お問合せ先
茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係
http://www.lib.ibaraki.ac .jp/toiawas e/toiawas e.html
T itle
縞状鉄鉱層のE PMA 元素マッピング : エジプト東砂漠地帯
エルダバァ層鉄鉱層と他地域の鉄鉱層との比較
A uthor(s )
鈴木, 大志; 清川, 昌一; 伊藤, 孝
C itation
茨城大学教育学部紀要. 自然科学 = B ulletin of the F aculty
of E ducation, Ibaraki University. Natural science, 67: 37-55
Is s ue D ate
2018-01-30
UR L
http://hdl.handle.net/10109/13513
R ig hts
縞状鉄鉱層の
EPMA
元素マッピング:エジプト東砂漠地帯
エルダバァ層鉄鉱層と他地域の鉄鉱層との比較
鈴木大志
*
・清川昌一*
・伊藤 孝**
(2017 年 8 月 31 日受理)Chemical Elements EPMA Mapping of Banded Iron Formations:
Comparison of Neoproterozoic El Dabbah Formation in Eastern
Desert, Egypt and Other Iron Formations
TAISHI S
uzuki*, SHOICHI K
iyokawa* and TAKASHI I
to**
(Accepted August 31, 2017)
はじめに
地球史上,主に
2.7
~1.8 Ga
と~0.8 Ga
に地球規模で縞状鉄鉱層が形成された(Klein, 2005
)。縞状鉄鉱層は,当時の酸素濃度上昇を示す重要な証拠である。縞状鉄鉱層はその生成環境からアル ゴマ型,スペリオル型,ラピタン型に分類される。アルゴマ型は熱水性の小規模な縞状鉄鉱層で, 海底火山周辺において形成され,スペリオル型は非熱水性の大規模な縞状鉄鉱層であり主に大陸棚 で形成された(
Gross, 1965; Huston and Logan, 2004
)。また,ラピタン型は,新原生代のスノーボールアース後の環境変化に伴い,大陸周辺で形成された(
Klein, 2005
)。特に後者二つの縞状鉄鉱層は,*九州大学理学府地球惑星科学専攻︵〒819-0395 福岡市西区元岡744; Department of Earth and Planetary Sciences, Faculty of Sciences, Kyushu University, Motooka, Fukuoka 819-0395 Japan︶.
**茨城大学教育学部地学研究室︵〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Geosciences Laboratory, College of Education Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan︶.
Abstract
約
2.4 Ga
のGreat Oxidation Event
や新原生代のNeoproteozoic Oxidation Event
との関連も指摘されている(
Kasting, 2001, 2004; Kasting and Catling, 2003 ; Klein, 2005
)。エジプト東砂漠には新原生代後期に形成された縞状鉄鉱層が露出している(
Ali
et al., 2009
)。本地域の縞状鉄鉱層は,スノーボールアースとの関連は見出されておらず,層序学的にアルゴマ型と 類似しており,火成活動に伴い形成したといわれている(
Khalil and El-Shazly, 2012
)。しかし,その詳細な層序や内部組織については解明されていない。本研究では,
EPMA
を用いて,エジプトの鉄鉱層を詳細に調べ,元素分布図を作成した。
さらに,以下の地域(南アフリカ,バーバートン帯,
3.2 Ga
:オーストラリア,ピルバラ,3.1
Ga
:ブラジル,アイアンクアドラングル,2.4
~2.5 Ga
:ブラジル,カラジャス,2.7 Ga
:カナダ,ラブラドルトラフ:
1.88 Ga
)など,様々な時代のアルゴマ型鉄鉱層についても同様に元素分布図を作成した。エジプトの縞状鉄鉱層の特徴との比較を試みるとともに,地球史を通したアルゴマ型 鉄鉱層の化学組成の変遷を概観した。
エジプト東砂漠の地質
エジプト東砂漠は,エジプト東部の紅 海沿いの地域にあたり,東アフリカ造山 運動により形成されたアラビア-ヌビア 楯状地のヌビア側に属する(
Fig. 1
)。エジプト東砂漠は岩相の特徴から,東砂漠 北部,東砂漠中央部,東砂漠南部に区 分されている(
Stern and Hedge, 1985
)。東砂漠中央部は他の2地域と比較し,花 崗岩類,片麻岩,ミグマタイトに乏しい。 東砂漠中央部の基盤岩は新原生代の初生 テレーンに分類され,主にオフィオライ ト岩石群と島弧起源の火山岩-堆積岩ユ ニット,パンアフリカン造山運動(
Pan-African Orogeny
)最末期の貫入岩類からなる(
Stern, 2002
)。オフィオライト岩石群は蛇紋岩,ハンレイ岩,輝緑岩脈 群,玄武岩,深海堆積物からなり,
810
~
730 Ma
の形成年代を示す(Kröner
et al., 1992; Zimmer
et al., 1995; Andresen
etal.
