1 ご存知ですか、里親制度
東京都には様々な事情で、家庭から離れて
暮らす0歳から18歳までの子どもが約4,000 人います。そのうち、里親家庭に入るのはわ
ずか1 割強で、約9 割は児童養護施設や乳児 院などの施設で生活しています。
養育家庭の里親とは、養子縁組を目的とせ
ずに、一定期間、自分の家庭で養育する里親
のことです。養子縁組里親は、特別養子縁組
を目的として、養子縁組が成立するまで子ど
もを養育するもので、養育家庭の里親とは違 います。
里親になるには、夫婦でなくても、大人が
2人以上いることと部屋数と広さが条件を満
たしている必要があります。委託されると、
養育費として、子どもの生活費、教育費など
が支給されます。子どもの状況によっては、
児童相談所を通して、実親と交流する場合も あります。
里親にはいろいろな形があります。長期だ
けではなく、数週間から数カ月だけの短期も
あり、一時保護のお子さんを預かることもあ
ります。私は実子ができませんでしたので、
里親になりましたが、実際に実子がいるお宅 でも、里親になる方がたくさんいます。
私が里親登録をしたときは、ほとんど研修
はありませんでした。やはり子どもを預かる
といろいろな大変さが出てきて、今では、認
定前研修、認定後研修、登録前研修、登録後
研修などの講習・研修があります。私は専門
里親をやっていますが、専門里親にも研修が
あります。これは里親のためではなくて、子
どもがこの家にいて本当に大丈夫かというこ
とを見直すためで、2年毎に更新していきま す。
2 一生懸命だから疲れる
里親となって、31 年目ですが、私の子育て
は、あっちにぶつかり、こっちにぶつかりと、
本当にいろいろなことがありました。私たち
夫婦は子どもができなくて、約7年不妊治療
をしました。もうあきらめて、どうしようと
思ったときに、主人の両親が、「子どもがいな
ければ苦しみもないけれど、いれば楽しみも
あるよ。だから、里親になってみないか」と 言ってくれたので、里親になりました。
それで、3歳の娘を預かりました。娘とは、
最初に、「おばさんの家へ来る?」と手を出し
たら、「うん」と言ってすっと来たんです。だ から、これは縁なのかなと思いました。
私は、将来母親になるためにと思って、通
信教育で保育士の資格を取りました。自分が
いい母親になりたいと思ったら、なれると思
っていました。ところが、それは机上の学習 であって、実際は全然違っていました。
もう一生懸命やりましたが、赤ちゃん行動
などの試し行動があり、私は寝不足でノイロ
ーゼ気味になり、夜叉の気持ちになりました。
その時に、主人が、「お前はよくやっている、
お前は一生懸命やっているから疲れるんだ」
と言ってくれました。この時に主人から、「な
んてやつだ、母親としての気持ちがないのか」
というようなことを言って責められていたら、 私は多分つぶれていたと思います。
主人は、「人間は、おなかに十月十日、赤ち
ゃんを育んで、赤ちゃんが生まれてくる。今
が産みの苦しみだから、とりあえず十月十日
頑張ってみよう」と言ってくれました。その
当時、同じ敷地内に、主人の両親がおりまし
たので、主人の両親にもそのことを話しまし
た。そうしましたら、「いいのよ、母屋にこど
もをよこしなさい。そしてあなたは昼寝しな さい」と言ってくれました。
その時から毎日、主人と、いろいろなこと
を話し合いました。主人と決めたことは、こ
の子たちは「大好きだよ」とちゃんと口で言
われていないから、口に出して「大好き、大
好き」と言おう。仲のいいお父さんとお母さ
【後期】第2回 1月26日(木)講演要旨
知ってほしい!里親制度
~子どもには温かい家庭を!~
【講師】NPO法人東京養育家庭の会
参与 秋山
あきやま
惠
え
美子
み こ
んを見ていないのだから、子どもの前で仲の
いいお父さん、お母さんをやろうということ
です。娘は、実母の体が弱かったりといろい
ろな事情で、病院からすぐ乳児院へ行きまし
