立体画像表現
( 2018 年 1 月 22 日)
浅井紀久夫
本日のポイント
• 両眼視差による立体視の仕組み
• 立体視表示方式
– 立体表示 – 三次元表示
• 三次元物体提示の色々
教科書 奥行き知覚
両眼視差による奥行き感
• 両眼視差
– 左右眼の見えのズレ – 対象を注視したときの
像は、注視点から離れ た位置でズレを生じる – 奥行き方向の距離と
ズレの量とが対応して いるため、両眼視差を 奥行き感に変換してい
両眼視差による立体視
• 輻輳の角度は、立体化
された仮想物体が見え
るように合わされる
• 調節は、画面上でピント
が合うように行われる
輻輳
輻輳と調節
立体視表示方式
• 立体表示(回り込んだ位置から映像が見えない)
– 眼鏡式:HMD(頭部装着型)
– フィルタ眼鏡式:アナグリフ式、偏光方式、時分割方式 – 眼鏡なし式:レンチキュラー式、バリア式
• 三次元表示(回り込んだ位置から映像が見える)
– 多眼式:レンチキュラー式、バリア式、インテグラル式 – 奥行き標本化式:バリフォーカル、表示面移動・回転式 – 空中像式:ホログラフィ
基本的に裸眼
立体表示技術( 2 眼式)
• 立体鏡(ステレオスコープ)
• HMD (頭部装着型)
• アナグリフ方式
• 偏光フィルタ方式
• プルフリッヒ効果の応用
• 時分割方式
Wheatstone の立体鏡
• 世界初立体ディスプレイ
• 鏡の反射を利用して、両眼視差の含まれた
一対の線画を分割して提示
– 写真技術は、まだ無かった
立体像
Brewster の立体鏡
• プリズムを利用した立体鏡
• レンズのプリズムとしての働きにより、ステレオ
写真を並べて配置すると、左右の視線は 1 枚
の写真を観察するように交差する
HMD (頭部装着型)
• HMD: Head Mounted Display
– 左右眼に小型ディスプレイが配置され、両眼視差 の含まれた画像がそれぞれ提示される
HMD の技術的課題
• 小型・軽量化
• 高解像度化
• 視野角の拡大
• 生理的・心理的影響
– 輻輳と調整の不整合問題
アナグリフ方式
• 左右の画像が補色関係
となるように合成し、両眼
視差を含む 1 つの画像を
構成する
• この画像を左右眼に分割
して提示するため、異な
る波長域のフィルムを用
いる
赤フィルタ 青フィルタ映像投影による偏光方式
• 偏光フィルタの遮光効果を利用する
• 偏光
– 特定の方向だけに振 動する光
– 光はあらゆる方向に
振動して進むが、微細 なスリットを配置する と、そのスリットに平行 な振動の光だけが透 過する
偏光方式の得失
• 長所
– 色再現性、高解像度での表示 – 実時間で動画像表示
– 同時に多人数が観察可能 – システム構成が単純
• 短所
– 偏光眼鏡の着用
– フィルタ透過率が低く、映像が暗い
直線偏光フィルタの原理
• 偏光フィルタ
– 一定の方向だけに振動 する光を取り出す
– 直交する偏光フィルタを 配置すると、光が遮断 される
円偏光フィルタの原理
• 円偏光
– 光の伝搬に伴って、振動方向が円を描くように回転する – 透過する光の角度が多いため、頭を傾けても立体視できる – 特定の波長が分割されず、両眼に提示されてしまうクロス
トークが発生する
映画館での立体視
• 偏光の乱れないシルバー・スクリーンに投影
する
時分割方式
• 左右の画像を、時間で分
割する
– 液晶シャッタ眼鏡を用いて、 左右眼に分割する
– 液晶シャッタは、フィールド
周期(1/60秒)に同期して 開閉する
– 左眼用の画像が提示され た瞬間には、右のシャッタ
右目 左目
時分割方式のシステム構成
2D映像入力
CPU
動き特徴検出 遅延時間制御
フィールド・メモリ
遅延方向制御
左眼用映像
• 高速かつ連続的なシャッタの開閉
– 提示が1/60秒毎なら、片眼では1/30毎に開閉 – ヒトがちらつきを感じる周期より長い
– 提示周期120Hz以上のシステムが必要
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時分割方式の得失
• 長所
– 1台のディスプレイで立体表示 – 高画質、フルカラー表示
– 同時に多人数視聴可
– システム構成が容易、低価格
