、1947年に 刊行した著書『経営行動』を嚆矢として、目 的、意思決定過程、手段選択という経営プロ セスを科学的に分析している。経営トップの 価値観などの前提に基づいた意思決定と対比 し、客観的に検証可能な事実を前提にした意 思決定の重要性を主張したのである。

未来は不確実性に満ちている。事業戦略策 定に際しては、ERM思考法によりリスクと チャンスを識別し、リスク評価と対応、その コントロール(統制)とモニタリングの仕組 みを有する優れた意思決定プロセスを構築す ることが経営に求められている。

内部統制の先にあるもの

本特集では、内部統制の構築・運用に関す る根本的な意義を再確認する。そして、内部 統制システムに永続的に取り組むこととなる

日本企業に対し、以下の4つの論文にて、内 部統制の先にある課題を展望し、対応策を提 示する。

第一論文「内部統制から価値創造ERM経 営へ」は、内部統制とERMの関係、ならび にその情報開示の意義、そして米国での企業米国での企業での企業 改革法運用の見直しの動向について解説、、

「リスク・プロセスアプローチ」による価値 創造ERM経営の導入を提唱する。

第二論文「ERMの先進実��を確定�付の先進実��を確定�付 年金プランに見る」は、ERM�理手法によ」は、ERM�理手法によ る年金フ�ン�の�フ�ーマンス向上への取年金フ�ン�の�フ�ーマンス向上への取 り組みに着目し、事業会社の付加価値創造に 応用する手がかりを提示する。がかりを提示する。かりを提示する。

第三論文「継続的業務改革につなげる内部 統制評価組織設計」は、評価体制構築に際し て必要な検討項目、ならびに内部統制評価と 業務改革を融合した先進事�を取り上げ、実 効性ある内部統制の組織設計と運営方法につ いて提言する。

第四論文「内部統制システムの運用フェー内部統制システムの運用フェー運用フェー ズにおいて重要な�理指�」は、��、財務おいて重要な�理指�」は、��、財務」は、��、財務 報告以外の業務に関する広義の内部統制に、 どこまで取り組むべきかについて考察する。 統制ROI(�資���)と�RI(重要リスク(�資���)と�RI(重要リスクと�RI(重要リスク(重要リスク 指�)という指�を提示し、自社の体�にあという指�を提示し、自社の体�にあ った内部統制の構築・運用を提案する。

ERM思考法に基づき「未来のリスクとチ ャンスをマネジメント」するフ�ワー�ルッ キングの姿勢で、従業員・取引先・株主から 共感を得ることのできる経営者が待望される。

著 者

三宅将之(みやけまさゆき)

ERM プロジェクト室長主席コンサルタント 専門はエンタープライズ・リスクマネジメント

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