, 2009; Ali
et al., 2010
)。また,島弧起源の火山岩-堆積岩ユニットは,溶岩, 火山砕屑岩,グレイワッケ,シルト岩, 泥岩からなり,
850
~635 Ma
の形成年 Fig. 1 Geological map of the Eastern Desert, Egypt (After Ali et代が知られている(
Stern and Hedge, 1985; Abdel-Rahman and Doig, 1987; Ali
et al., 2009
)。縞状鉄鉱層はこの火山岩-堆積岩ユニット中の
13
地域から確認されており,玄武岩質から流紋岩質の火山岩や火山砕屑岩と共に露出する(
Khalil and El-Shazly, 2012
)。エルダバァ地域の層序と鉄鉱層の特徴
エルダバァ地域は,エジプト東砂漠中央部,紅海から西へ約
30 km
に位置しており,先の島弧火成活動に伴う岩石群の分布域にあたる。変成・変形が弱く,緑色片岩相とされている(
Khalil and
El-Shazly, 2012
)。エルダバァ地域の火山砕屑岩層は全層厚4000 m
であり,枕状溶岩や火山砕屑岩,その間に挟まれる細粒な火山砕屑岩,鉄鉱層,黒色頁岩からなる。エルダバァ地域に露出する鉄鉱 層は,
10
~400 cm
の層厚を持ち,塊状溶岩の間に,緑色頁岩や黒色頁岩と共に繰り返す(Fig. 2
)。鉄鉱層を含む地層は,緑色頁岩層から徐々に鉄鉱物が含まれる頻度が増し,最終的に鉄鉱層に移り 変わる場合が多い(
Fig. 3a, b
)。鉄鉱床として採鉱されている部分にのみ,鉄鉱層に明瞭な縞状構造がみられ,暗灰色の粘土層と薄い赤色のジャスパーノジュール層を挟む(
Fig. 3c
)。厚さ5mm
程度の鉄層の葉理(いわゆるマイクロバンド)が重なり,
5
~10 cm
の層(いわゆるメソバンド)となることで,縞状構造が形成されている。その間にジャスパーノジュールが厚さ
5 mm
以下の層状・薄いブーディン状になって挟まれる。なお,このジャスパーノジュール層は,鉱床地域でのみ観察 できる。
この地域の鉄鉱層は,磁鉄鉱を主にするもの,赤鉄鉱を主にするものの
2
つに分けることができる。
SEM
観察によると,その細かな組織や鉱物の形の違いが顕著である。磁鉄鉱からなる鉄鉱層Fig. 3 Outcrops of iron formations in El Dabbah Formation, Egypt. a) Magnetite-rich iron formation on the greenish shale (150321-08) at section 2. b) Hematite-rich iron formation alternated with greenish shale (150321-22) at section 4. c) Hematite-rich banded iron formation (BIF) (160320-06) in iron mine.
は,縞状構造に乏しく,粘土鉱物が基質を形成し,そのなかに
10
μm
程度の磁鉄鉱が散在する(Fig.
