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第 3 章 火災防護システム及び機器

6.3.2 特定機器

6.3.2.1* 油浸変圧器

変圧器の鉱物油は、過負荷状態もしくは電気火花によ って高温になると蒸発する。従って、高温になると過 圧状態になり変圧器のタンクが破損しうる。鉱物油が 発火点を超えて加熱され急速に放出されると、放出さ れた容量に比例した強度の火災になりうる。火災防護 手段を以下に列挙するように設置すべきである。FH Aにより 1-1.2 節に挙げた目標を満たす既存の防護レ ベルを実証できる場合には、推奨された火災防護に対 する例外が認められる。

1. 屋外の油浸変圧器は、火災時に隣接する機器もしくは建屋に損傷を与えないよう自動水噴霧設備を 設置すべきである。水噴霧設備は、変圧器全体と漏えい油を吸収出来ない区域と火災に晒される相分 離母線に被水可能なように設置すべきである。変圧器から 15m 以内にある建屋及び機器は火災障壁

(防火壁)により防護すべきである。

2. 屋内の油浸変圧器は、FHAで要求される基準に合致した火災区域内に設置すべきである。変圧器及 び油溢出区域は自動消火システムで防護すべきである。

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3. 単一変圧器に対する油火災の区域を封じ込める手段を講ずべきである。用いる手段は変圧器から溢出 した油の容量に加えて、火災を制御するのに用いると予想される消火剤の容量を、封じ込めらるよう に設計すべきである。設計には環境への影響を考慮すべきである。破砕した岩を十分な深さで設ける ことで、プール火災の予想規模を低減することができる。異物混入により当該システムの設計性能が 落ちる場合には、岩を交換すべきである。

6-3.2.2 ポリ塩化ビフェニル(PCB)

1. PCB 充填変圧器は使用すべきではない。使用 している場合には、できる限り早く交換を検 討すべきである。

2. 変圧器をフラッシングし、再充填すること及 び PCB を交換することは許容できる。絶縁液 体は製造メーカーにより承認され、十分な絶 縁強度及び熱伝達性能を持たすべきである。

6-3.2.3* 乾式変圧器

乾式変圧器に対する火災リスクは主として絶縁材の種類に依存する、しかし、一般的にはそのような変圧 器は、液体充填(湿式)変圧器よりは災害の程度は低いと考えて良い。乾式変圧器は屋内に設置して良い。

当該変圧器が 110 kVA もしくは 35,000V を超える変圧器でない限り、特別な火災防護システムは必要な い。そのような変圧器は、FHAで要求される耐火性を有する火災区域の中に設置すべきである。

6-3.2.4 スイッチギア

スイッチギア(遮断器)が屋内にある場合には、空気式遮断器、低油浸遮断器もしくは六フッ化硫黄(SF6) 又は同等の不燃性液体を充填した遮断器を使用することにより、火災リスクを低減すべきである。大きな スイッチギア室は分離しておくべきである(2-4.5.3 項参照)。

6-3.2.5 電力ケーブル

1. 油絶縁電力ケーブルは屋外でのみ使用すべきで ある。もし屋内に設置する場合には、固定式火 災防護装置を設置すべきである。油絶縁電力ケ ーブル火災を消火するためには、固定式泡消火 設備もしくは泡スプリンクラーの方が、水スプ リンクラーよりも望ましい。

2. ケーブルの絶縁油を貯油槽から供給する場合に は、緊急時に油供給を遮断する手段を設けるべ きである。

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6-3.2.6* 制御盤及びリレー

1. 制御盤及びリレーを収容するキャビネットの扉は、プラント運転中は閉じた状態にすべきである。大 きなリレー室及び安全関連機器を収容する部屋は規定の火災障壁により分離すべきである。

2. 制御盤及びリレーキャビネットについては、その冷却システムの適切な運転を定期的に試験すべきで ある。

6-3.2.7* バッテリー室

1. バッテリー室及び関連インバータは、その他の部屋と物理的に分離すべきである(2-4.5.6 項参照)。

2. バッテリー室には十分な強制換気装置を設置すべきである。排気口は区画の最も高い場所につけるべ きである。バッテリー室の水素濃度は監視すべきである。過剰濃度(0.5~1vol %以上)もしくは換気 機能の喪失は、常に人が配置されている場所に警報信号で知らせるようにすべきである。

3. バッテリー室に設置または使用される電気機器は、国内外の基準で認定されたものとすべきである。

6-3.2.8 コンピュータ及び通信室

1. 高価もしくは重要なコンピュータ及び通信機器はその他の区域から物理的に分離すべきである(2-4.5.2 項参照)。これらの区域は床上浸水から防護すべきである。火災荷重は以下により最小にすべ きである。

1. コンピュータ、付帯設備及び運転に必要となる不燃性事務機器を制限すること、及び 2. 自己消火型ゴミ箱のみを使用すること。

2. 標準的な事務機器類はコンピュータ室では許容すべきではない。

3. 紙、インキ、記録媒体及びその他の可燃性物質の追加保管はその部屋とは別区域に行うべきである。

4. 記録は、コンピュータ室の外の保管のために特別に指定された部屋にすべきである。

5. 煙検知器は部屋の天井レベル、嵩上げした床(ある場合)、及び特にもし直接換気する場合には、キャ ビネットの中に設置すべきである。嵩上げした床下へのアクセスは制限してはならない。アクセスに 必要な用具にははっきり標識をつけ、コンピュータ室ですぐに使用できるようにすべきである。