た。だから、父親像、母親像というのを知ら ないから、そういうふうにしました。
3 子どもは別人格
娘が小学校3年生になるころです。親に反
抗したりしてくる時期だったので、何を言っ
ても通じません。もう本当に、この子とはだ
めかなと思いました。主人とも毎日話をして、
やれることは全部やってみようと、足立児童
相談所のカウンセリングを受けに、車で片道
1時間ぐらいかかるのを、毎週半年間、主人
と3人で行きました。カウンセリングをして
半年経った時に、彼女から、「私は操り人形で
はない」と言われました。「そうか、彼女は別
人格だ」と、そのときわかったのです。この
子はこの子、私たちは私たち、そういうふう
に思うようになったら、なんだか肩の力がす
っと抜けて、この子の好きな道を行かせてあ げようと思いました。
私たちは、声を出して、「誰か助けて」と言
ったから、児童相談所のカウンセリングを受
けられました。先輩の里親さんにいろいろと
相談したら、とにかく抱いて、「大好き、大好 き」と言ってとアドバイスも受けました。
4 真実告知
「私があなたを産んだわけではない。産ん
でくれたお母さんがいる」と、できるだけ小
さいときに話します。それを、「真実告知」と
いいます。といいますのは、勘違いされて、
そうでないとわかったときに、お父さんとお
母さんは私のことをだましていたと、子ども
が思うことが多々あるからです。だから、で
きるだけ早い時期に、「このお母さんが産んだ
わけじゃないけれども家族だよ」ということ を伝えていきます。
5 見守って待っている
娘が高校生のとき、彼女が悩んでもがいて
いることはわかりましたが、見守ることしか
できませんでした。その時は、胃がキリキリ
と痛み、歯がゆい思いでした。彼女がその頃
のことを振り返って、体験発表をしたことが
ありました。「思春期は誰にでもあって、その
時は、里子であろうが里子でなかろうが、悩
んだりもがいたりする。そして、親にしか当
たることができない。だから、親は我慢のし
どころです」と言いました。私はぎゃふんと
しましたけれども、でも、そんな時こそ何か あっても、愛情表現だけはしてください。
それは、具体的に言うと、自分が家に帰っ
た時に、ご飯があって、おふろが沸いていて、
寝るところがあるということ。その頃、娘は、
注意すればするほど聞く耳を持ちませんでし
たので、ただ、見守って待っているだけでし た。この体験発表を聞いて、よかったです。
6 子どもには温かい家庭を
愛された経験を持つ子どもは、何とか育っ
ていくと思います。子どもたちとその親御さ
んたちは、何か負の連鎖があるのです。離婚
していたり、虐待を受けていたり、そういう
方が多いのです。私たち里親は、家族のモデ
ルとなって、何か形を見せてあげたいと思っ
ています。子どもに対して、口に出して「大
好き、大好き」という愛情表現をすること。
夫婦仲よくすること。だから、私たち夫婦は、
毎日、「愛してるよ」と言います。
どこの町でも、お年寄りがいて、赤ちゃん
がいて、障害のある方もいて、里親子もいて、
それが当たり前の社会であってほしいもので
す。自然界でも、親が子どもを育てられない
とき、誰かが代わりに育てます。社会全体で
都合をつけて協力していけばいいのです。親
から離された喪失感を持った子どもと信頼関
係を築くことは、本当に大変で、特効薬はあ
りません。しかし、愛されたと実感した子ど
もは、たとえ養育のリレー、バトンタッチが
あったとしても、育っていく力ができている と思います。
日 常 の 積 み 重 ね によ り 、「 あ な たが 大 事 」、
「あなたが大好き」、「いつもそばにいるよ」、
「いつも見守っているよ」と伝えていきたい
と思います。今の子も、夜中、小さい電気を
点けていないと寝られないので、寝入ったら
電気を消しに行きます。そのときに、「おじさ
んもおばさんも、あなたのことが大好きだよ、
見守っているよ」と言います。淡々と毎日を