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第 3 章 火災防護システム及び機器

7.1 全般

新しい炉型が開発されつつあるが、ここ数年は商用とまでは行かないと思われる。火災防護に関して言え ば、更なる技術改善及び火災防護システムの開発に対する設計開発プログラムが進捗している段階であ る。これら開発中のプログラムにより、小程度から中程度の変更により、既存の火災防護設計の安全面・

経済面で改善がなされるかもしれない。しかし、技術的リスクを最小にするために実績のある既存設計を

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維持することに重点をおくべきである。最低限、最新の認定された火災防護システムに対する国内外の試 験及び設計基準が適用されるべきである。これにより原子力発電所及び環境を火災から防護するための科 学的・工学的な原則の適用に基づく火災安全工学的なアプローチを用いて、火災防護システムの設計の合 理的な方法論を開発するための枠組みが提供されることになる。

8 章-廃止措置及び停止プラント

8-1 全般

廃止措置及び永久停止措置は長い年月をかけて行われる。この期間中には以下の事項を行うべきである。

1. FHAにより特定されたリスクに対応する火災防護要件を維持すべきである。

2. 1-1.2 に設定した目標を確実に達成できるようにするために、火災防護計画を更新し、維持すべき である。

3. 火災防護計画及びFHAでは、以下の事項を実施すべきである:。

1. 廃止措置プロセスにより引き起こされる新しいリスクを特定すること。

2. 必要に応じ、廃止措置に伴うリスクを減らすための新しい管理手段を導入すること。

3. もし火災防護手段が、明らかに著しく既存の手段とかけ離れ、また、推奨された適切な指針文書 もしくは規範的な行動規定を満たさない場合には、FHAによりその乖離を検討し、その適合性 を特定すべきである。もし火災防護手段の改善がなされない場合には、その乖離を許容すること を説明する文書をFHAにより正当化すべきである。

4. 既存システムの保守のための試験や運転可能な状態は、FHAによりそのシステムが必要ないと判定 されるまで継続する。

5. 第 4 章で特定された発電所内の消防能力は、プラント活動及び環境への有害物質や放射線物質の放出 の可能性を考慮して適切なレベルに維持すること。

9 章-火災防護システムの検査・試験及び保守

9-1 全般

1. 検査、試験及び保守プログラムは予測的、予防的及び是正的な保守活動を含むように策定すべきであ る。検査及び整備の記録は保持すべきである。記録には、署名し、日付を入れ、実行されたもしくは 必要とされる調整を記載する。劣化を管理し、故障を防止することにより、構造物、システム及び機 器の供用期間中を通して、その利用可能性を維持するために、これらの保守活動を行うべきである。

2. 火災防護システムを検査・試験・保守を行う全ての人に対して、期待されている機能が発揮できるよ うに訓練を実施し、かつ、そうした訓練を十分に継続すべきである。

3. 検査プログラムは初期段階で欠陥を検出することで、当該システムの稼働前に調整を行えるように策 定されている。故障が発生した場合に、故障した構造物、システム及び機器の性能を回復し許容基準 内で機能するように保守活動を行うべきである。

4. 何らかの理由で、消火用給水、スプリンクラー、消火ポンプもしくは特殊な防護システムが故障した 場合は、異常な火災に発展する危険性があり、特定の火災防護手順が必要となる。これには火災防護 機器の通常の試験が含まれており、即ち、試験では当該システムに対する故障を創り出すことがで き、かつこれらの軽微な故障を適切に管理する必要がある。もし火災防護システムが保守・試験・修 理を受けている場合には、適切な調整を行い、代替の固定式もしくは可搬式の火災防護装置もしくは 他の手段を準備することにより、安全を損なわないようにすべきである。

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5. 訓練計画は能力のある人に策定させること。ある種の保守手順及び検査は、適切な訓練課程を修了し た能力のあるスタッフに実施させても良いが、一方、その他の保守・検査については、そのようなシ ステムの保守について特別に訓練され、保守権限のある人に実施させるべきである。保守計画では、

検査・保守のどの部分を訓練された人に遂行させるべきかを明示すべきである。火災防護システムの 検査を実行する現地スタッフは火災防護システム全体について熟知していなければならない。火災防 護制御弁の位置を知っているばかりでなく、彼らはその弁がどのシステムを制御し、それぞれの事態 に対応するシステムをどのように運転させるのかを知らなければならない。彼らは火災防護機器の故 障を発生させうる異常な状態を検知し、火災の発生可能性もしくは重大性を高めるハウスキーピング や保管状況の一般的な欠点を認識できる必要がある。

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定義と略語

以下の定義は本文書用である。本文書ではこれらはイタリック体で表記してある。

AHJ ― 規則もしくは基準の要件を実施したり、装置、材料、設置もしくは手順を承認する責任を有す る組織、事務所もしくは個人。

認定された ― 承認された独立した試験機関にて試験を受け、受容されたもの。

建造物 ― 原子力発電所の組み立てられた機器、土木工事及び構造物、機器及び装置。

設計基準火災 ― 火災による損傷を目標レベルに制限するために必要な防護と分離を評価するために用い る火災シナリオ。このシナリオは、合理的な悪条件、排気、発火源、検知器および消火システムの反応 を前提とした、通常および最大瞬間的可燃物、火災成長および熱放出率について定められる。

