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固有状態の一般的性質

ドキュメント内 東京大学理学系研究科 上田研究室 (ページ 40-43)

第 2 章 エネルギー、運動量、不確定性関係 25

3.6 固有状態の一般的性質

基底状態ψ0はノードを持たない、すなわち、空間の全領域で同じ符号 を持つ2

実際、波動関数がx=x0でノードを持つとその付近では波動関数は ψ(x)≃ψ(x0) +c(x−x0) (3.42) と展開できる。この時、運動エネルギーは

ψ(x) (

2 2m

d2 dx2

)

ψ(x) = 0 (3.43)

となる。他方、波動関数|ψ(x)|を考えてx0付近を滑らかにつなぐと曲率 は正なので(3.43)は負となりよりエネルギーの低い状態を作ることがで きて矛盾する。よって基底状態の波動関数はノードを持たない。

更に、基底状態は縮退がない。実際、もし縮退があるとして、基底状 態の波動関数が2個ψ0, ψ0存在するとすると、それらの適当な重ね合わ せの状態0+cψ0も基底状態の波動関数であるが、係数c, cを適当に 選ぶことによってこの波動関数にノードを持たせるができるので矛盾す る。実際、ψ(x) :=cψ0(x) +cψ0(x)とおくと、ψ(x0) = 0となるためにc/c=−ψ0(x0)/ψ0(x0)と選べばよい。

2証明は R. Courant and D. Hilbert, Methods of Mathematical Physics, Vol. I, Chap. VI, Sec.6 (Interscience, New York, 1953)。ただし、フェルミ粒子系は例外。

3.7. 1次元系の一般的性質 41

3.7 1 次元系の一般的性質

外部ポテンシャルUxだけに依存する場合や、U =U1(x) +U2(y) + U3(z)のような和で書ける場合は、シュレーシンガー方程式は独立な1 元の方程式の和として書かれる。

d2ψ dx2 +2m

2 [E−U(x)]ψ= 0 (3.44) このような1次元シュレーディンガー方程式の一般的性質について議論し よう。

3.7.1 固有状態の非縮退性

まず、1次元の場合は、基底状態だけでなく、波動関数が無限遠でゼロ となる限り、どの固有状態にも縮退がない。実際、もし、1つの固有エネ ルギーE2つの異なる固有状態ψ1, ψ2が対応すると仮定すると、(3.44) より

ψ′′1 ψ1 = ψ2′′

ψ2 = 2m

2 (U −E) (3.45)

これからψ1′′ψ2−ψ1ψ′′2 = (ψ1ψ2−ψ1ψ2) = 0が得られる。これを積分す るとψ1ψ2−ψ1ψ2=定数 となるが、無限遠ではψ1 =ψ2= 0なので、こ の定数はゼロとなる。よって

ψ1 ψ1 = ψ2

ψ2 (3.46)

が得られる。両辺を積分するとψ1 ∝ψ2となるので、両者は本質的には 同じである(同じrayに属する)。こうして、任意のエネルギー固有状態 に縮退はない。

3.7.2 振動定理

ポテンシャルが無限遠で有限に留まる1次元量子力学系の(n+ 1)番目 の固有関数ψn(x)はn個のノードを持つ。これを振動定理という。

証明は次のようになされる。エネルギー固有値をE1 < E2 < E3<· · · のように小さいものから並べ、n番目とn+ 1番目の波動関数ψn, ψn+1

を考える。

ψ′′n+2m

2 (En−Un= 0 (3.47) ψn+1′′ +2m

2 (En+1−Un+1= 0 (3.48)

(3.47)ψn+1を掛けたものから(3.48)ψnを掛けたものを引き、ψnの 相隣り合うゼロ点α, βの区間で積分をすると

ψn(β)ψn+1(β)−ψn(α)ψn+1(α) =2m

2 (En+1−En)

β

α

ψnψn+1dx(3.49) (α, β)ψn>0とすると、ψn(α)>0, ψn(β)<0となる。もし、同じ区 間でψn+1の符号が一定であるとすると、左辺はψn+1と異符号、右辺は 同符号となり矛盾する。したがって、ψn+1は符号を変えなければならな い。すなわち、ノードを1個余分に持つ。ノードを持たない基底状態から 出発すると、第一励起状態はノードを1個もつことがわかる。同様にして 第二励起状態は2個もつ。この作業を繰り返すことによって(n+ 1)番目 の固有状態はnこのノードを持つ。これを振動定理という。

(以下別な話)エネルギーの原点をU() = 0ととろう。また、一般性 を失うことなくU(−∞) =U0 >0とすることができる。この時、離散ス ペクトルのエネルギーEは負でなければならない。

E <0 (3.50)

また、ポテンシャルの最小値UminE > Uminなので負でなければなら ない。これとU(∞) = 0, U(−∞)>0から、系が離散スペクトルを持つ 場合はポテンシャルは少なくとも一つの極小値を持つことがわかる。

0< E < U0 この場合、エネルギースペクトルは連続的であり、粒子は 無限遠(x= +)まで運動できる。しかし、エネルギーの縮退はない。実 際、x =−∞で波動関数がゼロになるという条件を用いれば、上の証明 で定数=0なので、非縮退であることが示せる。U = 0とみなせるくらい xが正の大きな値のところではシュレーディンガー方程式は

d2ψ dx2 +2m

2 =: d2ψ

dx2 +k2ψ= 0, k:=

√2mE

2 (3.51)

となるので、この領域での解は

ψ=acos(kx+δ) (3.52)

と書ける。ここで、a, δは定数である。他方、xが負の大きな値の時は シュレーディンガー方程式は

d2ψ dx2 2m

2 (U0−E)ψ=: d2ψ

dx2 −κ2ψ= 0, κ:=

√2m(U0−E)

2 (3.53) となる。よってこの領域での波動関数は

ψ=beκx (3.54)

3.8. 時間反転 43

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