4a
)。磁鉄鉱の中には,結晶の周辺部が赤鉄鉱からなるものが存在する。赤鉄鉱からなる鉄鉱層は,数
cm
スケールの縞状構造がよく発達し,鱗片状の赤鉄鉱の基質中に10
μm
程度の磁鉄鉱が散在する(
Fig. 4b
)。磁鉄鉱の結晶は,周辺部が赤鉄鉱からなるものもある。また,赤鉄鉱からなる鉄鉱層はジャスパー層を挟む。
我々はエルダバァ地域の全層序の調査を行い,
14
層準の鉄鉱層を見出している(Fig. 2a
)。そのうち,セクション
1
,2
,4
の3
つのルートにおいて,詳細な柱状図を作成するとともに試料を採取した(
Fig. 2b
)。セクション1
は,エルダバァ地域の全鉄鉱層のうち下位から2
番目,セクション
2
は下位から5
番目の鉄鉱層の層準にあたる(Fig. 2
)。セクション4
は鉄鉱山内であり,セクション
2
と同層準である。エルダバァ地域における分析試料は,鉄鉱層
3
試料(150321-08
,150321-22
,160321-50
)と縞状鉄鉱層
1
試料(160320-06
)の計4
試料である。試料150321-08
はセクション1
(RW12 gouge
)より得られた磁鉄鉱からなる鉄鉱層である。全体で
3000 m
以上の厚さがある火山岩-火山砕屑岩が卓越する層の下部(
Fig. 2a
)で,火山岩に挟まれた層厚約20 m
の堆積層中にみられる鉄鉱層の一つである(
Fig. 2
)。鉄鉱物の級化構造がみられる。研磨面観察では全体的に暗灰色で,葉理はみられない。
試料
150321-22
はセクション2
(RW12 gouge
)から得られた赤鉄鉱からなる鉄鉱層である。塊状溶岩に挟まれる約
15 m
程度の堆積層の最上位にあたる。セクション2
は,下位より溶岩層,有機物に富む黒色-暗緑色頁岩からなり,上位
3 m
程度に鉄鉱層を多く挟む層序を持つ。研磨面観察では,全体的に黒色でわずかであるが葉理がみられる。
試料
160320-06
はRW11 gouge
(鉄鉱床)から得られた転石であるが,岩相から対応層準は明確である。赤茶色の赤鉄鉱とシリカ濃集層が細かく互層する縞状鉄鉱層である。研磨面観察では,赤 茶色の赤鉄鉱層,暗灰色・黄色の粘土層,赤色のジャスパーノジュール層が互層する。赤鉄鉱層に は葉理がみられる。
試料
160321-50
はRW6 gouge
で採取された鉄鉱層である。緑色頁岩中に産する。研磨面観察では,暗灰色の磁鉄鉱層と黄色の細粒砂粒子が見られる。また,磁鉄鉱層にはわずかに葉理が認められる。
その他の地域の鉄鉱層
比較として検討した鉄鉱層試料は以下の
5
つである。それぞれの地域の地質と鉄鉱層試料について概略する。
南アフリカ,バーバートン帯フィグツリー層群マペペ層:試料
RD-17
はバーバートン帯東部のコマチ川沿いに分布する鉄鉱層である。古太古代-中太古代境界(
3.2 Ga
)頃,比較的深い大陸斜面で堆積したと考えられている(
Condie
et al., 1970; Hofmann, 2005
)。下位に黒色チャート,中位に頁岩,砂岩,一部礫岩,ジャスパー,鉄鉱層,上位に頁岩,グレイワッケ,重晶石層と重なり,徐々 に浅海化する過程を記録していると考えられている(
Lowe and Nocita, 1999
)。調査地域における地層の厚さは
41 m
