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RJR (RJR TABACCO COMPANY: NC Corp & NJ Corp)

ドキュメント内 US Patent Proceeding (ページ 35-44)

 

CAFC Decision 2007-1448:  

 

Decided on August 25, 2008    

 

 

   

 

 Tatsuo YABE

on Sep 28, 2008

      

 

本判決の意義: 

 

本判決は、不公正行為の判断基準を変更したわけではない。 しかし、今回の判決は過去の CAFC の 不公正行為の判断に対する判示を整理し、不正行為の立証責任の基準をより明確にしたという意味で 重要であると考えます。 特に、2004 年のMonsanto 判決(以下 4 参照)を今回の CAFC が再確認した という点に鑑み、被疑侵害者にとっては、問題となる特許の経過書類において、IDS 開示義務違反の 事実を見つけたとしてもそれを根拠にして特許の権利行使不能の反証が困難になると予想されます。 

逆に特許権者にとっては IDS 開示義務違反をしたことが後に発覚したとしてもそれ自体で特許権が行 使不能になることはないという意味において、米国特許出願における IDS 提出ルーチン(社内・所内規 則)が既に妥当に設定されており、同ルーチン(社内・所内規則)に基づき IDS 提出を実行している場合 には、同ルーチン(社内・所内規則)をより厳格に見直す必要性を課す判決ではないと言えます(以下6 参照)。 

 

  

 

特に以下の点に関して明示或いは過去の CAFC の判例を確認した: 

 

  

 

不正行為を証明するには、

 

(1) 米国特許庁を欺くという意図、及び、非開示或いは偽って伝えられた情報の重要性の両要件を 明白且つ説得性のある証拠で証明されなければならない; 

 

(2)後に重要性が解ったということ自体で、特許庁を騙す意図の要件は満たされない; 

 

(3) 直接証拠によって騙す意図を証明する必要はないが、状況証拠によって証明する場合に、その 状況証拠自体が明白且つ説得性の証拠でなければならない; 

 

(4) 騙す意図と重要性の要件が明白且つ説得性のある証拠で証明されたとしても、裁判所はエクイ ティ(衡平)の見地から、特許全体を執行不能にするに値する著しい(甚だしい)不正行為があったか否 かを判断しなければならない;Monsanto Co. (Fed. Cir. 2004) 

 

(5) 被疑侵害者の方が騙す意図及び重要性の明白且つ説得性のある証拠で立証しない限りは、特 許権者は反証責任を負わない。

 

   

**********

 

(6) 特許権者が意図的に重要な情報を偽ったり、隠すことによって特許を取得し、当該特許によって 権利行使をする行為を許容することが不正行為であるのと同様に、特許権者が軽微な手続き上のミス をしたこと、極小さな過失に相当する行為或いは善意の基にミスをしたことを理由に特許権の全てを行 使不能にするということも不正行為である。 

 

   

 

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概要: 

 

  

 

(A) 問題となった特許: 

 

  

 

(1) 米国特許第 6202649 号 

 

(2) 米国特許第 6425401 号(上記特許からの継続) 

 

  

 

(B) 技術内容: 

 

広義には、タバコの葉をその消費前に乾燥させる技術に関する。 当該乾燥するステップにおいてタバ コ葉(刈り取られたグリーンの状態)には存在しないタバコ特有の発癌性物質(TSNAs)が発生する。 

同発癌性物質の量をいかに減少させるかという技術に関する。 

 

  

 

(C) 下級審(メリーランド地区連邦地裁)の判断: 

 

上記2つの特許は不正行為によって権利行使不可 

 

  

 

(D) 米国特許庁に提示されなかった情報: 

 

   

 

■ 発明者 Williams の特許出願を準備中に Burton 博士(科学者であり、特許権者である Star 社のコ ンサルタント)が Delmendo(米国特許弁護士)に送った書信(1998 年 8 月 28 日受信): 

 

  

 

当該 Burton 書信には: 

 

  

 

Since Chine is a developing country, they are still  use [sic] the old curing technology that was  abandoned in the US during the 60th.  It seems  to me that the probable cause for the absence of  TSNA was their use of old [radiant heat] 

flue-curing techniques. 

