2008 年度研究報告:環境グループ
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氏名・所属
在間敬子・京都産業大学経営学部准教授
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研究目的の概要
日本の全企業数のうち中小企業は約 99%を占めており、全付加価値では中小企業は企業
ベースで約 55%を占めている。経済に与える影響の小さくない中小企業は、環境に与える
影響も小さくないことが推察される。中小企業の環境経営を促進することは、環境配慮型
社会を形成するための重要な課題の一つである。近年、取引先である大企業からの要求を
受けて、中小企業も環境対応を進めつつある。
本研究の目的は、製造業の中小企業へのヒアリング調査とアンケート調査から、取引先
からの環境配慮要求の現状、それによる環境活動の推進状況、中小企業が環境経営を進め
る上での経営資源の問題点、および、中小企業の環境経営推進の条件を分析することであ
る。2004 年度から2007 年度までは、中小企業に対するヒアリング及びアンケート調査を
行い、中小企業の環境経営の現状と課題、推進の条件について定性的および定量的に分析
した。
2008年度は、最近までの中小企業の環境経営に関する調査研究に関してサーベイし、本
研究の特徴を確認した。文献レビューについては、初年度にも実施したが、この分野では
その後に提示された調査研究が少なくない。その都度サーベイを積み重ねてきており、最
終年度にあたってそれらを整理した。その上で、本研究の意義を再確認した。また、アン
ケート調査で、優れた取り組みをしている企業を抽出し、インタビューを行った。
これまでの研究成果を、本プロジェクトの成果報告書および著書にまとめた。
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2007 年度までの研究成果の概要
2004年度のヒアリング調査から、取引先から中小企業への環境配慮要求の内容を明らか
にした。それらは、大別すると、(1)大企業が直面しているEUのELV指令やRoHS指令な
どを踏まえた化学物質に関する要求事項、(2)大企業のISO1400実施に伴う環境マネジメン
トシステムに関する要求事項の2つに大別され、6つのタイプがあることが明らかにされ
た。
2005年度は、2004 年度末に実施した機械・金属業500社へのアンケート調査の内容を
分析した。その結果、中小企業は、販売価格の低下や原材料価格の上昇という厳しい競争
環境にある中で、徐々に環境配慮への対応も求められていること、しかしながら取引先で
2006年度は、第2回目のアンケート調査を、機械・金属業、プラスチック業の中小企業
400社に対して実施した。分析は主に業種間比較と機械・金属業については経年比較を行な
った。その結果、環境配慮要求は、機械・金属業よりもプラスチック加工業の方が多く受
けており、機械・金属業では2004年度より2006年度の方が増えていることがわかった。
また、環境活動レベルはあまり向上が見られず、取引先からの情報サポートも増加してい
ないことも明らかにされた。他方、取引先からの情報サポートを求める中小企業は増えて
いることも示された。
2007年度は、2004年度および2006年度のアンケート調査データから、環境性と経済性
に関する統計解析を行い、中小企業の環境経営を推進する条件を明らかにした。その結果、
以下の3つが明らかになった。1つは、厳しい市場環境に直面している中小企業、あるい
は、下請け型の中小企業では、取引先の環境配慮要求が強いことにより、受動的ではある
が環境経営を推進しうることである。2つは、市場環境が緩い中小企業、あるいは、経営
資源に余裕がある、下請けに頼らず自社開発とバランス型である、競争面での強みがある
という中小企業では、経済パフォーマンスを高めることにより、能動的な環境経営を推進
しうることである。3つは、いずれにしても、情報利用の中でも、取引先や認証機関によ
る環境情報サポートの役割が重要であることである。
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2008 年度の研究実施内容
<1>既存の調査研究との比較分析
近年の中小企業の環境経営に関する調査研究に関して再レビューを行った。取り上げた
主な文献は以下のとおりである。本研究で実施したような、取引先からの環境配慮要求の
詳細、環境活動の具体的内容とそのスコア評価、定量的分析による環境経営推進の条件の
抽出までを総括して実施したものは、既存研究にはなく、本研究の独自性を確認した。
*中小企業の環境経営に関する既存研究
(1)岡崎 亘博・山中 芳夫(2003)『中小企業の新しい「環境経営」入門』チクマ秀版社.
(2)深澤利元「中小企業の環境経営∼持続可能な組織マネジメントの視点から∼」『商工金融』
第53巻2号.
(3)三井逸友(2005)「<特集Ⅱ>環境問題と中小企業(その1) 環境問題と中小企業−そ
の今日的課題と実践の意義」『商工金融』 第53巻2号.