であり,最下部約3 m
間では層厚約20 cm
の黒色頁岩と数cm
のチャートが互層する。
8 m
以降では,上位に向かい層状赤色チャートの割合が徐々に増加し,最上部に層厚3 m
の縞状鉄鉱層が分布する。本試料は川沿いの風化していない露頭から採取された。
西オーストラリア,ピルバラ地域クリバービル層:中太古代(
3.1 Ga
)に形成されたクリバービル層は,磁鉄鉱粒子からなる細かな葉理を持つ鉄鉱層で,厚い黒色頁岩層の上に堆積している (
Kiyokawa
et al., 2006
)。試料171.13
はDXCL
計画により得られたCL3
コア中の細かな葉理を持つ鉄鉱層である。分析試料周辺には,菱鉄鉱,磁鉄鉱,および赤色チャートがみられる。鉄鉱層に発 達する葉理の厚さは1
mm
にも満たないことが多いが,赤色チャートのそれは数cm
に及ぶ。ブラジル,アイアンクアドラングル地域:ブラジル・サンフランシスコクラトンにあるベロホ ジゾンチの南部にみられる鉄鉱層で,古原生代最初期(
2.4
~2.5 Ga
)に堆積したといわれている(
Babinski
et al., 1995
)。オーストラリアのハマスレー層群の鉄鉱層とほぼ同時期に堆積しているが,この地域の鉄鉱層は
550 Ma
のパンアフリカ造山運動により著しく変形している(Rosiere, 2008
)。試料
BR-4_2015
は鉱山内の風化されていない鉄鉱石である。ブラジル,カラジャス地域:ブラジル・アマゾニアンクラトンにある世界最大級の鉄鉱層であり,
2.7 Ga
に堆積したといわれる(Trendall
et al., 1998
)。ハマスレーやアイアンクアドラングル地域とは異なり,鉄鉱層の下位には火山岩がみられアルゴマ型と考えられているが,その堆積量は一般的 なアルゴマ型よりはるかに多い(
Rosiere and Chemale, 2017
)。本地域の鉄鉱石は世界的にみても高品位として知られる。鉄鉱石試料
BR-9_2015
は鉱山内から得られた。カナダ,ラブラドルトラフ地域:カナダ・ラブラドル準州の最東端に広く分布する縞状鉄鉱層 であり,古原生代(
1.88 Ga
)にスペリオルクラトンの大陸棚に堆積したと言われている(Findlay
et al.,
1995
)。この地域の鉄鉱層は一般に魚卵状組織を持ち,浅海で形成されたことが示唆される。鉄鉱石試料
CA-3_2015
は鉱山内から得られた。分析法
九州大学大学院理学研究院地球惑星科学分野微小領域分析システム室所有のフィールドエミッ ション電子プローブマイクロアナライザ
JXA-8530F
(EPMA
)を用いて,鉄鉱層の元素分布分析を行った。
3 cm
径程度の岩石片から作成した薄片試料を,1
μm
のダイヤモンドペーストのレベルまで研磨し分析試料とした。対象とする元素は,主成分の
Si
とFe
に加え,Na
,Mg
,Al
,P
,Ca
,Ti
,Mn
である。分析試料は,先に述べたように,エジプトの鉄鉱層3
試料と縞状鉄鉱層1
試料,南アフリカの縞状鉄鉱層
1
試料,オーストラリアの縞状鉄鉱層1
試料,ブラジルの縞状鉄鉱層2
試料,分析結果
1
)エジプト,エルダバァ地域の鉄鉱層(0.7 Ga
)a
)試料150321-08
:Si
とFe
が主成分であり,これら両元素には緩やかな逆相関がみられる(Fig.