 

  

 

中国は発展途上国であるので、米国で 60 年代に 既に廃止された旧式の乾燥方法を使用している。

中国の手法によって発癌性物質が存在しないの では[放射性]の煙草の葉を熱風乾燥する技術に よると思われる。 

 

  

 

と記載されていた。 

 

   

 

■ Curran データ(略) 

 

  

 

(E) 問題となった行為の概要: 

 

1998 年 9 月 15 日に Delmendo 弁護士は Williams 氏の代理人として米国仮特許出願をした。 同仮出 願において、中国及び他の諸外国で未だに放射性の熱乾燥処理を実施していることを開示した。 さら に、米国で実施された放射性の煙草葉乾燥処理においては発癌性物質が多く発生していたということ を開示した。 

 

  

 

仮出願から丁度一年した 1999 年 9 月 15 日に Delmendo 弁護士は米国特許出願(018 出願)をした。 

同 018 特許出願の明細書の大部分は仮出願の内容と同じであるが、米国における放射熱による乾燥 処理によって発癌性物質が多く生じるという開示を削除するとともに、以下の説明を追加した: 

 

  

 

In flue curing processes that utilize a heat  exchanger capable of providing relatively low  airflow through the curing barn, I have discovered  that it is possible to somewhat reduce the TSNA  levels by not venting combustive exhaust gases  into the curing apparatus or barn. 

 

相対的にエア流の低い熱交換器を使用する煙草 葉の乾燥処理において、燃焼廃棄ガスを熱乾燥 処理装置に流入しないようにすることによって、発 癌性物質の生成レベルを幾分か減少できるとい うことを私は発見した。   

 

  

 

018 特許出願(USP6202649)の出願の直後に、発明者 Williams 及び Star 社は Sughrue 法律事務所の 代理人(特許弁護士)を解任し、Banner 法律事務所の弁護士に委任をした。 

 

  

 

2000 年 2 月 15 日に Banner 事務所の代理人 Riverd 弁護士は 018 特許出願に対して先行技術との相 違点を説明した IDS を伴い早期審査( make special)を請求した。 

 

  

 

早期審査請求は認められ、018 特許出願は 2000 年 9 月 14 日に許可され、2001 年 3 月 20 日に 649 特許が発行された。 

 

  

 

(F) 判決に至った理由の概要: 

 

   

 

649 特許に関して: 

 

地裁の両特許に対して認めた騙す意図は RJR 社の主張、「Williams 特許弁護士と Star 社が Sughrue 事務所の弁護士が Burton 博士の書信を開示するのを意図的に阻止するために、Sughrue 事務所から Banner 事務所へと代理人を変更することで、Banner 事務所に Burton 博士の書信の存在を伝えないで おこうということを共謀した」を認めたことに依存している。 しかしこの共謀したという事実は、明白且 つ説得性のある証拠で証明されていないので、地裁が認定した騙す意図の要件は明白な間違いであ る。 Sughrue 事務所から Banner 事務所に代理人を変更した主たる理由は、Star 社が信頼する Sughrue 事務所のパートナーが他界したからである。 勿論、この代理人を変更した理由の信頼性に異 議を唱えることも可能であるが、まずは被疑侵害者が騙す意図が閾値を越えていることを明白且つ説 得性のある証拠で立証してからでないと、特許権者は当該異議があるにせよ、それに対する説明責任 を負わない。 

 

  

 

収集された証拠を検討するかぎりにおいて、Star 社が Burton 博士の書信を隠蔽するために代理人を 変更したという推論が支持される明白且つ説得性のある証拠はない。 

 

  

 

401 特許に関して: 

 

さらに、401 特許に対して不公正行為の判断の基礎となった「重要性の要件」に対する地裁の判断にも 問題がある。 地裁は Burton 博士の書信(及び Curran データ)は重要性の要件を満たすと判断した。 

