Taltech Limited v. Esquel Apparel:
Fed. Cir.
May 22, 2008
ベストモード要件に関する明瞭な判決(Taltech Limited v. Esquel Apparel: Fed. Cir.May 22, 2008) が出たので紹介します:
問題となる特許(USP5568789)はドレスシャツなどが洗濯時に膨れる(変形)するという問題を 解決するためのドレスシャツの縫い目に関する発明であり、縫い目に使用する bonding element
(接着テープ)が本訴訟の重要な争点となった。
TALteach は Esquel 社を相手に2つの訴訟を提起したが、ワシントン西地区連邦裁判所の命令で 訴訟を一つに統合するとともに、権利主張の対象となるクレームをクレーム 18,25 と 26 に減らし て訴訟を継続した。
不公正行為の存否、クレーム 18 のベストモード開示要件に鑑みた有効性、さらに、クレーム 18,
25,26 の侵害に関して審理された。
ここでは、ベストモード要件に関する判示部分のみ紹介する。
クレーム 18 はクレーム 17 から従属する方法クレームであり、クレーム 17 は親クレーム 1 から従 属する。 争点となるクレーム 18 の特徴は CAFC の解釈では以下の通り:
連邦地裁は、クレーム 18 はベストモードが開示されていないという理由で無効と判断した。
CAFC は同地裁の判断を支持した。 CAFC によると、ベストモード開示要件を満たしているか否 かを判断基準は以下の通りである:
(1) 出願時において発明者が発明を実施する上でのベストモードを所有していたか?
(2) もし発明者がベストモードを所有していたと判断される場合に、事実審理者(陪審或いは陪 審無し裁判の場合には裁判官)によって同ベストモードが当業者が理解できるレベルに明細書で 開示されていたか否かを判断する。
尚、ステップ(1)の判断をするときに、出願時における発明者の主観的な思いに焦点を合わせて 判断すること(客観的なベストモードではない)。 さらに、ステップ(2)の判断をするときにはクレ ームの権利範囲と当業者のレベルに焦点を合わせて、客観的に判断しなければならない。
112 条第 1 パラグラフのベストモード開示要件を満たすか否かの判断は事実審理である。 然るに、
CAFC は下級審(連邦地裁)の判断に明白な間違い(エラー)があったどうかの判断基準で審理す る。 CAFC は以下の地裁の事実認定に対する上記ステップ(1)、ステップ(2)の法適用を支持し た。
発明者の陳述を基に、発明者が接着材(boding element)は本発明の統合的(不可欠)な部分であ ると判断した。 さらに、発明者は他の多くの接着剤を試験し、Vilene SL33 という接着剤の使用に
到達し、同接着剤(Vilene SL33)のみを採用することに決定した。 即ち、発明者はベストモードを 所有していた。
TAL は明細書の開示内容において当業者に対して Vilene SL33 の使用を教示する箇所があると いう証明ができなかった。
以上
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添付資料15:
eBay v. MercExchange Supreme Court Decision
on May 15, 2006
Cite as 547 U.S. (2006)
Summarized by Tatsuo Yabe on May 20, 2006
去る 5 月 15 日に eBay v. MercExchange に対する
合衆国最高裁判所の判決がでまし た。 Thomas 最高裁判事が判決文を作成し、Roberts 最高裁主席判事(Scalia 判事および Ginsburg 判事)が賛同意見を、さらに、Kennedy 最高裁判事(Stevens 判事、Souter 判事、および、Breyer 判事)が別途賛同意見を追加しております。
CAFC 判決を破棄、地裁に差し戻し
最高裁は連邦地裁の判断と CAFC の判断をともに否定しました。 連邦地裁の 判断、即ち、 『特許発明を自分で実施せず、他者にライセンスのみ与える者に対 して差止め請求権は認められない』というもので、同判断を Categorical Rule と称し、そのような特許権者であっても差止めを認めるか否かの判断テ スト(4項目テスト:以下参照)を満たす場合はあるとしています。 さらに CAFC の判断、即ち、 『特許の有効性と侵害の判断が下されば差止め請求が可能』
というもので、同判断を General Rule と称し、上記地裁の判断と比較した 場合に、同4項目テスト (差止請求が認められるか否かの判断基準)から、逆 方向に離反するものであると指摘しております。
差止めは、衡平(エクイティ)の原則に基づき、以下の4項目テストを適用す ることによって、連邦地裁の裁量で『認めても 良い』としております。
■ 差止め請求を認めるか否かを判断するための確立された4 項目テスト 差止め請求人(特許権者)は以下の要件(項目)を証明しなければならない:
(i) 回復困難な損害を被った;
(ii) 損害賠償などの法的救剤措置では上記損害を十分に補えない;
(iii) 差止めによって両当事者の遭遇する困難の度合 いを比較衡量;
(iv) 差止めによって民間の利益が害されないこと;(1)
判示: 差止めを認めるか否かの判断は連邦地裁の裁量に委ね られ、その裁量 判断は伝統的な均衡の原則に基づき実行されるべきであり、特許紛争において も他の民事事件と同様に同原則が適用されるべきである。
CAFC 判決を破棄し、本判決に即した 審理をするべく連邦地裁に差し戻す。
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■ 特許権: MercExchange の米国特許第 5845265 号 (Electric marketplace for selling goods)
■ 侵害形態: eBay のオンラインでの Buy It Now と いうネットオークシ ョンの形態で、購入者が販売希望者の提示 する価格で同意できる場合には即刻 商売が成立するというもの です。
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(1) Weinberger v. Romero‑Barcelo, 456 U.S. 305 (1982) / Amoco Production Co. v. Gambell, 480 U.S. 531, 542 (1987)
添付資料16:
PAICE LLC. v. TOYOTA MOTOR Corp.