5a
)。全体を通し,Na
,Mg
,Al
,P
,Ca
が検出される。一部,Mg
,Al
に富む部分があり,火山岩起源の物質の混入が示唆される。
b
)試料150321-22
:Si
とFe
が主成分であり,これら両元素には明瞭な逆相関がある。全体を通し,Na
,Mg
,Al
,P
,Ca
が検出される(Fig. 5b
)。特に,Si
やAl
の元素分布図では葉理がみられ,緩やかな流れに伴ってシルトサイズの粒子が堆積したと思われる。露頭レベルの観察で,上下の黒 色-暗緑色頁岩や緑色頁岩にもリップル葉理などがみられることも,これを支持している。
c
)試料160320-06
:Si
とFe
が主成分であり,これら両元素の逆相関が明瞭である(Fig. 5c
)。Fe
に富む部分には細かい葉理がみられ,他に検出される元素はない。
Fe
に乏しい部分ではMn
を除く,
Si
,Na
,Mg
,Al
,P
,Ca
を含む。また,細かな葉理がみられない粘土層にはP
,Ca
が含まれる。d
)試料160321-50
:Si
とFe
が主成分であり,これら両元素が顕著に逆相関する。Mg
は比較的多く含まれ,
Fe
と類似した分布パターンを持つ(Fig. 5d
)。P
とCa
の分布パターンは極めて類似しているが,一部(
Fig. 5d
の上部3 mm
厚の範囲)では,Ca
に富むがP
に乏しい。また,Al
の濃度は他のエジプトの
3
試料に比べると少ない。以上,四つの試料の分析結果をまとめる。エルダバァ地域の鉄鉱層には,鉄鉱層の主要元素で ある
Si
とFe
に加え,Na
,Mg
,Al
,P
,Ca
が含まれる。最も多く含まれるSi
とFe
の両元素間には負の相関が見られ,どちらかが豊富な部分では他方が乏しい。
Si
に富む領域に,Na
,Mg
,Al
,P
,Ca
が多く含まれる。今回の分析精度・解像度では,Ti
とMn
はほとんど検出できない。P
とCa
は共通部で含有量が多く,相関関係がみられる。
Si
に富む領域とFe
に富む領域の境界は不明瞭である。
2
)南アフリカ,バーバートン帯,フィグツリー層群マペペ層,コマチ川沿いの鉄鉱層(3.2 Ga
):試料
RD-17
は,赤色のジャスパー層,光沢のある暗灰色の鉄層,茶色のシリカ層の互層からなる(
Fig. 5e
)。Si
とFe
が主成分であり,これら両元素が顕著に逆相関する。他に,Na
,Mg
,Ca
,Mn
がわずかに検出される。今回の分析条件下では,Al
とP
は検出限界以下であった。Si
とFe
が豊富に含まれる領域の境界は明瞭である。
Na
とCa
はともに,鉄層や脈に含まれる。Mg
とMn
はそれぞれ
Fe
に富む領域で検出されるが,濃集箇所は異なる。Fe
は試料全体で検出されるが,特に径
1 mm
程度の鉄鉱物は純粋な鉄酸化物からなる。3
)西オーストラリア,ピルバラ,クリバービル層の鉄鉱層(3.1 Ga
):試料171.13
は,暗灰色の鉄層と赤茶色の粘土層との細かな互層からなる(
Fig. 5f
)。Si
とFe
が主成分であるが,Mg
とMn
4
)ブラジル,アイアンクアドラングルの鉄鉱層(2.4
~2.5 Ga
):試料BR-4_2015
は,暗灰色の赤鉄鉱と黄茶色のシリカ濃集層の互層からなる(
Fig. 5g
)。元素分布図では,ほぼSi
とFe
のみが検出され,両者は逆相関を示す。両元素の濃集域とも,はっきりとした葉理構造はみられない。 全般的に赤鉄鉱化が進み,初生的な堆積構造は保たれていないと思われる。
5
)ブラジル,カラジャスの鉄鉱層(2.7 Ga
):試料BR-9_2015
の研磨面観察では,暗灰色と赤茶色の細かな葉理構造がみられる。主要構成鉱物は赤鉄鉱である。元素分布図では,基本的には,
Fe
のみからなり,Si
や他の元素は検出されない(Fig. 5h
)。Fe
の濃度は若干変化し,岩石の組織に対応した縞状構造がみられる。