しかし Star 社は 401 特許の審査中に Burton 博士の書信及び Curran データを重複情報にしうる関連 情報*を特許庁に開示した(注意: 649 特許の成立後であって、401 特許の審査中に当該関連情報が 特許庁に開示されたので、これら関連情報*は 649 特許に対する重要性の要件を判断する証拠には適 用されない。649 特許の不公正行為の地裁判断の間違いは、「騙す意図の要件」が満たされていない ということであり、401 特許の不公正行為の地裁判断の間違いは、「重要性の要件」が満たされていな いということである。) 

 

  

 

(G) 本判決の意義: 

 

本判決は、不公正行為の判断基準を変更したわけではない。 しかし、今回の判決は過去の CAFC の 不公正行為の判断に対する判示を整理し、不正行為の立証責任の基準をより明確にしたという意味で 重要であると考えます。 

 

   

特に、2004 年の Monsanto 判決(以下 4 参照)を今回の CAFC が再確認したという点に鑑み、被疑侵害 者にとっては、問題となる特許の経過書類において、IDS 開示義務違反の事実を見つけたとしてもそれ を根拠にして特許の権利行使不能の反証が困難になると予想されます。 逆に特許権者にとっては IDS 開示義務違反をしたことが後に発覚したとしてもそれ自体で特許権が行使不能になることはないと いう意味において、米国特許出願における IDS 提出ルーチン(社内・所内規則)が既に妥当に設定され

ており、同ルーチン(社内・所内規則)に基づき IDS 提出を実行している場合には、同ルーチン(社内・

所内規則)をより厳格に見直す必要性を課す判決ではないと言えます(以下6参照)。 

 

  

 

特に以下の点に関して明示或いは過去の CAFC の判例を確認した: 

 

  

 

不正行為を証明するには、

 

(1) 米国特許庁を欺くという意図、及び、非開示或いは偽って伝えられた情報の重要性の両要件を 明白且つ説得性のある証拠で証明されなければならない; 

 

(2)後に重要性が解ったということ自体で、特許庁を騙す意図の要件は満たされない; 

 

(3) 直接証拠によって騙す意図を証明する必要はないが、状況証拠によって証明する場合に、その 状況証拠自体が明白且つ説得性の証拠でなければならない; 

 

(4) 騙す意図と重要性の要件が明白且つ説得性のある証拠で証明されたとしても、裁判所はエクイ ティ(衡平)の見地から、特許全体を執行不能にするに値する著しい(甚だしい)不正行為があったか否 かを判断しなければならない;Monsanto Co. v. Bayer Bioscience B.V. (fed. Cir. 2004) 

 

(5) 被疑侵害者の方が騙す意図及び重要性の明白且つ説得性のある証拠で立証しない限りは、特 許権者は反証責任を負わない。

 

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(6) 特許権者が意図的に重要な情報を偽ったり、隠すことによって特許を取得し、当該特許によって 権利行使をする行為を許容することが不正行為であるのと同様に、特許権者が軽微な手続き上のミス をしたこと、極小さな過失に相当する行為或いは善意の基にミスをしたことを理由に特許権の全てを行 使不能にするということも不正行為である。

 

  

 

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(H) 以下の判例を引用した:  

 

  

 

Ulead Sys. Inc. v. Lex Computer & Mgmt Corp. (Fed. Cir. 2003) 

 

不公正行為の立証責任は被疑侵害者が負う。 

 

  

 

Cargill, Inc. v. Canbra Foods, Ltd. (Fed Cir. 2007) 

 

Impax Labs., Inc. v. Aventis Pharms . Inc., (Fed. Cir. 2006) 

 

不公正な行為があったことを証明するには、被疑侵害者は、(1)出願人が特許庁に対して重要な事実 に対して積極的に虚偽な主張をした、或いは、重要情報を隠したこと、及び(2)特許庁を騙す意図かあ ったこと証明する証拠を提示しなければならない。 

 

  

 

ドキュメント内 US Patent Proceeding (ページ 35-44)