CAFC 判決 2007 年 10 月 18 日
Summarized by Tatsuo Yabe on Oct 20, 2008
(CAFCの多数意見)
テキサス連邦地裁は、トヨタのエンジンが
Parice
社のハイブリッドエンジンに関する米国特許 第5343970号および第6554088号を(均等論上)侵害していると判断した。 しかし
Parice
社の差止め請求を認めず、エンジン単体あたり25
ドルのライセンス費の支払いで損害賠償額は妥当であると判断した。
CAFC
は当該地裁の判決を支持した。 しかし、「差止め請 求が認められない = 強制実施権を認める」という方程式は成立しないと判示した。 即ち、CAFC
の多数意見は、このような状況下において地裁は当事者間で協議をする機会、或いは、非 侵害のアクションをとる機会をあたえるべきであるとし、然し、当事者間で同意に至らない場合 には、地裁が介入し、継続的な侵害行為を参酌し、妥当な継続的ロイヤルティを地裁が決定して も良いとした。[A]warding an ongoing royalty where necessary to effectuate a remedy … does not justify the provision of such relief as a matter of course whenever a permanent injunction is not imposed. In most cases, where the district court determines that a permanent injunction is not warranted, the district court may wish to allow the parties to negotiate a license amongst themselves regarding future use of a patented invention before imposing an ongoing royalty. Should the parties fail to come to an agreement, the district court could step in to assess a reasonable royalty in light of the ongoing infringement.
(反対意見)
CAFC の反対意見として Judge Rader は、当該継続的ライセンス費用を決定することは強制的実施権 を与えることと同義であると述べた。
以下トヨタの形態:
添付資料1 7 : Scope of Foreign Filing Licenses, Notice
[PDF](23Jul2008)
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添付資料18:
ULEAD SYSTEM v. LEX Computer :
CAFC 01-1320, -1402, -1448 ( Decided : 2003 年 12 月 9 日)
DYK
判事、Prost 判事 (多数意見)
Summarized by Tatsuo YABE on Jan 08, 2004 Revised & Added on Jan 12, 2004
By DYK 判事
判示要約:
LEX社は
20
名以下のsmall entity(小規模事業主)であって出願費用及び特許発行費用を
small entity
status
で支払っていた(これは問題なし)、しかし、特許発行後の特許維持年金費用支払い時にnon-small
entity(大規模事業主)に通常実施権を付与している事実があったに拘わらず
small entity status
の減額措置 の恩恵を受けた維持年金を依然として支払ったとしてカリフォルニア中央地区連邦地裁では特許無効と判 断された。 しかし、CAFCでは、「特許庁を欺く意図」が立証されていないとして連邦地裁に差戻した。
※ 日本で米国特許に関わる実務者は、小規模事業主が米国特許取得後に大規模事業主に権利を 完全に譲渡するのではなく、只単に通常実施権を与えることによってsmall entity status を喪失することを 認識するとともに、同状態において維持年金を小規模事業主の減額(1/2 price)で支払うことは問題であるという ことを認識することがまず重要である。 確かに特許庁を欺く意図がなければ不足分を支払うことによって 免責されるというような判示になったが日本の実務者で米国特許成立後の維持年金支払いを外部に 委託しているような場合に権利者のライセンス状況が何らかで維持年金の支払い額に影響をうけるよ うなシステムになっているかということと、そのような問い合わせが維持年金支払い時にされているか を見直すことが重要であろう。 さらに米国特許及び出願において小規模事業主の地位が特許庁費用 の支払いと関連するのは(A)出願費用支払い時(B)特許発行費用支払い時(C)3 回の維持年金支払い のタイミングであって(A)〜(B)の間の OA に応答するときの期限延長費用の支払い時には Status の変 更は関係ない (筆者注釈)。
背景:
Lex社は米国特許第