Al
は細脈の部分で検出される。図下部のSi
,Na
,Mg
,Ca
の高濃度の領域は薄片作成時に用いた接着剤である。
6
)カナダ,ラブラドルトラフの鉄鉱層(1.88 Ga
):試料CA-3_2015
の研磨面観察では,明灰色の赤鉄鉱層と暗灰色の細粒砕屑物層の互層がみられる(
Fig. 5i
)。層の境界は不明瞭である。ほとんどの領域で
Fe
が主成分であるが,一部Si
濃集層,Mg
に富む箇所がある。また,Al
も全体を通して含まれる。
Si
とFe
は逆相関を示し,Si
とMg
には相関がみられる。図下部のSi
,Na
,Mg
,Ca
に富む領域は薄片作成時に用いた接着剤である。まとめ
様々な時代に形成された世界各地の鉄鉱層を対象として,
EPMA
による元素分布図を作成した。この元素分布図を検討した結果,鉄鉱層は以下の
3
つのグループに区分できることが明らかとなった。
1
)Fe
とSi
,もしくはFe
のみからなる鉄鉱層:BR-4_2015
(ブラジル,アイアンクアドラングル),BR-9_2015
(ブラジル,カラジャス)2
)Fe
とSi
に加え,それ以外の元素を含む(Al
を除く):RD-17
(南アフリカ,バーバートン帯),171.13
(西オーストラリア,ピルバラ)3
)Fe
とSi
に 加 え, そ れ 以 外 の 元 素 を 含 む(Al
を 含 む ):150321-08
,150321-22
,160320-06
,160321-50
(エジプト,エルダバァ),CA-3_2015
(カナダ,ラブラドルトラフ)中太古代に生成された二つの鉄鉱層,バーバートン帯フィグツリー層中の鉄鉱層,ピルバラ,ク リバービル層の鉄鉱層は,前者は葉理が不明瞭,後者は明瞭と組織は大きく異なる。主成分である
Si
とFe
以外では,Mg
とMn
のみを含むという点で共通である。しかし,両元素の分布パターンは大きく異なっている。
約
25
億年前に生成されたブラジルの2
つの鉄鉱層は,Fe
とSi
のみ,もしくはFe
のみからなり,鉄鉱床として極めて高品位であることが裏付けられた。
Fe
の濃集やFe
やSi
以外の元素の除去等の二次富化作用が起こった可能性を考慮する必要があると思われる。
18.8
億年前に生成されたカナダ,ラブラドル産の鉄鉱層は,主成分であるFe
とSi
に加え,Mg
とAl
に富んでいる。この時代になりはじめて,砕屑物としてAl
が含まれる鉄鉱層が出現した可能性がある。
本研究のなかではもっとも新しい,約
7
億年前の新原生代に作られたエジプトの鉄鉱層は,主成Fe
とSi
に富む領域の境界が不明瞭であるという特徴を有する。以上のように,アルゴマ型の鉄鉱層を時代ごとに概観した際,構成元素の多様性は,新しい時代ほど高くなるという傾向がみられた。 本研究では,鉱物組成については詳しい検討を行うことができなかったが,その情報も加え,アル ゴマ型鉄鉱層の化学進化を論ずることを今後の課題としたい。
謝辞
本研究を進めるにあたり,九州大学理学府地球惑星科学専攻の松本奨学金と
JSPS
科研費基盤研究
A
(海外学術:JP26257211
)の一部,高知大学海洋コア総合研究センター共同利用研究(16A030
,16B028
,17A051
,17B051
)のもと実施された。分析に用いたブラジルとカナダの試料については新日鐵住金株式会社に提供していただいた。野外調査の際,エジプト
Menoufia
大学のAbouelhassan
Mohamed
教授とMaher Dawoud
教授にご協力いただいた。また分析に際し,九州大学大学院理学研究院地球科学部門地球進化史所属の三木 翼氏,および同微小領域分析システム室の島田和彦技術 研究員にご指導をいただいた。ここに記し謝意を表する。
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