(4)出見世信之(2005)「<特集Ⅱ>環境問題と中小企業(その1) 環境問題−企業倫理か
らのアプローチ」『商工金融』 第53巻2号.
(5)中小企業金融公庫 総合研究所 中小公庫レポート No.2004-2『中小企業のエコビジネ
スチャンス』2005年2月22日(PDF資料).
競争力に関する調査 調査報告書』平成17年3月.(PDF資料).
(7)環境省『環境に優しい企業行動調査結果』各年度
(8)大阪府『平成13年版 大阪経済白書 ―大阪産業のグリーン化戦略―』
(9)奥野麻衣子「企業の環境経営格差に関する一考察∼中小企業による EMS の戦略的活用
への期待∼」『季刊 政策・経営研究』2007 vol.4
(10)財団法人機械振興協会経済研究所『機械関連中堅・中小企業における環境ビジネス戦略
∼競争優位の確立と課題∼』2000年(平成12年)5月.
(11)大阪中小企業診断士会環境経営研究会 (編)『中小企業のための「環境ビジネス」7つの
成功法則』日刊工業新聞社、2006年.
(12)寺尾忠能・大塚健司編『「開発と環境」の政策過程とダイナミズム−日本の経験・東ア
ジアの課題』アジア経済研究所、2002年.
小島道一「中小企業およびインフォーマル・セクターの公害対策―鉛リサイクルにおける
日本の経験とアジア諸国の模索―」
(13)中小企業庁『中小企業公害改善防止事例集』1973年.
(14)遠藤真紀「中小企業の環境経営」『中小企業季報』大阪経済大学 中小企業・経営研究
所 2006年 No.1, pp. 8-18.
(15)日本政策投資銀行国際協力部「中小企業における環境対策 中央鍍金工業協同組合 ケ
ーススタディ」2003年12
(16)中小企業研究センター(編) (椿広計・中山健・安田誠之助・大片政人・著)『中小企業
の環境経営戦略―ISO14001認証取得の現状と課題―』同友館、2002年.
(17)Hitchens, David M.W.N., Trainor, M., Clausen, J. et al. (eds.) Small and Medium Sized Companies in Europe: Environmental Performance, Competitiveness and Management: International EU Case Studies. 2003 Springer, GW
(18)Ian Worthington & Dean Patton (2005) “Strategic Intent in the Management of the Green Environment within SMEs: An Analysis of the UK Screen-printing Sector,” Long Range Planning, Vol. 38, pp. 197-212.
(19)David Hitchens, Jens Clausen, Mary Trainor, Michael Keil and Samarthia Thankappan (2003), “Competitiveness, Environmental Performance and Management of SMEs,” Greener Management International, Issue 44, pp. 45-57 (20)Lefebvre, Élisabeth; Lefebvre, Louis A.; Talbot, Stéphane. (2003) “Determinants and
impacts of environmental performance in SMEs,” R&D Management, Vol. 33 Issue 3, pp. 263-283
<2>優れた環境経営を実施する中小企業へのインタビュー
2006年度に実施したアンケート調査分析から、下記の条件を満たす企業をプラスチック
加工業と機械・金属業それぞれについてピックアップし、ヒアリングを行っている。
*抽出条件
①環境活動の総合指標が上位10社に入っていること
②属性面も含めすべての項目に回答していること
③従業員数が50∼150人程度であり、極端に大規模や小規模の企業でないこと
④同じ地域から抽出すること
*ピックアップした企業
株式会社伸晃(東大阪市、従業員数155人、プラスチック加工業)
株式会社ニッチ(東大阪市、従業員数87人、機械・金属業)
大阪銘板株式会社(東大阪市、従業員数150人、プラスチック加工業)
株式会社聖心製作所(東大阪市、従業員数112人、機械・金属業)
<3>中小企業の環境経営を推進する活動に関するヒアリング
自治体と中小企業がパートナーシップを生かして環境経営を推進している活動として、
東京都目黒区の「めぐろ環境マネジメントシステム研究会」に関するインタビューを実施
している。
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研究成果の公表
(1)公表論文
・在間敬子(2008)「中小企業の環境経営推進の条件に関する実証分析:機械・金属業とプラ
スチック加工業のケース」『社会・経済システム』No.29, pp.67-76
(2)その他
・本プロジェクトモノグラフシリーズ第8巻「中小企業と環境経営」
・『中小企業と環境経営』(中央経済社、「環境経営イノベーションシリーズ」植田・國部編、