• 短所
– 液晶シャッタ眼鏡の着用
プルフリッヒ効果の応用
• ヒトの眼は、薄暗くなると知覚に 遅れが生じる
– 片眼だけ暗くすると、左右の眼の 知覚に時間差が発生する
– 横方向に移動している物体や画像
には、時間差が両眼視差として感 じられる
• 片目にグレー(もしくは濃い紫) のフィルタ、もう片目は素通し(も しくは薄い黄)というメガネを使用
プルフリッヒ方式の得失
• 長所
– 映像自体は通常のカメラで撮影するだけで良く、 色彩にも問題は発生しない
– メガネをかけないで見た場合は、普通の作品とし て鑑賞できる
• 短所
– 横運動しないと、立体的に見えない(アクション的 な制限)
眼鏡無し立体視表示技術
• パララックス・バリア方式
• レンチキュラ方式
• バックライト分割方式
• インテグラル・フォトグラフィ方式
• DFD 方式
• バリフォーカル・ミラー方式
• 表示面振動・回転方式
• ホログラフィ
三次元表示技術
パララックス・バリア方式
• 垂直方向に入ったスリット
の後方に、両眼視差の含
まれた 2 つの映像を交互
に配置し、その前面にバ
リアを設置する
• 特定の距離と角度から観
察すると、左右眼に分割
して見える
•
レンチキュラー方式
• レンチキュラとは「レンズ状の」という意味で、
通常は半円筒型のレンズを指す
• レンチキュラの後方に
左右の映像を交互に
配置する
• 特定の距離から観察
すると、左右眼に分割
して見える
• バリアはないので、映
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バックライト分割方式
• バックライトを細いスリット光源にして、液晶
パネルの垂直ライン毎に左右眼用画像が
割り当てられるようにする
インテグラル・フォトグラフィ (IP) 方式
• 微小凸レンズ二次元アレイと
高解像度二次元画像を組み
合わせて、三次元像を構築
• 多人数が同時に三次元像を、
裸眼で観察できる
DFD 方式
• DFD (Depth-fused 3-D)
– 奥行き情報に基づいて明暗比率を変化させた2D 画像を前後に重畳表示する
– 設計が容易(パネルを重ねるだけ)
– 飛び出す距離は、パネルの距離に依存する
後ろのパネルに描画する 画像の輝度を変える
バリフォーカル・ミラー方式
振動
• スピーカの前面に膜状の反射鏡を取り付け、
振動させる
– 振動は、ディスプレイ上に表示される映像に同期 – 振動は、ヒトが像を融合できる周波数以上
表示面振動式立体視ディスプレイ
• 表示面を振動させる
東芝
表示面回転式立体視ディスプレイ
• 中心角に対して1度ずつ、360視点分の映像を表示 できる
• どこから見ても、裸眼立体視が可能
• 円筒形内部に動く立体物が実在しているような視覚 効果が得られる
ソニー 日立
Holographic Diffuser
• 360度どこからでも立体視できる
• “holographic diffuser” と名付け
られた特殊フィルムを貼った回 転鏡と高速プロジェクタ、DVI の 特殊なデコーダから構成される
• 縦方向に乱反射するが、横方向 にはほとんど乱反射が起きない
• 本体に対してアングルが高くても 低くても、像を見ることができる
ホログラフィ(1)
• ホログラフィの記録には、光の干渉が用いられる
• 光源の光(レーザ光)をハーフミラーによって、物体を照明す る光と記録材料に対して照射する光とに分離する
• 記録材料面では物体光と参照光による干渉が起こり、干渉 縞と呼ばれる非常に細かい模様ができる
物体光:物体から記録材料に対して反射した光 参照光:記録材料に対して照射した光
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ホログラフィ(2)
• ホログラフィの再生には,光の回折が用いられる
• 記録時の参照光と同じ位置に光源を置き、ホログラムに対して 再生照明光を照射する
• このときホログラムを透過する光
以外にも、ホログラムの細かい 干渉縞によって回折が起こり、 別方向に広がる光が生じる
• 回折光が記録した物体光と同じ
形になっており、観察者には実 際に物体が存在しなくてもホロ グラムの奥に記録した物体があ