財政競争
便益漏出,資源移動,課税競争
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便益漏出 BENEFIT SPILLOVERS
便益漏出 Benefit spillovers
• 地方公共財の便益は地方政府の境界線内に留ま るとは限らない.
– 他自治体の図書館の利用
• 便益漏出 (Benefit spillovers): ある地方政府が供 給する公共サービス(地方公共財)が他の地方 の住民に便益を与えること.
• 地方政府が住民の厚生 ( 効用 ) を最大化しよう と地方公共財の水準を決定する場合,地方公共 財の供給水準はどうなるのであろうか.
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外部経済の議論からの類推 (1)
• 地方公共財の便益が漏出する場合,当該地方公 共財の水準は最適な水準と比べて過小になる.
• 過小な供給水準を矯正するために,当該地方公 共財を提供する地方政府に定率補助を与え,地 方公共財の供給水準を最適な水準に近づける. ( ピグー補助 )
外部経済の応用
• 地方政府間の相互作用を明示的にみてみよう.
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モデル
• i 地域の消費者 ( 同質, n
i人 )
– : 地方政府 i による公共財供給
– : 地方政府 j i による公共財供給
– ij (0, 1]:j から i に漏出する場合の便益の減 耗
• 地方政府 i
•
g
iの選択は他政府の g
jの選択に依存
• 地方政府 i の無差別曲線を空間 (gi, gj) に描く
• gjを固定して giを増加させる.
– >0 であり, giが増加すると xiは減少するから,限界代替 率の逓減により, giのゼロからの増加は Viを増加させる が,やがて減少を始める.
• giを固定して gjを増加させる.→ Viが増加するの は明らか.
•
7
無差別曲線
gi gj
O
ナッシュ的行動
• gj を所与にした ( 主体的に ) 最適な gi の必要条件
• 主体的均衡条件
•
9
反応曲線
gi gj
O
ナッシュ均衡
• i と j の主体的均衡条件を同時に満たす {, }
•
11
ナッシュ均衡
gi gj
O
社会的最適解
13 gi
gj
O
地方公共財の最適供給 (2 地域 )
• 最適化問題
•
地方公共財の最適供給 (2 地域 )
• ② に①と③を代入
• ④ に①と③を代入
• 公共財 (
ij=
ji= 1) のケース
•
15
資源移動 : RESOURCE FLOWS
( 水平的租税外部性 : HORIZONTAL TAX EXTERN ALITIES)
資源移動モデル
• 人や企業 (=resources) は地域間を自由に移動する.
• 地域 ( 地方 ) 間で異なった政策が行われている場 合,自己に有利な地域に移動する.
• 人や企業は課税ベースであり,また給付の対象でも あるから,当該地方の財政 ( 予算制約 ) に影響を与 える.
• ある地方が政策を変えると,人や企業が地域間を移 動するので,他の地方の予算制約,ひいてはその政 策に影響を与えることになる.
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モデル ( 水平的課税競争の場
合 )
• i 地域の課税ベース
– : 地方政府 i による税率 ( 従量税方式 ) – : 地方政府 j による税率 ( 従量税方式 )
• 地方政府 i の目的関数
•
モデル ( ラッファー・カーブ )
• 地方政府 i の歳入 :
•
i 19 Ri
O
iの選択は他政府の
jの選択に依存
• 地方政府 i の目的関数
•
jを固定して
iを増加させる.
• のみが変化すると : 他地域の課税は外部経済
効果をもつ
•
無差別曲線
21
i
j
O
iの選択は他政府の
jの選択に依存
• 地方政府 i の最適化問題
• 一階条件 : g
jを所与とした場合の最適化
• 上記の一階条件 を所与したもの
•
反応曲線
23
i
j
O
ナッシュ均衡 {}
• ナッシュ均衡 {}
•
ナッシュ均衡
25
i
j
O
底辺への競争
i
j
O
Nj Ni
社会的最適解
27
i
j
O
垂直的租税外部性 VERTICAL T
AX EXTERNALITIES
垂直的租税外部性
• ここでは人や企業 (=resources) の移動は考
慮しない.
• 独立した中央と地方の課税を考え,地方も
中央も同一の課税標準をもつ場合を考え
る.
• 一方の税が増加すると課税標準は縮小する
ので,他の方の税収が減少する(外部不経
済).
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モデル ( 垂直的課税競争 )
• i 地域の課税ベース
– : 地方による税率 ( 従量税方式 ) – : 中央による税率 ( 従量税方式 )
• 地方政府 の目的関数
• 中央政府 の目的関数
•
iの選択は他政府の
jの選択に依存
• 政府 i の目的関数
•
jを固定して
iを増加させる.
• のみが変化すると : 他地域の課税は外部不経
済効果をもつ
•
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無差別曲線
i
j
O
iの選択は他政府の
jの選択に依存
• 地方政府 i の最適化問題
• 一階条件 : g
jを所与とした場合の最適化
• 上記の一階条件
•
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反応曲線
i
j
O
ナッシュ均衡 {}
• ナッシュ均衡 {}
• ナッシュ均衡での税率の相対的大きさ {}
•
35
ナッシュ均衡
i
j
O
Nj Ni
社会的に最適な税率
37
i
j
O
Nj Ni