6. 消火に関しては、以下の項目を順守すべきである。

1. 適切に設計された固定式消火システムを設置すべきである。

2. 多目的の乾式化学消火剤は用いるべきではない。

3. スプリンクラーシステムをコンピュータ室で使用する場合には、自己制御弁を有すプリアクショ ンタイプにすべきである。

4. 運転に必須のコンピュータは、他の火災区域にバックアップのコンピュータを装備しておくべき である。

2015 年 3 月 39 6-3.3 避雷

6-3.3.1 設計原則

1. 建屋、地上タンク、排気筒、気象観測塔などを含む全ての構造物を効果的な避雷システムで防護す べきである。避雷システムの「外部」部分及び「内部」部分は守るべき施設の特殊状況及び配置を考 慮して設計すべきである。

2. 避雷システムの「外部」部分は、避雷針で雷を受け、発電所建屋のどこにも損傷を与えずに、電流を 大地に逃がすべきである。また、落雷計を設置すべきである。落雷計は、定期的及び落雷を検知した 後に検査すべきである。

3. 雷の誘導電流や電磁界の影響による金属機器や電気的設備への損傷を避けるため、接地、シールド及 びサージ抑制の適切な組合せを避雷システムの「内部」部分に用いるべきである。

6-3.3.2 避雷システムの保守

避雷システムは全て定期的に検査し、保守すべきである。定期検査及び保守は、銅とアルミニウムの導電 材使用による電食が発生する場合、特に重要である。システムを改造した場合は、適切な運転の継続のた めに試験すべきである。

6-3.4* 電気機器の保守

電気機器及びシステムの適切な保守は、火災の可能性を最小化するのに重要である。

1. 重要な電気機器は、「ホットスポット」(例えば、サーモグラフィック法を用いて)、絶縁損傷及び発 火源になりうるその他の欠陥に対し、定期的にチェックすべきである。

2. 電力ケーブル接続部は、ホットスポットになりうる接続部の緩みを定期的にチェックすべきである。

3. 全ての電気及び電子機器は、定期的にダストを除去して清潔にすべきである。

4. 油を含む電気機器は漏えいの有無を定期的にチェックすべきである。

6-3.5 電気機器に関する消火

電気機器に関する消火に関しては、以下の注意事項を順守すべきである。

1. ガスもしくは乾式化学消火剤の放出前に電気機器の電源を落とす必要はない。しかし、可能な場合 は、システムを停止することが望ましい。

2. 人への感電の恐れがあるので、水、水と不凍液、もしくは泡を含む可搬式消火器は、通電された電気 機器に使用すべきでない。

3. 精密な電気機器がある場所では、多目的乾式化学消火剤の使用は推奨できない。

4. 通電された電気機器に、手持ちホースで水をかける場合には、それを使用する人の安全を考慮すべき である。

2015 年 3 月 40

6-4

*

制御建屋

1. 中央制御室は火災及び煙から守られるべ きである (2-4.5.1 項参照)。

2. 中央制御室には可燃性建造物を用いては ならない。嵩上げ床及び吊天井は避ける べきである。既存の床の上にケーブルを 敷設するためや、他のサービスを行うた めに床を嵩上げし床下空間を設置した場 合には、それらには十分な強度を持たせ 不燃性にすべきであり、600℃未満の融 点を有する物質を用いるべきではない。

3. 中央制御室には煙検知システムを設置すべきである。電気機器及び電子機器を収納するキャビネット にはその内部に検知器を設置すべきである。

4. 可搬式手持ち消火器を容易に使えるように、個々のキャビネットは容易にアクセスできるようすべき である。

5. 安全停止を達成できるよう十分な容量を持つ呼吸器具を利用できるようにすべきである。

6. 隣接する部屋で火災が発生している間でも、継続して居住できるように、中央制御室には、他の区域 に比べ中央制御室の室内圧力をより高く維持できるように独立した換気システムを備えるべきであ る。このシステムのダクトが他の火災区域を通過する場合は、耐火性基準を満たすべきである。

7. 中央制御室で火災が発生した場合には、中央制御室とは異なる別の緊急時対策所(ECA)を利用でき るようにすべきである。中央制御室から緊急時対策所には安全にアクセスできるルートを設けるべき である(5-2.2.3 節参照)。

8. 緊急時対策所には、安全停止を達成し維持するのに必要な全ての計測器及び制御機器を備えておくべ きである。緊急時対策所は中央制御室から完全に電気的に分離されており、火災区域として分離がな されているべきである。

9. 台所施設は中央制御室とは物理的に分離しておくべきである。

6-5 集中電気ケーブル

6-5.1 火災ハザード

火災の発生頻度は低いが、原子力発電所では深刻なケーブルトレイ火災が発生している。電気ケーブルの ケーブル絶縁材が可燃性の場合には火災の懸念が生じ、ケーブルの物量は大きな火災に発展するのに十分 である。ケーブルはハロゲンを含まない物質で作るべきである。ケーブルのもう一つの懸案事項は、その 燃焼生成物が毒性及び腐食性のあるPVC絶縁材を使用していることである。

6-5.2* 火災防護

1. 適切に設計された消火システムを、FHAの要求に基づいて、集中ケーブルトレイ配置に適用すべき である。付録Aでは、火災抑制を保証する集中ケーブルトレイ配置の例をいくつか示している。消火 システムは認定された基準に従って設置すべきである。

2. ケーブル処理室、ケーブルトンネル及びケーブルシャフトは規定の火災障壁によりその他の区域から 分離すべきである。ケーブル処理室及び長いトンネルは、少なくとも 2 か所から手動消火器を持って アクセスできるようにすべきである(2-4.8 項参照)。

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