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第 8 章 IS-LM モデルの応用 (2)
8.1 流動性のわな
流動性のわなとは?: 貨幣需要の利子弾力性が無限大な状態
• マネーサプライを増やした際、利子率がちょっと下がるだけで無限大に貨幣需要が増加 する(利子率がほとんど下がらなくともマネーサプライを吸収するだけ貨幣需要が増加 する)。したがって、マネーサプライを増やしても利子率は下がらない。
• 例: 0%。利子率はマイナスにはならない。
R
M Y
M
LM 貨幣需要の
利子弾力性
が無限大 流動性のわな
R IS
LM
Y Y1
図8.1: 流動性のわな
流動性のわなの理由: 貨幣以外の資産(債券)を持っていても、利子率が低く、債権を持つリスク と比較してそのリターン(利子率)が見合わない。
• 貨幣以外の資産に対する需要が極度に小さい。
日本のケース: 世界恐慌後、1990年代中頃∼2000年代中頃に日本で始めて起こった。
• バブル崩壊、不良債権問題で金融セクターが機能不全になる – 資金が投資に向かわない→ IS左シフト
– 銀行がお金を貸出せない→貨幣乗数↓→ LM左シフト
• 景気拡大のため金融緩和→ LM右シフト→利子率がほぼ0%に
上級マクロ経済学:影山純二
• さらに、不況によりデフレ深刻化→地価下落→不良債権問題が悪化
• 加えて、デフレ→消費減少→ IS左シフト
解決法: 流動性のわなの問題は景気が悪いこと。利子率が低くなることはその副産物。
• 解決法は、景気を良くする(GDPを上げる)政策
• LMを動かしてもムダ。したがって通常の金融緩和の効果なし。
• ISを右に動かす政策が必要。
8.2 マネーサプライとマネタリーベース
マネーサプライとマネタリーベース: 中央銀行はMbを利用してMsをコントロールする。 マネーサプライ(Ms): 世間を流れる貨幣の総量=現金通貨(Cash)+ 預金通貨(Deposit) マネタリーベース(Mb): 中央銀行が直接管理できる貨幣=現金通貨 + 銀行法定準備預金 銀行法定準備預金(預金準備, Reserve): 銀行が預金の引出しに備えて準備しておくお金。
• 一般銀行は預金準備を、日本銀行の当座預金(利子はつかないが出し入れがスムースに できる預金)に置いておき、預金者の預金引出しにすぐ対応できるようにしている。一 般銀行は、日銀の当座預金にお金を置いておいても利子がつかないので、できる限りこ の金額を小さくしようとするが、その最低限の金額を日銀がコントロールできる(日銀 が預金に対する準備金の比率を決める)。
信用創造: マネーサプライがマネタリーベースの数倍になる。
• 仕組み:預金・貸出の連鎖。
• 関係: M s = mmMb (mm: 貨幣乗数, money multiplier) mm=M
s
Mb =
Cash+Deposit Cash+Reserve =
C/D + 1 C/D + R/D
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上級マクロ経済学:影山純二
8.3 課題
1. IS-LMの体系が下記のように与えられていたとする。
C = a + bYd, Yd= Y − T, I = i − dR, N X = g − nR − mY, G = ¯G, T = ¯T Md
P = kY − hR, M
s= M
G = 95, T = 50, a = 50, b = 0.7, i = 100, d = 250, g = 20, n = 150, m = 0.1, M = 50, P = 1, k = 0.125, h = 500 (単位: 兆円)だったとする。
(a) このときの国民所得を求めよ。 (b) このときの利子率を求めよ。 (c) 減税の乗数効果を求めよ。
2. ある経済において、公衆(世間一般)保有の現金通貨と預金通貨の比率が0.08 (現金/預金= 0.08)、法定準備率(法定準備金/預金)が0.02であったとする。中央銀行がハイパワードマ ネーを1兆円増加させたときのマネーサプライの増加量を示せ。だたし市中(一般)銀行は 超過準備を保有しなかったとする(ヒント: 信用創造を参照)。
3. 金融政策における公定歩合操作、公開市場操作をそれぞれ説明せよ。
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