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金融論
unit 8 オプションとデリバティブ
デリバティブとは
デリバティブとは、その価格が特定の資産の価格に依存して
決まる金融商品のことを言う。
デリバティブの価格のもとになる特定の資産を原資産と呼ぶ。 デリバティブは、この原資産から派生した金融商品という意 味で金融派生商品とも呼ばれる。
“derivative” は英語で「派生した」という意味の形容詞、名詞
デリバティブには、先物、オプション、スワップなどがあり、 さらにこれらを組み合わせた金融商品が開発されている。
先物取引
先物取引 (future contract)とは、将来のあつ期日にある特定 の資産や財を売買する契約を現在時点で締結する取引をさす。 先物取引においては、対象となっている資産を原資産、売買 が行われる期日を満期、または限月と呼ぶ。
先物取引
先物取引を行うことによって、資産の価格変動リスクを保険 することが可能になる。
たとえば、穀物を原材料として食品を生産している企業は、 将来の収益の計画を立てるときに将来の穀物の価格を予想す る必要がある。
しかし、先物取引が可能であれば、現時点において将来必要 となる穀物の価格を決定することができるので、将来の穀物 価格の変動にともなる利益の変動をなくすることができる。
先物取引の価格決定
原資産の現在価格をS0、先物取引の価格をF0とする。 満期までの金利(純利子率)をrとする。
原資産を現在時点で1単位購入した場合の支払額はS0と なる。
この支払いのための資金を借入れによって調達したとする と、満期における支払額はS(1 + r)となる。
もし、先物取引で満期に1単位の原資産を受け取るという契 約を結んだとすると、満期日にF0の支払いが必要になる。
先物取引の価格決定
原資産の貯蔵に関わる費用をゼロと仮定する。
この場合には、満期日に1単位の原資産を得るという意味 で、現物取引と先物取引は同じ結果を得られる。
その意味で、この2つの支払いは同じとなるので、 F0 = S0(1 + r)
である。
オプション取引
オプションとは、ある特定資産を、ある特定の価格である特 定の期日に売買する権利を意味する。
オプション取引とはこの権利を売買する取引のことを言う。
オプションは、あくまでも権利なので、購入者が権利を行使 するかどうかは購入者の意思による。
権利を購入する価格をプレミアムと呼ぶ。
オプション取引
オプションには、コール・オプションとプット・オプション の2種類の契約形態がある。
コール・オプションは原資産を満期日に行使価格で買う権利 のこと。
プット・オプションは原資産を満期日に行使価格で売る権利 のこと。
権利行使に関して2種類に分けられる。
満期日のみに行使できるタイプのオプションをヨーロピアン・ タイプと呼ぶ。
満期日までの任意の期日に行使できるタイプのオプションを アメリカン・タイプと呼ぶ。
コール・オプションの利得
コール・オプションを買った場合について考えてみる。 行使価格をK、オプションのプレミアムをC、満期日の原資 産価格をSとする。
行使価格が原資産の価格よりも高い場合、つまりK > Sの 場合にはオプションは行使されない。
この場合、プレミアムとして支払った C が、購入者の損害と して発生する。
行使価格が原資産の価格よりも低い場合、つまりK < Sの 場合にはオプションを行使することによって、原資産を現在 の市場価格よりも低い価格で購入することができる。
したがって、その時点で市場で原資産を売却すれば (S − K) − C の利得(利益)を得られる。
コール・オプションの利得
逆に、コール・オプションを売った場合の利得を考える。 行使価格が原資産の価格よりも高い場合、つまりK > Sの 場合にはオプションは行使されない。
したがって、プレミアム C の分だけの利得を得られる。 行使価格が原資産の価格よりも低い場合、つまりK < Sの 場合には相手がオプションの権利を行使し、その結果として 行使価格で原資産を売る義務が生じる。
市場価格よりも低い価格で売る義務が生じているので、その 差額分の損害が発生する。
(K − S) + C の利得となる。K − S はマイナスであることに 注意すること。
コール・オプションの利得
これらの利得を、原資産価格Sを横軸に、利得を縦軸にとっ た平面に描くと、「買い」と「売り」で図8-1のようになる。 オプションを買った人と売った人の利得を合計すると0に なる。
つまり、オプション取引の結果、資金が一方の個人から他方 の個人に移動することが分かる。
コール・オプションの利得
図8-1
プット・オプションの利得
プット・オプションの利得は、図8-2のように描くことがで きる。
プット・オプションの利得
図8-2
オプションによるリスク資産の評価
株式の評価は、企業の資産価値から負債を差し引いたものと 考えられる。
ただし、負債は将来のある時点で返済を求められるので、そ の時点での企業の資産価値が重要である。
企業の資産価値は、その企業の営業活動によって日々変動す ると考えられる。
オプションによるリスク資産の評価
ある企業がBだけの負債を発行しているとし、この負債の返 済日をT とする。
このT 時点における企業の資産価値をV(T )とする。 この返済日における株式の価値は、資産価値から負債への支 払い額を差し引いたものである。
もし、V(T ) > B であれば、V (T ) − B となる。
もし、V(T ) < B であれば、その企業は倒産するが、株主の 有限責任の原則から、株式の価値は0 となるだけである。 現在の株価をCとすると、この株式の購入による利得は、図 8-4のようになる。
これは、コール・オプションを買った場合と同じように評価 できることを意味している。
オプションによるリスク資産の評価
図8-4
オプションによるリスク資産の評価
企業の負債の評価を考える。
負債の返済額をB、返済日をTとする。
返済日における企業の資産の価値をV(T )とする。 もし、V(T ) > B であれば、負債は返済される。
もし、V(T ) < B であれば、負債は債務不履行となり、返済 額は V(T ) となる。
現在の負債の額をB0とすると、C= B − B0とおくことで、 企業の負債は図8-5のように描くことができる。
これは、プット・オプションを売った場合と同じ評価ができ ることを意味している。
オプションによるリスク資産の評価
図8-5