ECA ― 緊急時対策所。

FHA ― 火災危険解析。

FSSA ― 火災時原子炉安全停止解析

火災障壁 ― 火災の影響を制限するために用いるためのもので、壁、床、天井、もしくはドア、ハッチ、

ペネトレーション、換気空調設備のような通気部を閉鎖するための装置。火災障壁は耐火等級により特 長付けられる。シール材もしくは装置は、障壁に対する健全性及び断熱要件を両方とも満たすべきであ り、国内外の基準にて認定されるべきである。

火災区画― 火災区域を細分化したもので、火災防護機能 (例えば、可燃性物質の制限、空間的な分離、固 定式消火設備、耐火性被覆、その他の機能) により、重要な機器間の火災を分離し、火災により他の分 離した系統に損傷を及ぼさないようにしたもの。

火災区域― 1 つ以上の部屋もしくは空間から構成される建物もしくは建物の一部で、所定の時間、建物の 残りの部分に火災が延焼しないように建設された区域。火災区域は火災障壁により完全に囲まれてい る。

防火ダンパー ― 自動操作により、所定の条件下で ダクトを通して火炎が伝搬しないように設計された装 置。防火ダンパーは耐火性能により特長付けられる。

火災荷重 ― 壁、仕切り、床及び天井の表面を含めた、ある空間内の可燃性物質全てが完全に燃焼するこ とで放出される熱エネルギーの合計値 。

火災防護エンジニア― 「教育、訓練及び経験に基づく火災防護エンジニア(FPE)は、(1)火災及び燃焼 により発生する生成物の性質及び特性に通じており、(2)火災はどのように発生し、建物/構造物の内 外で拡大するか、またそれをどのように検知し、制御し、消火するかを理解しており、(3) 火災から生 命と財産を守るのに関係する物質、構造物、機械、装置、及びプロセスの挙動を予測できるとしてい る。(出典:Society of Fire Protection Engineers)

耐火性 ― 建築建造物、装置もしくは構造物の持つ耐火能力で、標準耐火試験もしくは製造業者の推奨で 規定された機能、健全性、断熱性や他の期待される要件を所定の時間に亘り維持する能力。

難燃性 ― 所定の物質の燃焼を著しく抑制、低減もしくは遅延させるための物質の性質。

火災監視員 ― 消火設備の取扱いの訓練を受けた個人もしくは複数の個人で、予め決められた時間間隔も しくは所定の時間帯に、火災発生の可能性のある特定の区域を監視する専任者。

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MCR ― 中央制御室

制限付可燃性物質 ― 「使用される際の形状で、8,141 kJ/kg (3,500 Btu/lb)を超えない潜在的発熱量を 有し、50 以下の火炎拡大等級の表面の厚さ 3.2 mm (1/8 インチ)以下の不燃性物質を基本構造とする か、その物質を平面で切って晒されるどの表面においても火炎拡大等級 25 を超えないか、もしくは連 続的燃焼特性を有さない基本構造を有する物質」(NFPA 220、Standard on Types of Building Construction)

不燃性物質 ― 使用される際の形状及び予想される条件下で、火炎もしくは熱に晒された時に、発火せ ず、燃焼を助長せず、燃焼せず、可燃性蒸気を放出しない物質。

通常運転 ― 特定された運転上の制限内の原子力発電所の運転で、停止、出力運転、停止操作、起動、保 守、試験及び燃料再装荷を含む。

原子力安全(もしくは単に安全) ― 適切な運転状態、事故防止もしくは事故影響の緩和を達成すること で、不当な放射線危険からサイト職員、公衆及び環境を守ること。

運転 ―保守、燃料再装荷、供用中検査及び他の関連する活動を含め、プラントの建設目的を達成するため に実施される全ての活動。

物理的分離 ―

1.幾何学的(距離、方向等)分離 2.適切な障壁による分離 3.これらの組合せによる分離

発電ブロック ― 原子力プラントの運転に必要な機器を有する構造物

品質保証 ― 物品もしくはサービスが与えられた品質要件を満たしているという十分な信頼性を提供する ために、計画され、体系化された全ての活動。

多重 ―同一の必須機能について、他の機器といずれか一つの場合でも、当該機能を他の機器と同様に達成 する機器。多重性を提供することにより、実行すべき機能を損なうことがなくなるため、一方の機器の 故障または使用不能を許容することができる。多重性はさまざまであり、例えば、系統を 2 台、3 台、

もしくは 4 台のポンプで構成し、この内のどれかが機能を果たすことにより、系統としてその特定の機 能を果たせばよいことになる。多重性は、同一もしくは多様な機器の使用により達成しても良い。

残留熱 ― 以下の熱の合計:

1. 崩壊熱及び停止時核分裂から発生する熱 2. 原子炉関連の構造物に蓄えられている熱 3. 輸送媒体にある熱

安全停止 ― プラント内のどこで単一の火災が発生したと仮定しても、原子炉を安全、安定、未臨界の状 態に到達させ、維持するために必要な全てのパラメータを制御し、監視するプロセス。原子炉冷却水の 水位、圧力及び温度は、燃料被覆管に損傷を与えず、制御不能な放射性物質の放出を防止するのに十分 でなければならない。

安全停止機能 ― 安全停止に到達・維持するのに必要な構造物、系統及び機器が有すべき機能。全体の機 能には、安全関連システム、多重もしくは認定された代替システム及び要求された支援システムを含 む。原子炉を安全かつ安定な状態に保つのに必要な機能には、反応度制御、原子炉冷却材の流量制御及 び圧力制御、崩壊熱除去、及びプロセスモニタリングがある。

安全関連系統 ― 安全停止を達成し適切に運転するのに必要な主系統もしくは補助系統。

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